ルノー、破綻する五カ年計画…F1を席巻する”Bチーム戦略”に危機感「ハースがF1史を分断した」

険しい表情を見せるルノーのダニエル・リカルド、2019年F1バルセロナ合同テストにてCourtesy Of RENAULT SPORT

五カ年計画によって、再びタイトル争いに加わる事を目指しているルノーF1チームだが、そのプランは「Bチーム戦略」の勃興を想定していないシナリオに基づいて描かれおり、計画そのものが半ば破綻している事を認めている。

フェラーリ=ハースに象徴される事実上のBチーム戦略は今やグリッドを席巻しており、プライベーターは少ない資本で高効率なチーム運営が可能になる一方、トップチームは開発面でアドバンテージを得る、いわゆるウィン=ウィンの構図が確立しつつある。

“ハース以後”のF1のロールモデル

マネージング・ディレクターを務めるシリル・アビテブールは、独Auto Motor und Sportのインタビューの中で、F1はハースの参入によってパラダイムシフトを迎えたとの認識を示し、今後のF1では、Bチームを持たずして勝利することは困難だと述べた。

「ハースは後戻りすることができない先例を作り出し、F1の歴史を”ハース以前”と”ハース以後”に分断した。この状況は永遠に続く可能性がある。表面的には10チームが存在していても、事実上は4から5チームという状況が生まれつつある」

唯一アメリカに本拠地を置くハースは、フェラーリとの間で緊密な技術提携契約を締結。レギュレーションで合法とされるエンジン、ギヤボックス、サスペンションなどの幅広いパーツをマラネロから購入し、初参戦した2016年の開幕戦でいきなり入賞。競争力のあるマシンを作り上げ、ライバルたちを騒然とさせた。

「我々の戦略には、このような状況は想定されていない。まもなく、Bチームを所有していなければ勝てない時代が到来するだろう。フェラーリを打ち倒すためにはまずハースを倒さなければならない状況が生まれている。それは年々難しくなっているし、その結果として賞金やスポンサー獲得も困難になってきている」

Bチーム戦略を推し進めるトップチーム

ルノーは2016年にワークスチームとしてグリッドに舞い戻り、徐々にリソースを増やしながら、トップチームとのパフォーマンスギャップを縮めてきた。復帰から3年を経た昨年のコンストラクターズランキングでは、プライベーター達が渦巻く過酷なミッドフィールド争いを制して4位に浮上。トップ争い目前まで詰め寄っている。

だが、昨今のF1でのリザルトは、財務基盤と投資額に比例する傾向が強い。確かにルノーは人材確保を推し進め、今やエンストンとヴィリーのファクトリーで計1200人のスタッフを抱えているものの、シルバーアローの本拠地ブラックリーと跳馬の開発拠点マラネロと比べると400人も少ない。

いわゆるビッグ3チームは、技術・資本・商業と、レギュレーションに抵触しない範囲内で幅広い領域に渡って提携を進めている。フェラーリ陣営にはハースに加えてアルファロメオが新たに加わり、レッドブルは傘下のトロ・ロッソとの関係を設立当初のモデルへとロールバックさせ、王者メルセデスはレーシングポイントに接近しつつある。

ルノーとしても同様のアライアンスモデルを構築したいところだが、お見合い相手は現状マクラーレンしか残されていない。だが、自らの戦歴と歴史に強い自負を持つウォーキングのチームが、ハースのような立場に甘んじるとは考えにくく、それはアビテブールも同じように考えている。

「対等な関係だから、どちらか一方が王様となり、もう一方が奴隷となる状況は考えられない。とは言え、どこかのタイミングでマクラーレンと話し合わなければならなくなると思っている。ただし、3強チームと同じようなレベルのアライアンスになる事はないだろう」

マクラーレンのザク・ブラウンCEOもまた、Bチームモデルの成功はF1のあるべき姿ではないと述べ、否定的なスタンスを表明。F1の商業権を持つリバティ・メディア社の対策に期待感を示している。

解決策になり得ないバジェットキャップ

そもそもBチーム戦略が成功モデルとなったのは高騰する予算が主な原因だが、アビテブールは現在議論されているバジェットキャップではこの問題を解決する事はできず、却ってチーム同士の同盟関係を強化するだけだと主張する。

「資金やリソースが制限された場合は、片方のチームが空力を、もう片方のチームがシャシーを担当し、分業する事になるだろう。つまり、予算制限は提携関係を強固なものにするだけなのだ」

では、Bチームを持たないが故に”勝てる見込みがなくなりつつある”と考えている当のルノーは、この状況をどのように解決しようとしているのだろうか?

アビテブールは「分からない」と答え、このスポーツを管轄するFIA国際自動車連盟が介入する他に解決の方法はないとの認識を示した。更に「そのようなF1の一部になる事を望んではいない」とも語り、状況が改善されない場合は、撤退の可能性もあり得る事を仄めかした。

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