
レッドブルF1、”独自マカレナ”含む大改良で先頭差を「ほぼ半減」 マイアミアップグレードの全貌と、その狙い
予想通り、2026年F1第4戦マイアミGPはアップデートの祭典となり、アストンマーティン・ホンダを除く10チームが新たな開発パーツを持ち込んだ。ただし、アウディ、ハース、メルセデスのアップデート規模は控えめだ。
中でも、最も注目を集めたのはレッドブル・レーシングだった。開幕から苦戦が続くRB22に、7項目に及ぶ大規模なアップグレード・パッケージを投入した。その効果はマックス・フェルスタッペン曰く、先頭集団との差を「ほぼ半減」させるものだった。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
ヘルメット越しに鋭い視線を向けながらコックピットに収まるマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2026年5月1日(金) F1マイアミGPフリー走行前(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)
独自解のレッドブル版「マカレナウイング」
今回のパッケージで最初に目を引くのは、新たなリアウイングだ。シルバーストンで行われた中断期間中のフィルミングデーの時点から、その形状と動きには注目が集まっていた。
コンセプトとしては、フェラーリの「マカレナウイング」に近い。共通するのは、ストレートでドラッグを低減するためにウイングの姿勢を大胆に変更する機構だ。
ただし、レッドブルはフェラーリの模倣でも、その影響を受けたものでもないとしている。最初のアイデアは昨年の段階ですでにFIAへ提出されていたという。
2026年型マシンの多くは、従来のDRSに似た形でフラップを跳ね上げ、ドラッグを低減する仕組みを採っているが、チームによってその稼働方法には違いがある。
フェラーリのウイングは、ストレートモードが作動するとウイング全体が回転し、上部のフラップが上下反転する構造を持つ。空気抵抗をより大きく削るための設計とみられる。
一方、レッドブルの新たなウイングは、その目的は同一ながらも、フェラーリのものとは作動の仕方が異なる。
マイアミでは、フェラーリ版とは反対方向に180度近く回転するような動きが確認された。回転が完了すると上側フラップがリアウイングのエンドプレートよりも高い位置に来る仕組みで、そのドラッグ低減効果はフェラーリ版よりも高いように見て取れる。
一転追加の翼端板ウイングレット、その狙いは?
リアウイングと並んで興味深いのが、フロントウイングのエンドプレート外側に追加されたダイブプレーン=整流用ウイングレットだ。
2026年のF1規則では、このエリアにこの種の空力パーツの装着が認められている。ただし、各チームのアプローチは大きく分かれており、何も付けないチームもあれば、大型の部品を採用するチームもある。
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翼端板の外側にダイブプレーンが追加されたレッドブルRB22の新型フロントウイング、2026年5月1日(金) F1マイアミGPフリー走行(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)
レッドブルはフェラーリと同じく、これまでこの領域にパーツを付けない方針を採っていた。だがマイアミ仕様のウイングには、メルセデスやマクラーレンのものより大型で、平たい形状のダイブプレーンが追加された。
その狙いは、フロントタイヤ周辺の気流を外側へ逃がし、インウォッシュとタイヤ乱流の悪影響を減らすことで、揚力や乱流といったマイナス要素を削り、車体全体の空力効率を高めることにあるとみられる。
このパーツの役割は一般的に、フロントタイヤ周辺の気流処理にある。フロントタイヤに当たった空気は、上部、外側、あるいは内側に回り込むことになる。空力的には、これをどう捌くが重要になる。
タイヤ上部へ流れた空気はフロント側を持ち上げる方向に作用し、ダウンフォースを減少させる。一方で内側に流れると、フロアやサイドポッド、ディフューザーへと向かう流れを乱し、後方ダウンフォースの生成を阻害してしまう。
そのため望ましいのは、外側を回る流れ、いわゆる「アウトウォッシュ」を作り出すことだとされる。
サイドポッドの刷新と、重量超過との戦い
変更は前後のウイングにとどまらない。外観上、次に目を引くのはサイドポッドだろう。従来型と比較すると、横から見た際のリアへと向かう傾斜が、ある地点を境に急激に落ち込む形状となっている。
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サイドポッドがリアに向かって急激に傾斜するアイザック・ハジャーのレッドブルRB22、2026年5月1日(金) F1マイアミGPフリー走行(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)
これは気流をリア方向、とくにディフューザー上部やビームウイング周辺へ導くための設計とみられる。この領域は近年のF1において極めて重要な場所とされている。レッドブルはこの部分をかなり大きく作り替えたと見える。
レッドブルの説明によれば、この新型サイドポッドは、同じく改良された新しいエンジンカバーおよびフロアと連動して機能する。その狙いは「より多くのダウンフォースを引き出しつつ、下流の気流安定性を維持する」ことにある。
空力面の変更に加え、レッドブルは車体重量の低減にも取り組んだ。具体的な数値は明らかにされていないものの、当初は約12kgあった重量超過が、半分近くまで改善されたとみられている。
重量はラップタイムに直結する。だがその影響は速さだけに限られるわけではない。重量は、タイヤへの負担、ブレーキング、加速、車高設定、バランス調整の自由度にも影響する。そのため、パフォーマンス向上の要素として非常に重要であるだけでなく、軽量化はセットアップの幅を取り戻すことにも繋がる。
レッドブルがマイアミに持ち込んだ改良は、空力効率を高めるための外観変更と、マシン全体の扱いやすさを取り戻すための重量改善が組み合わさったものだった。
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コーナーを駆け抜けるマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)、2026年5月1日(金) F1マイアミGPフリー走行(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)
メキーズ手応え「ポールとの差は今季最小」
チーム代表のローラン・メキーズは、「今年これまでで、ポールとの差は最も小さい」と語り、開発の方向性は正しいとの認識を示した。
実際、フェルスタッペンはマイアミのスプリント予選で5番グリッドを獲得した。ランド・ノリス(マクラーレン)のポールタイムとの差は0.592秒に収まった。
フェルスタッペン自身もこう語っている。
「よりまとまった感触がある。もちろん、まだ取り組んでいる課題はあるけど、僕らにとっては本当に前向きな一歩になった。ここ数戦は1秒以上遅れていたからね。でも、今はその差をほぼ半分にできたと思う」
「少なくとも、中団から少し抜け出せたように見えるし、より普通に戻った感じがする。もちろん、まだ理想の状態じゃないけど、少なくともこれまでより若干、クルマを信頼できるようになった。そして、ラップタイムをもう少しばかり引き出せるようになった」
ただし、トップ争いに向けたレッドブルの道のりはまだ長い。フェルスタッペンは「セクター1はまだ弱い」とも語り、望む位置に達するには高速域での改善が不可欠だと認めている。
マイアミのアップデートは、RB22に明確な前進をもたらした。だがそれは復活を意味するわけではなく、ようやく苦戦の出口が見え始めたに過ぎない。レッドブルがこの方向性をラップタイムにどこまで変換できるかが、今後の見どころになる。