角田裕毅、アルファタウリCEOの描く画に居場所なし? 2024年F1契約更新如何に
豊富な経験を持ち込むダニエル・リカルドと新人離れした走りを見せるリアム・ローソン…アルファタウリのピーター・バイエルCEOが描く2024年のF1ドライバーラインナップ計画に角田裕毅は含まれていないのかもしれない。
F1での3年目を迎えた角田裕毅は、ニック・デ・フリースがチームを導くリードドライバーになるとのフランツ・トスト代表やヘルムート・マルコの期待が現実にそぐわぬ夢であった事を知らしめ、アルファタウリの今季全てのポイントを獲得するなど、中団チームの中でも一際抜きん出た存在感を発揮している。
それはデ・フリースの後任としてリカルドが復帰した後も変わらず、サマーブレイク前の最終戦、ベルギーGPでは再び10位入賞を飾った。
リカルド復帰以前の段階のパドックには広く、角田裕毅の契約更新を予想する声が広がっていた。彼に対する評価は今も変わっていないように見受けられるが、デ・フリースの離脱により取り巻く状況は一変した。
来季のドライバーラインナップについて、イタリアGPの週末に行われた英「PlanetF1」とのインタビューの中でバイエルは「経験豊富なドライバーと若いドライバーが必要だ。私が取り組んでいるのはそういう事だ」と語った。
「そうすれば、若手は経験豊富なドライバーからより多くのことを学び、経験豊富なドライバーは我々を助けてくれる」
角田裕毅は年齢こそ若いが、豊富とまでは言えないまでも経験を兼ね備えつつある。だがバイエルの脳裏にある「経験豊富なドライバー」はどうやらリカルドを指しているようだ。
バイエルは「例えばダニエルはクルマのセットアップ面で大いに助けてくれた」と続ける。
「我々は若いドライバーにフィードバックを与える。そして経験豊富なドライバーは我々にフィードバックを与える。私はこれら2つを擁する必要があると確信している」
角田裕毅が「経験豊富枠」に入らないのであれば、「若手枠」はどうかと考えるわけだが、オランダでのチャンスで頭角を現した21歳のニュージーランド人ドライバーはバイエルの心に深く刻まれた。
「正直に言ってリアムは本当に素晴らしい。彼がやってのけた事、パドックでの彼の功績に私は大いに敬意を払っている」とバイエルは語る。
「ザントフォールトはおそらく、考え得る最悪の洗礼だっただろう。雨により路面は濡れ、その後、乾いていった。望まない全てがそこにあったと言える。それでも彼は本当に良い仕事をした」
「私がリアムを気に入っているのは、プロフェッショナルな姿勢で仕事に取り組んでいることと、クルマの中で本当に冷静である点だ」
「彼はエンジニアからフィードバックを受け、周回を重ねるごとに向上していく。本当に印象的だ」
ローソンの走りに心を打たれたのはバイエルだけではない。ドライバー人事に大きな影響力を持つレッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、フルタイムでの契約は「すぐにでも実現する可能性がある」と語った。
来季のシートは2つともが未定だ。角田裕毅は2024年の契約に値する活躍を見せていると言えるが、リカルドの回復具合や次戦シンガポールでのローソンの走り、そして2025年末を以てレッドブルを離れアストンマーチンと提携するホンダなど、決定に際しては様々な要因が絡む。
何が起きるか分からないのがF1という世界である以上、角田裕毅のファンにとって悪い意味でのサプライズが起きる可能性はゼロではないが、新しくCEOに就任したばかりのバイエルが人事権にどれだけの発言力を持ち合わせているかは不明で、最終的にはマルコがどう判断するかに大きく左右されるものと思われる。
歴代のトロ・ロッソ、アルファタウリの殆ど全てのドライバーは、来季の契約がないという将来不安に耐えシーズン後半を過ごしてきた。その意味においては、角田裕毅が置かれている状況は決して特殊なものではない。ドライバーとしてやるべきは、シンガポールGP以降の残りの8レースで更なる結果を残すべく取り組む事だけだ。
シンガポールGPの翌週には角田裕毅にとっての母国、鈴鹿での日本GPが控えている。是非とも良いニュースを期待したい。