ルノーグループの再編によって浮上した「アルピーヌF1」の憶測…アビテブール代表、疑問に答える
シリル・アビテブールがアルピーヌ部門の統括責任者に抜擢された事で、ルノーF1チームが「アルピーヌ」へと改称されるのではとの憶測が流れる中、当のシリル・アビテブールがモンツァ・サーキットで行われた記者会見に出席。投げかけられた疑問に答えた。
フランスの自動車大手ルノーは9月3日(木)、グループ全体を4つのブランドで再編する新たな組織体制を発表した。これは「ルノー」「ダチア」「アルピーヌ」「ニューモビリティ」から成るもので、アルピーヌの統括責任者にルノー・スポール・レーシングのマネージング・ディレクターを務めるシリル・アビテブールが抜擢された。
フランス出身のレーシングドライバー、ジャン・レデレにより設立されたアルピーヌは、ル・マン24時間レースなどで活躍した後、1973年にルノーの傘下に入った。その後、1995年のA610の生産終了を以てアルピーヌブランドは一旦途絶えたものの、2017年に新型A110の発売が開始され復活を遂げた。
組織再編の詳細は現時点で明らかにされていないが、アルピーヌにルノーグループ内におけるスポーツブランドとしての役割が期待されている事は明らかであり、F1を含むレース部門を率いるシリル・アビテブールのトップ就任はその文脈において合点がいく。こうした背景から、F1参戦ブランドをルノーからアルピーヌへと変更するのではとの憶測が流れた。
F1イタリアGPの金曜プレスカンファレンスに出席したシリル・アビテブールは、自身の役割はあくまでもアルピーヌブランド自体のマネジメントであり、各ブランド間のマーケティングに関してはルカ・デメオCEOが判断を下すと説明して明言を避けたが、否定することもなかった。
「新しいコンコルド協定によって、我々は遂にF1において安定した素晴らしいマーケティングプラットフォームを手にする可能性が出てきたわけだが、そのプラットフォームをどのように利用したいかはCEO次第だ」(シリル・アビテブール)
シリル・アビテブールは詳細への言及を避けたが、アルピーヌがグループ内のスポーツブランドとして位置付けられるのであれば、ルノーのF1活動におけるブランドがアルピーヌへと変更されるのは既定路線と見るべきだろう。再編後の4ブランドの立ち位置は、ルノーが中核、ダチアは低価格、アルピーヌはスポーツ、そしてニューモビリティはEVと考えられる。
アルピーヌがルノーのサブブランド(例「メルセデス」と「メルセデスAMG」)ではなく、個別ブランド(例「Windows」と「Office」)として定義されている以上は、F1チーム名に「ルノー・アルピーヌ」といった形でルノーの名前を残す事は考えにくいものの、移行期の措置としてチーム名はアルピーヌ、エンジンネームをルノーとするなどの方法は考えられる。
フェルナンド・アロンソのF1復帰は、現在のエンストンのチームの競争力を考えれば腑に落ちない部分もあったが、仮にアルピーヌF1として新たなチャプターをスタートさせる事が既に内定していたのであれば、2度のF1ワールドチャンピオンが新しい歴史の最初の担い手としての役割に魅力を感じて復帰を承諾したという筋書きを描く事もできよう。
果たしてルノーの名前はF1の歴史から姿を消してしまうのだろうか?