2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤーの10ベストカー

ボルボ「XC40」が日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞…得点と選考委員評価で最終選考9台を振り返る

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2018年12月7日、東京国際交流館において第39回となる「2018-2019 日本カー・オブ・ザ・イヤー最終選考会(COTY)」が開催され、ボルボの小型SUV「XC40」が今年最も優秀な1台に選ばれた。

ノミネートされたのは、2017年11月1日から2018年10月31日までの間に日本国内において発表・発売された乗用車。全27台の中から上位10台が最終選考に進出し、自動車評論家やジャーナリスト等からなる60名の選考委員の投票によって今年の一台が決定した。なお、スズキは「ジムニー」、スバルは「フォレスター」が10ベストカーに選出されていたものの、完成検査に関する不祥事を理由に受賞を辞退した。

今最も勢いのあるスウェーデン車ブランドが同賞を受賞したのは、昨年に続き2年連続。2017-2018日本カー・オブ・ザ・イヤーでは、XC40よりも先に投入された新世代ボルボ車「XC60」が大賞に輝いた。輸入車としては史上初となる連覇であった。

XC40に続いたのは314点を獲得したトヨタ・カローラスポーツ、3位にはフォルクスワーゲンポロが食い込んだ。上位9台の内日本車は5台。インポーターと拮抗する結果となった。

順位 車名 メーカー 得点
1位 XC40 ボルボ 363点
2位 カローラスポーツ トヨタ 314点
3位 ポロ フォルクスワーゲン 197点
4位 クラウン トヨタ 170点
5位 エクリプスクロス 三菱自動車 156点
6位 CX-8 マツダ株式会社 111点
7位 ステルヴィオ アルファロメオ 106点
8位 X2 ビー・エム・ダブリュー 47点
9位 クラリティPHEV 本田技研工業 36点

最終選考投票では、一人25点の持ち点を5台に配点。そのうち、最も高く評価するクルマに対して必ず10点を与える決まりとなっている。

1位 / 363点:ボルボXC40

2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤー ボルボXC40

授賞理由:日本の道路環境にちょうどいい扱いやすいサイズで、カジュアルかつスポーティなスタイリングを実現。インテリアは上質な北欧デザインで収納スペースも充実していて機能性も高い。そして走行フィールはスポーティさと快適性をきわめて高いレベルで両立したもので、気持ちよくドライビングを楽しめる。さらに高度な安全装備を全車標準しているところも高く評価した。

こもだきよし(10点を投票):最新のボルボのクルマ創りに則った、しっかりしたプラットフォームがXC40の魅力の原点だ。少し固めのサスペンションはSUVとは思えないスポーツカー顔負けの素晴らしいハンドリング性能を発揮する。乗り心地はソフトではないが、路面の不整でも当たりの硬さはなく、ボディが揺すられることが少ないフラット感があるもので、長距離ドライブでも快適で疲れない。アップライトな姿勢で座れるシートはホールド性も良く、長時間乗っても疲れない。

前後4つのドアハンドルからロック・アンロックができるのはこのクラスにしては贅沢な装備だ。室内の収納箇所とその容量の大きさは特筆に値する。その徹底ぶりはドア下部のスピーカーをダッシュボード裏側に追いやって、広大なスペースを稼いでいることでもわかる。最新鋭の安全装置をすべてのグレードに平等に備えているところも高く評価できる。

ボルボ XC40、ボルボ・カー・ジャパン株式会社

田畑 修(10点を投票):このXC40が第1弾となる新開発の小型車用プラットフォーム「CMA」の完成度の高さは特筆できる。未舗装路も含めてどんな路面も軽くいなす感覚で走り抜け、不快な振動も抑えられており、同じプラットフォームを採用する次期V40やS40への期待を膨らませるに十分なパフォーマンスを備えている。また、最もベーシックで400万円以下のT4でも先進安全性能および運転支援機能は上級グレードと同等で、対向車(逆走車など)との衝突も配慮した機能を備えるなど、ボルボならではの高い安全思想も評価できる。

北欧デザインの仕立てのいいインテリアに加え、他のボルボ車とはひと味違う躍動感のあるスタイルも所有感を満たしてくれる。装備がさほど豪華でないベーシック仕様を選んでも満足度は変わらないはずで、自分でクルマを持つ喜びや楽しさを感じさせてくれる一台としてイヤーカーにふさわしいと評価した。

2位 / 314点:トヨタ・カローラスポーツ

2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤー2位 トヨタ・カローラスポーツ

岡崎五朗(10点を投票):日本を代表する乗用車であるカローラが、ついにハードウェア面で世界と対等に戦える実力を手に入れた。「安くて壊れなくて燃費がいい。以上」という従来のカローラ像は終焉を迎え、今後は「走り、曲がり、止まり、繋がることに注力した新世代ベーシックカー」として新たな歴史を築いていくことになる。カローラの変貌は、当然ながら他の日本車にも大きな影響を与えるだろう。新型カローラ=カローラ・スポーツの登場をきっかけに、日本車の水準がさらに向上していくことを期待する。

3位 / 197点:フォルクスワーゲン・ポロ

2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤー3位 フォルクスワーゲン・ポロ

ピストン西沢(10点を投票):SUV全盛の中で、古典的なハッチバックの良さを再確認した。重心の低さや限られたスペースを有効に使う手法、そして何より価格と購入後の生活の満足度。色々といいクルマがある中で、ぜひ若い層にこういうクルマから、クルマを所有する生活に入って欲しいと思う。この先にSUVがあり、スポーツカーがあり、基本のセダンがあるのだから。

4位 / 170点:トヨタ・クラウン

2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤー4位 トヨタ・クラウン

岡本幸一郎(10点を投票):これまでも、その年を象徴する何かを持ったクルマを選んできましたが、私にとって今期10点を投じるに相応しいのは、あまり迷うことなくクラウンでした。もしも今回のモデルチェンジがありきたりなものだったとしたら、10点を投じることはなかったでしょう。

デザインも走りも非常にチャレンジングな変化を遂げながらも、あくまでクラウンらしさを損なうことなく、クラウンを愛するユーザーの期待に応えているところも感心する思いです。それは販売実績でも明らかです。さらには最先端を行く先進安全装備やコネクティッドカーなどの時代を反映する要素をいくつも身に着けている点も大いに評価したく思います。2018年をもっとも象徴する1台だと思います。

5位 / 156点:三菱エクリプスクロス

2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤー5位 三菱エクリプスクロス

大谷達也(10点を投票):エクリプスクロスは、三菱自動車のコアバリューである4WD技術が遺憾なく盛り込まれたSUVの佳作だ。なにより、操る楽しさという面で不利とされる4WDを用いて、ここまでスポーティなハンドリングに仕上げたことを賞賛したい。ワインディングロードを走ったときの印象はいかにも軽快で意のままにコントロールできるいっぽう、スポーティさを強調するあまり過敏なハンドリングとしなかったことには強い共感を覚える。

扱いやすさと安定感、さらには乗り心地とのバランスが優れているところもエクリプスクロスの美点だ。しかも、ただオンロード性能を高めただけでなく、オフロード性能がしっかりと追求された点も評価したい。このことは、前輪駆動ベースのプラットフォームでありながら後輪にも大きな駆動トルクを伝達できるよう工夫されている点に、とりわけ強く表れている。250万円台から手に入る価格も大きな魅力のひとつ。内外装の質感を高めればプレミアムブランドと競合できるほどのポテンシャルを秘めているので、三菱自動車には今後、上質さの追求にも取り組んで欲しいと願う。

6位 / 111点:マツダCX-8

2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤー6位 マツダCX-8

河口まなぶ(10点を投票):これからコネクティビティや自動運転、シェアや電動化が進み、自動車そのものの価値が大きく変わることを考えれば、もはや自動車らしい自動車に触れて満足できる時間も残り少ない。そんな2018−2019年にあってマツダが送り出したCX-8は、これまでの自動車に求められた価値観やニーズを巧みにまとめ上げた「自動車らしさ」の完成形だと感じた。

デザインでは明確に個性を打ち出した世界観を提示し、メカニズムでは現在ユーザーが求める諸性能をディーゼル/トルコンATを主軸としたパワートレーン、乗り心地の良さとハンドリングを高次元でまとめたシャシーの高い性能で答えた。

使い勝手に関しては3列シートで従来のミニバンに代わるものを提案した点にも、ブランド価値を守る意思を感じる。安全でも考えられうるベストな運転支援を備えた上で、諸テストで高い評価が得られるものとした。コネクティビティはいま一歩だが、スマホ連携で及第点をクリアした。結果CX-8はユーザーがいま素直に「欲しい」と思える、魅力を感じる製品といえる。しかもそれを最も高いモデルであっても450万円以下で実現した、この圧倒的な商品性を高く評価したい。

7位 / 106点:アルファロメオ・ステルヴィオ

2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤー7位 アルファロメオ・ステルヴィオ

嶋田智之(10点を投票):もはやブームなどではなく、セダンやステーションワゴンと並んで乗用車のひとつのスタンダードといえる存在になった感のあるSUV。世界中から個性的なモデルが次々と生まれ出てきているが、アルファロメオが初めて世に送り出したSUV、ステルヴィオは、ちょっとした衝撃だった。ドライバーに伝わってくる刺激のひとつひとつが、ことごとくスポーツカーの範疇にあるものだったからだ。

他にスピードとの親和性が高いSUVは数多あるし、近頃のSUVは押し並べてスポーティなフィールを持っていたりもするけれど、これほどまでに操る楽しさや走らせる気持ちよさが濃密なモデルは、かつて体験したことがない。もしかしたら姉妹といえるセダンのジュリアよりも濃いかも知れないと感じたし、SUVでここまでやるのか!この手があったのか!というインパクトも強かった。

スポーツカーばかりが偉いわけではないけれど、“走る楽しさ”というものがドライバーにとっての大きな宝物である以上、それを無視することはできない。

8位 / 47点:BMW X2

2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤー8位 BMW X2

山内一典(10点を投票):動き出した瞬間に、「あ、これ、いいクルマだ」と思いました。「ちょっと待った、これフロントエンジンだよね、前輪駆動FFベースだよね」って改めて頭の中で確認してしまったぐらい、乗った瞬間にわかる、一番尖っていた時代のBMWの質感を感じさせる、このステアリングの剛性感って、いったいどんな秘密があるんでしょう。

低燃費や低コスト圧力から、クルマの軽量化が行きすぎるほど進んでいる現在、かつてのドイツ車のような「実際に重厚に作ったから、重厚な乗り味になりました」というようなクルマはもう生まれないな、と諦めていたところに、こういうクルマが登場して「そうか、工夫すれば出来るのか」と、ちょっと嬉しくなりました。

エクステリアは、もはやSUVとは思えないほど車高も低くスタイリッシュ。Xとはいえ2シリーズなんだから、もう少しリーズナブルなお値段でもいいじゃない、と思いつつ、でも良いクルマなんだから仕方ないか。

9位 / 36点:ホンダ・クラリティPHEV

2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤー9位 ホンダ・クラリティPHEV

斎藤聡(10点を投票):ハイブリッドは小さなバッテリーを搭載しエンジンが主、モーターが従の関係にありますが、プラグインハイブリッドは大容量バッテリーを搭載するこから、モーターが主、エンジンが従の関係にあるのが望ましいと考えます。クラリティPHEVがユニークなのは、「いかにエンジンをかけずに走れるか」が開発のこだわりになっており、ほぼEVとして使うことができること。そこから一歩進めて、エンジンを搭載するPHEVだからこそ、EVでは難しい高出力モーターを搭載して、EV以上にEVらしいモーターパワーと長い航続距離を両立していることです。

パッケージングの点でも、バッテリーを前後席の下に振り分けて搭載たことで広い居住スペースを確保するとともに、パワーコントロールユニットの小型化を実現したことでトランクスルー付きのトランクを実現して、乗用車としてのパッケージングの点でも優れたクルマに仕上がっています。これら、クラリティPHEVの、PHEVとして優れている点や乗用車として優れたパッケージングからなる完成度の高さは、今年のイヤーカーに相応しいものだと考えます。

選考委員

  • 青山 尚暉 / モータージャーナリスト
  • 安東 弘樹 / フリーアナウンサー
  • 飯田 裕子 / モータージャーナリスト
  • 石井 昌道 / モータージャーナリスト
  • 石川 真禧照 / 自動車生活探検家 / AJAJ副会長
  • 石川 芳雄 / モータージャーナリスト / AJAJ会員
  • 今井 優杏 / 自動車ジャーナリスト / モータースポーツMC
  • 岩貞 るみこ / モータージャーナリスト / 作家
  • 太田 哲也 / モータージャーナリスト / レーシングドライバー
  • 大谷 達也 / 自動車ライター
  • 岡崎 五朗 / モータージャーナリスト
  • 岡本 幸一郎 / モータージャーナリスト / AJAJ会員
  • 小沢 コージ / モータージャーナリスト
  • 片岡 英明 / モータージャーナリスト
  • 桂 伸一 / モータージャーナリスト / AJAJ会員
  • 金子 浩久 / モータージャーナリスト
  • 河口 まなぶ / モータージャーナリスト
  • 川島 茂夫 / AJAJ会員 / 自動車評論家
  • 河村 康彦 / モータージャーナリスト
  • 木下 隆之 / レーシングドライバー / 自動車評論家
  • 日下部 保雄 / モータージャーナリスト / AJAJ会員
  • 九島 辰也 / モータージャーナリスト
  • 国沢 光宏 / 自動車評論家
  • 五味 康隆 / モータージャーナリスト
  • こもだ きよし / モータージャーナリスト / AJAJ会長
  • 斎藤 聡 / モータージャーナリスト / AJAJ会員
  • 斎藤 慎輔 / モータージャーナリスト
  • 佐藤 久実 / モータージャーナリスト
  • 塩見 智 / フリーランス・ライター / エディター
  • 島崎 七生人 / モータージャーナリスト / AJAJ会員
  • 島下 泰久 / AJAJ会員 / モータージャーナリスト
  • 嶋田 智之 / 自動車ライター
  • 清水 和夫 / モータージャーナリスト
  • 鈴木 直也 / モータージャーナリスト / AJAJ会員
  • 瀬在 仁志 / モータージャーナリスト
  • 高山 正寛 / ITS Evangelist / カーコメンテイター / AJAJ会員
  • 竹岡 圭 / モータージャーナリスト / タレント / AJAJ副会長
  • 田畑 修 / フリーランス・ライター
  • 千葉 匠 / デザインジャーナリスト
  • 中谷 明彦 / レーシングドライバー / モータージャーナリスト
  • 西川 淳 / 自動車ライター
  • 西村 直人 / 交通コメンテーター / AJAJ会員
  • 萩原 秀輝 / AJAJ会員
  • 橋本 洋平 / モータージャーナリスト / AJAJ会員
  • ピーター ライオン / モータージャーナリスト
  • ピストン 西沢 / DJ
  • 藤島 知子 / モータージャーナリスト / AJAJ会員
  • ボブ スリーヴァ / モータージャーナリスト
  • 松田 秀士 / レーシングドライバー / モータージャーナリスト / 僧侶
  • 松任谷 正隆 / 音楽プロデューサー / モータージャーナリスト / AJAJ会員
  • まるも 亜希子 / カーライフ・ジャーナリスト
  • 御堀 直嗣 / フリーランス・ライター
  • 三好 秀昌 / ラリードライバー・モータージャーナリスト
  • 森口 将之 / モータージャーナリスト / モビリティジャーナリスト
  • 諸星 陽一 / モーターフォトジャーナリスト / AJAJ会員 / JMS会員
  • 山内 一典 / ゲームプロデューサー
  • 山田 弘樹 / モータージャーナリスト
  • 山本 シンヤ / 自動車研究家
  • 吉田 由美 / カーライフ・エッセイスト
  • 渡辺 陽一郎 / カーライフジャーナリスト