角田裕毅の2022年シートは安泰に非ず? レッドブル・ホンダ、ペレス続投を決断もアレックス・アルボンのF1復帰を模索
レッドブル・ホンダはF1ベルギーGPの初日、セルジオ・ペレスの2022年続投を発表した。これによりリザーブドライバーを務めるアレックス・アルボンのF1復帰の道が絶たれたかに思われたが、チームは献身的な開発ドライバーのF1シートを依然、模索しているようだ。
ペレスはドライバーズランキングでランド・ノリス(マクラーレン)とバルテリ・ボッタス(メルセデス)の後塵を拝する5位に甘んじているが、一貫して大量ポイントを稼ぐ安定感はチームにとって大きな魅力だ。
更に、ハンガリーGPまでの11戦でのペレスの総獲得ポイントは104点と、前任のアルボンが同時期に記録したポイントの約2倍で、ハンガロリンクでの不遇なクラッシュに巻き込まれるまでマックス・フェルスタッペンと共にレッドブル・ホンダのコンストラクターズ首位を支えていた事を思えばクビを切る理由は薄い。
加えて来季はレギュレーションの刷新が予定されている。迅速かつ的確にクルマの開発を進めていく上でペレスが持つF1での10年に渡る経験は捨てがたく、フェルスタッペンとの良好な関係性を考えても続投は自然な流れと言える。
ペレスが契約を延長した事でアルボンがシートを取り戻す可能性は潰えたが、英Autosportによるとチーム代表のクリスチャン・ホーナーはペレスとの契約延長発表を経て、アルボンのための2022年のF1シートを模索している事を明かしたという。可能性があるのはどのチームなのか? 選択肢は限られる。
一つは姉妹チームのアルファタウリ・ホンダだが、昨年のモンツァでの初優勝を経て、今季はアゼルバイジャンで通算3度目の表彰台を獲得するなど、ますます成熟するピエール・ガスリーを外す理由を見つける事は困難だ。
角田裕毅は時に堅実なレースを戦うものの、クラッシュを繰り返す失態も目立つため2022年の契約を疑問視する声もあるが、フランツ・トスト代表は新人には3シーズンが必要だと考えており、ミスはルーキーにつきものだとして現行ラインナップの維持を望んでいる。
ホンダとの関係も踏まえる必要がある。
日本のパワーユニットサプライヤーは今シーズン末を以てワークスとしてのF1参戦を終了するものの、これまでとは別の形で来季以降もレッドブル及びアルファタウリとの関係を維持する。
ホンダはレッドブルに対してF1パワーユニット技術に関わる知的財産権の使用を許可しただけでなく、両チームのために来季もHRD-SakuraからPUを供給する。撤退するとは言え、ホンダは来季もレッドブルの生命線の一つを成す事になる。
そんな重要なステークホルダーが推す日本人ドライバーを切るには相応の理由が求められるが、テストとプラクティスが大きく制限される特殊なシーズンにデビューを果たした角田裕毅にそこまでの失点を見出すことは難しい。今のところは。
よって、チームの母国、イタリアGPの週末にドライバーラインナップの継続発表があると考えるのが妥当ではないだろうか。無論、F1では何が起きても不思議はないのだが。
仮にアルファタウリ・ホンダが角田裕毅を継続起用するのであれば、アルボンに残された選択肢はアルファロメオとウィリアムズの2チームのみとなるが、これにはメルセデスの動向が絡んでくる。
メルセデスはサマーブレイク中にルイス・ハミルトンの来季チームメイトを決定するとしていたが、ジョージ・ラッセルによると「まだ共有できるニュースはない」との事で、ベルギーだけでなく翌オランダGPにおいてさえ発表がなされない可能性があると言う。
これに関しては、2名双方の来季計画が確定していないために発表が遅れているものと考えるのが妥当だ。メルセデスのトト・ウォルフ代表はスパで「もう一人の方向性が分からないまま、一方的に決断を下すことはしない」と語っている。
ラッセルがウィリアムズに残留するのか、はたまたボッタスが古巣グローブのチームに戻るのかアルファロメオに新天地を求めるのか。アルボンの来季キャリアはメルセデスの動向にも左右される事になりそうだ。