一夜で転換、ペレスの’24年続投を巡るレッドブル重鎮マルコの見解
セルジオ・ペレスの2024年のシートについてレッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは「100%確実ではない」としていたものの、ダニエル・リカルドの骨折事故から一夜を経て見解を変えた。
墺「Kleine Zeitung」とのインタビューで先の発言を口にしたマルコは、ペレスが僚友マックス・フェルスタッペンに対してコンマ45秒遅れの7番手に留まったF1オランダGP初日FP2を経て独「Sky Sports」に対し、「来年もペレスとやりたいが、そのためには彼がパフォーマンスを発揮する必要がある」と語った。
だがその翌日の予選後、独「AMus」によるとマルコは「2024年に向けては全てが明らかだ」と述べ、ペレスのレッドブル残留を保証。一夜にして態度を変えた。
これはフェルスタッペンが今季8度目のポールポジションを獲得し、ペレスが再び7番手、それもチームメイトに対して1.3秒というメルセデスのトト・ウォルフ代表が言うところの理解不能なほどの「異様」な遅れがついた直後の発言だった。
週末に先立ちマルコの母語、ドイツ語圏の複数メディアでは、サマーブレイク中の密会などを理由にリカルドが2024年にレッドブルに復帰するのではとの憶測が流れていた。
しかしながら、そのリカルドはFP2でのクラッシュにより左手の中手骨を骨折。2日目のFP3以降はリアム・ローソンが角田裕毅のチームメイトを務める事が予選後に発表された。
マルコが僅か1日で見解を変えた理由は不明だ。昨年末に、リカルドが2023年のレッドブルのリザーブドライバーに就任するとした発言をその後撤回したように、サマーブレイク明けという事で少しばかり軽はずみな言葉が出てしまっただけなのかもしれない。
だが、FP2後に2024年のペレスについて「ザントフォールトでどのように進展するかを見守り、そして話し合う事になる。そうすればより明確になるだろう」としていた発言からすると、ペレスが1.3秒落ちの7番手に留まった予選を経て異なる見解を示したのには、何か別の明確な理由があったと推測するのが妥当だろう。
リカルド復帰の見通しが立たない中、これをマルコの見解変更に関係があると見るのは憶測に過ぎないが、もしそうだとするならば、少なくとも現時点でマルコは2024年に向けて角田裕毅のレッドブル昇格を検討していないという事を意味する。
マルコが態度を翻した翌日のレースでは、序盤のインターからスリックへの履き替えに際し、レッドブルがラップリーダーのペレスではなくフェルスタッペンを先行してピットストップさせる場面があった。ペレスが翌周にソフトを履いてコースに出ると、フェルスタッペンがアンダーカットする形で首位に躍り出た。
ピットストップ順に関しては通常、チーム内で前を走るドライバーが優先される。2番手でコースに復帰した際、ペレスはチーム無線を通して「マックスにアンダーカットされたのか?」と当惑した様子を見せた。
この判断はレース後に物議を醸すかに思われたが、意外にもペレスは怒った様子もなく「この手の状況では、その時点でチームの方が多くの情報を把握しているものだ」として、決定の裏には当時の自身が知り得ない的を得た「理由があるはず」だと語った。
これについてチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、先にペレスをピットインさせていれば、後続のフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)とピエール・ガスリー(アルピーヌ)にフェルスタッペンがアンダーカットされていたはずだとして、チームとして1-2を目指す上で理に適ったものだと説明した。
フェルスタッペンとペレスの立場が逆であった場合、レッドブルがペレスを先にピットインさせる姿を想像するのは極めて難しいが、天候が予測不能な状況下において、勝利をもたらす可能性がより高いフェルスタッペンを中心にレース戦略を組み立てるのは合理的と言える。
そんな決勝を経てホーナーもまたマルコに続き、2024年のペレス起用を断言した。ただ、依然としてペレスのシートを危ぶむ声は消えない。
独「Sky Sports」で解説を務めるラルフ・シューマッハは決勝を経て「彼のレッドブルでの日々はもう終わりだと思う。ヘルムート・マルコはペレスに対する心温まる対応で知られているわけではない」「シーズン終了後の離別については既に合意に至っていると思う」とコラムに綴った。