ホンダへの疑念とフェルスタッペンの台頭…青天井のオファーを蹴ってレッドブルを去ったダニエル・リカルド
ダニエル・リカルドはホンダF1エンジンへの疑念とセカンドドライバーになりなくないという思いから「青天井のオファー」を蹴ってチームを去った…2018年末の決定について、レッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表はこう回顧した。
トロ・ロッソでの2シーズンに渡るキャリアを経てリカルドは、同郷のマーク・ウェバーの後任として2014年にレッドブルに昇格。技術規定違反により失格となったものの、その初戦では2位表彰台に上がり、チームメイトにして4度のF1ワールドチャンピオンであるセバスチャン・ベッテルを下してランキング3位に輝いた。
一気にトップドライバーの仲間入りを果たしたリカルドは、2016年に若きマックス・フェルスタッペンをチームメイトに迎えて以降も強さを発揮し、その翌年も僚友を退ける活躍を見せたものの、チームは2017年にフェルスタッペンと3年という長期の契約延長を発表。徐々にチーム内の力学は変化していった。
そして信頼性トラブルが多発し、シーズンを通して8度のリタイヤを喫した2018年末、リカルドは「レッドブル・ホンダ」としての新たな旅路を前に新天地をルノーに求め、ミルトンキーンズのチームを去った。この決断は一部で衝撃を以て受け止められた。
本人はこの決定について後に、レースエンジニアを務めていたサイモン・レニーの異動、ルノーからホンダへのパワーユニットの切り替え、新たなキャリアのスタートなどを理由に上げた。
一部にはルノーが現行年俸の4倍以上の大金を積んだ事が誘因になったとの見方もあったが、ホーナーはF1第3戦オーストラリアGPを前に日刊紙ウィークエンド・オーストラリアンとのインタビューの中で、引き留めのために「青天井のオファー」を出したものの、「ダニエルはマックスの台頭を目にしてセカンドドライバーになりたくなかったんだ」と語った。
そして「彼の決断のタイミングは見事なまでに悪かった。何しろ彼は明らかにホンダエンジンに疑問を抱いていたわけだが、ホンダはその後、彼らのパワーユニットが競争力に溢れ、レースに勝てるパッケージである事を証明したのだからね」と付け加えた。
リカルドはレッドブル残留では叶わなかったであろうナンバーワン待遇を手に入れたものの、ルノーR.S.19とR.S.20にはタイトルを争う力はなく、結局僅か2シーズンを経てマクラーレンに移籍。レッドブルを離れて初めて表彰台の頂点に立ったのは昨年のイタリアGPになってようやくの事だった。
とは言え、32歳のオーストラリア人ドライバーは移籍を繰り返しながらも結局、レッドブル在籍時と同じ様な構図に直面している。
若く才能溢れる22歳のチームメイト、ランド・ノリスは昨年、チームに加わったばかりでランキング8位に留まったリカルドの1.4倍近いポイントを稼いで6位を獲得。チームからの全幅の信頼を勝ち取り、2022年シーズンに先立って4年の長期契約を手にすると共に、年俸面でもチームメイトを上回ったものとみられている。
「ダニエルは偉大なドライバーだし、彼がここを去ると決めたときは悲しかった。そして残念ながら、彼が望んでいたようにはいかなかった」とホーナーは続ける。
「彼は素晴らしい天賦の才と魅力的な個性を備えているが、今もチームメイトは競争力のあるドライバーだ。彼にとっては辛く険しい時期だと思う」