角田裕毅、”緊張”で言い出せず…アロンソとのヘルメット交換の裏話とファンになった経緯
Published:
ヘルメットを交換したかったにも関わらず角田裕毅(アルファタウリ)は「緊張」のあまり、それを敬愛する自身にとってのスーパースター、フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)に言い出せずにいたという。
昨夏のベルギーGPの週末、互いのレーシングヘルメットを手に肩を組む2度のF1ワールドチャンピオンと若き日本人ドライバーのツーショット写真が話題となった。
アロンソはグリッド随一のヘルメット収集家として知られており、母国スペインのオビエド郊外にある私設ミュージアムには歴代のマシンやトロフィーと共に、共に戦ったライバルのヘルメット等が収蔵されている。
ポッドキャスト「BEYOND THE GRID」の中で角田裕毅は、ドライバーズ・ブリーフィング等、コース外でのアロンソは「本当にフレンドリーで良い人」だとした上で、スパでのヘルメット交換について次のように振り返った。
「F1ドライバーになった時からヘルメットを交換したかったのですが、緊張してお願いできずにいたんです」
「でもある時、たぶん昨シーズンの事だったと思いますが、彼の方から『ユーキ、ヘルメットを交換をしよう!』って言ってくれたんです」
「文字通り頭が真っ白になってしまいました! 彼の前では嬉しさを全面に出さないようにしたのですが、内心は本当に嬉しくて、その日のうちに父に電話しちゃいました」
「彼と一緒にレースができるなんて、未だに信じられない気持ちです」
角田裕毅にとってアロンソは、幼少の頃からの文字通りのヒーローだった。
F1史上65人目のデビュー戦ポイント獲得を果たした2021年の開幕バーレーンGP。憧れのスペイン人ドライバーをオーバーテイクした事について角田裕毅は当時、「僕がテレビ越し見ていたF1のスーパースターだったので、本当に興奮しました!」と笑顔を見せた。
F1到達後に身につけたレースクラフトはアロンソのドライビング研究の賜物だった。
特に、競争力に劣るマシンながらもルイス・ハミルトン(メルセデス)を10周に渡って抑え込んだ2021年のハンガリーGPの映像を何度も見直し、「クルマのポジショニング」を含めてアロンソから多くを学んだ。
そして同じ年のトルコGPでハミルトンを相手に実践。8周に渡ってこれを退けると、今季サウジアラビアGPでは更に磨きをかけ、ケビン・マグヌッセン(ハース)を幾度となく弾き返すディフェンシブな走りへと昇華させた。
角田裕毅がアロンソのファンになったのは父、信彰氏の影響だった。
「もちろん、他のドライバーの事も尊敬していますが僕は彼のファンなんです。父がフェルナンド推しだったので」と角田裕毅。
「12歳かそこらの時に鈴鹿にグランプリを見に行った際、最終コーナーのグランドスタンドにいたのですが、父が『フェルナンドはまだ少し残して走っている。楽なコーナーじゃないからね』って言うんです」
「あそこは右に曲がりながら同時に加速しなければならず、滑りやすいため全開で行くのが難しいのですが、ラインやステアリング、クルマの動きを観察していたら、彼がコーナーの外側に向かって徐々に寄っていくのが分かったんです」
「芝生を踏んでしまえばそのまま壁にぶつかってしまうにも関わらず、彼は一貫して白線に迫る走りをしていました」
「それ以来、フェルナンドにより注目するようになったのですが、まさか13年後に彼と一緒にレースができるだなんて、当時は思ってもみませんでした」