
F1勢力図の裏側にある「もう一つの戦場」 車重が映す全11チームの現在地。軽量勢と超過組との差が鮮明に
2026年のF1は、新たなパワーユニットとシャシーの導入によって、史上最大級とも評される大変革を迎えた。開幕3戦で大きな注目を集めたのはパワーユニットだが、今季序盤の勢力図を読み解く上で見逃せないもう一つの材料が車重だ。
F1においては一般的に、10kgあたり1周で約0.3〜0.4秒の差とされてきた。だが、エネルギーマネジメントが中核に据えられ、重心の高さが変化した2026年の新世代マシンにおいては、ウィリアムズのチーム代表ジェームズ・ヴァウルズ曰く、10kgあたりコンマ3秒を超えるとされる。
もっとも、その影響はサーキット特性によって変わる。加減速の多いストップ・アンド・ゴー型コースでは差が生じやすく、逆に高速セクションが大半を占めるようなコースでは、重量差の影響はやや薄まる傾向がある。
今回、オランダの専門サイト『RacingNews365』が、ベールに包まれている全11チームの現時点での推計重量値を公開した。チームは正式な車重を公表しておらず、複数の情報源から導き出された推計に過ぎないが、それでも現状を測る一つの手がかりとなる。
最低重量付近に並ぶ上位陣
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.
上海インターナショナル・サーキットのコーナーでジョージ・ラッセル(メルセデス)を背後に従えて走行するルイス・ハミルトンのフェラーリSF-26、2026年3月14日(土) F1中国GPスプリント
コンストラクター選手権1〜2位のメルセデスとフェラーリは、いずれも規則で定められた最低重量768kgを下回っているとされる。
純粋な重量が最低重量を下回っている場合、そのままでは失格となるため、不足分をバラストの搭載によって補うことになるが、望ましい位置に配置することで、前後重量配分や重心の位置を最適化する余地が生まれる。
注目すべきは、ランキング8位のアウディも同じく最低重量以下に収めている点だ。新規参戦チームとしては大健闘と言える状況であり、パフォーマンスに波はあるとはいえ、車体の基礎設計で大きく出遅れていないことがうかがえる。
ランキング3位のマクラーレンは、最低重量ジャストの768kgとされる。信頼性トラブルは勿論だが、マクラーレンの課題は重量そのものより、ダウンフォース不足を含むマシン全体の最適化にあると見た方がよさそうだ。
中団はプラス1kgから7kg
Courtesy Of Haas
後続をリードするオリバー・ベアマン(ハース)、2026年3月15日(日) F1中国GP決勝(上海インターナショナル・サーキット)
上位陣から下に目を向けると、重量超過が目立ち始める。ハースは769kgで最低重量を1kg上回り、アルピーヌは770kgで2kgオーバーとされる。
現時点でベスト・オブ・ザ・レストのコンストラクターズ選手権4位に位置するハースと、2点差でその背後につけるアルピーヌは、車重という観点でも比較的近い位置にある。
ランキング7位のレーシング・ブルズは773〜774kg、ランキング10位のキャデラックは774〜775kgと差は少しずつ広がる。1周あたりコンマ2秒程度のハンデを抱えている可能性があり、この差が中団争いの細かなポジション差に影響している可能性もある。
レッドブルとアストンが抱える10kgの重荷
Courtesy Of Red Bull Content Pool
コーナーで並走しながらポジションを争うレッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンとアイザック・ハジャー、2026年3月29日(日) F1日本GP決勝(鈴鹿サーキット)
興味深く、また衝撃的なのは、レッドブルとアストンマーティン・ホンダが777〜778kgに達している点だろう。最低重量より9〜10kg重く、グリッドでも最重量級に入る。一般的な換算であれば、1周あたりコンマ3秒以上に相当し得る重量超過だ。
ただし、次戦マイアミGPでの投入が予定されているアップグレードパッケージにより、RB22には軽量化が実施される見通しとなっており、これによってレッドブルが”ビッグ4”に返り咲けるかどうかが春休み後の一つの焦点となりそうだ。
開幕3戦で無得点、5度のリタイヤという苦しい立ち上がりのアストンマーティン・ホンダにとっては、重量以前にマシンの信頼性そのものが課題であり、鈴鹿での今季初完走を経てようやくパフォーマンス追求を本格的に開始できる段階に入ったところだ。
飛び抜けて重いウィリアムズ
Courtesy Of Williams
上海インターナショナル・サーキットを走行するカルロス・サインツのウィリアムズFW48、2026年3月13日(金) F1中国GPフリー走行
全11チームの中で、飛び抜けて重量をオーバーしているとされるのがウィリアムズだ。794kgという推計値は最低重量を26kgも上回る。ラップタイムに換算すると約1秒のロスに相当する可能性がある。
これは、パーツ製造が大幅に遅れた結果、期限に間に合わせるために妥協を強いられたことが決定的な原因だ。ヴァウルズによれば、ウィリアムズの2025年型「FW47」は最低重量を5kg下回っていた。
これほどの制約を抱えながら日本GPでカルロス・サインツが予選Q2進出を果たしたことは、メルセデス製パワーユニットの性能の高さを逆説的に強調するものとも言える。
軽量化競争の行方
軽量化そのものはそう難しい話ではない。問題は、コストキャップ制限があることだ。同一パーツの軽量化だけに予算を充てれば開発費を急速に使い果たしてしまうため、アップグレードと軽量化を同時に実施することで、一度に二重の効果を狙うのが現実的な対応となる。
バーレーンGPおよびサウジアラビアGPの中止によって生じた約5週間の春休みは、各チームがこの方向性で開発を進める貴重な期間となる。ウィリアムズを筆頭に、重量で遅れを取るチームがマイアミGPまでにどれだけ削り込んでくるかが、春休み後の注目点の一つだ。
| チーム | 車体重量 | 最低重量との差 |
|---|---|---|
| メルセデス | 768kg以下 | – |
| フェラーリ | 768kg以下 | – |
| アウディ | 768kg以下 | – |
| マクラーレン | 768kg | 0 |
| ハース | 769kg | + 1kg |
| アルピーヌ | 770kg | + 2kg |
| VCARB | 772~3kg | + 4~5kg |
| キャデラック | 774~5kg | + 6~7kg |
| レッドブル | 777~8kg | + 9~10kg |
| アストン | 777~8kg | + 9~10kg |
| ウィリアムズ | 794kg | + 26kg |