やる気”喪失”のニューウェイ「全てを変えた」転換点となったホンダとのコラボ
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1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジン時代の到来と共にモチベーションを失っていたエイドリアン・ニューウェイを奮い立たせたのはホンダだった。
ルノーV8エンジンを搭載するニューウェイが手掛けた革新的なマシンは2010年から2013年にかけて両世界選手権4連覇を達成した。セバスチャン・ベッテルとレッドブルは支配的な力を誇示した。
だが2014年に2つのエネルギー回生システムを備える次世代パワーユニット(PU)が導入されると、誰よりも長きに渡って研究開発に多額の投資を行ってきたメルセデスが台頭。常勝レッドブルは2015年にコンストラクター4位にまで転落した。
ダブルタイトル4連覇を経て引退について考えるようになったニューウェイは、時代の移り変わりと時を同じくして第一線から離れた。
とは言え、依然として最高技術責任者としてF1を監督し続けた。だが、ルノーエンジンの非力さと信頼性不足に足を引っ張られ、勝ちが望めない八方塞がりの状況にモチベーションを失っていた。
RacingNews365とのインタビューの中でニューウェイは「V8からV6ターボエンジンへと切り替わった後、我々のエンジンパートナー(ルノー)は競争力のあるエンジンを作ることができなかった」と振り返った。
「実際、2014年から2020年の間に我々は2度か3度、(グリッドの中で)ベストなシャシーを作り上げたかもしれないが、チャンピオンシップを勝ち取るには総合的な競争力が不足していた」
「どんなにシャシーが良くてもタイトルを狙えないと分かれば、やる気もかなり失われるというものだ」
萎えたニューウェイを再び奮い立たせたのは2019年のホンダとのパートナシップだった。
ホンダは2018年、3年に渡ったマクラーレンとの関係を精算してトロ・ロッソと契約。互いに尊重し合う良好な関係を築き、信頼性と馬力の両面での大幅な性能向上に成功した。
舞台裏でホンダの進化を見てきたレッドブルは2019年に向けて一大決断を下した。後にメルセデスの支配体制を打ち破る「レッドブル・ホンダ」の誕生だった。
「あのコラボレーションがすべてを変えた」とニューウェイは語る。
「我々は突如としてスタンダードに匹敵するエンジンを手に入れた。つまり競争力のあるシャシーを作ればタイトルを狙える状況が訪れたということだ」
「そしてそのことに気づいたとき、モチベーションが一気に高まった」
2019年のシーズン開幕を前にしたバルセロナテストには、公の場にほとんど姿を見せない事で知られるレッドブルのディートリヒ・マテシッツ総帥の姿があった。チーム史上初めて「競争力のあるエンジンを手に入れた」と笑みを浮かべた。
ホンダの反骨精神と再び火がついたニューウェイの意欲は2021年にマックス・フェルスタッペンに初のドライバーズタイトルをもたらした。そしてレッドブルは2022年、9年ぶりとなる悲願のWタイトル奪還を果たした。
ホンダは2021年末を以てF1パワーユニット・サプライヤーとして活動に終止符を打ったが、少なくとも2025年までは撤退前と同じ様にPU一式並びにサポート体制を提供する。