
バトンが明かすアロンソらへの「嫉妬」、未完走でもアストン・ホンダに羨望
完走すらままならないマシンであっても、その魅力は色褪せない——そう語るのは、2009年のF1世界王者ジェンソン・バトンだ。前年限りでウィリアムズを離れ、今季からアストンマーティン・ホンダのアンバサダーを務めるバトンは、チームのコラムを通してフェルナンド・アロンソとランス・ストロールに「嫉妬している」と明かした。
開幕2戦の結果を踏まえれば、この発言は理解しにくい面もある。アストンマーティン・ホンダは開幕戦オーストラリアGPから深刻な振動トラブルに見舞われ、いまだ完走すら記録できていない。だがバトンは、そんな「AMR26」をドライブする2人のレギュラードライバーを羨ましいと感じている。
ニューウェイ設計マシンへの羨望
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
スケッチブックを手にガレージ内でアストンマーティン・ホンダ「AMR26」を見つめるチーム代表兼マネージング・テクニカル・パートナーを務めるエイドリアン・ニューウェイ、2026年2月12日F1プレシーズンテスト2日目(バーレーン・インターナショナル・サーキット)
バトンが羨むのは、空力の鬼才エイドリアン・ニューウェイが設計したマシンを駆れるという事実だ。ニューウェイはF1史上最多となるドライバーズタイトル14回、コンストラクターズタイトル12回、223勝に貢献してきた伝説的なF1デザイナーであり、2025年にレッドブルからアストンマーティンに加わった。
「これまでのキャリアで、彼が設計したマシンと数多く戦ってきた。一緒に仕事をしたらどんな感じなのか、ずっと気になっていた」とバトンは綴る。
「その意味で、ランスやフェルナンドに少し嫉妬しているとも言えるだろうね」
間近で見るニューウェイは「とてもオールドスクール」だという。ノートを手にし、アイデアは製図板に描く。そんな手法についてバトンは「それこそが彼を真の名匠たらしめている理由の一つだと思う」と評し、こんなエピソードも明かした。
「彼のノートをこっそり覗こうとしたこともあるんだ……彼には気づかれたけどね」
新世代PUがドライバーに要求する新たな技量
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
バーレーン・インターナショナル・サーキットのピットレーンを走行するフェルナンド・アロンソのアストンマーティン・ホンダ「AMR26」、2026年2月12日F1プレシーズンテスト2日目
バトンが「AMR26」に興味を抱いている理由は、それだけではない。2026年型の新世代マシンがもたらす、劇的な技術的変革そのものにも深い関心を寄せている。
従来のF1ではコーナーの立ち上がりで使えるパワーはほぼ一定だったが、2026年の新世代パワーユニットでは、その常識が通用しない。F1で通算306戦を戦ったバトンにとっても未知の領域だ。
「今は、前のコーナーでどれだけブレーキを踏んだかや、ハイブリッドシステムがエネルギーをどう使うかに左右される。ドライバーはこれまで以上に瞬時の判断を求められる」
バトンはそう指摘したうえで、この変化に対応できるドライバーは「良い意味で際立つ」一方、できないドライバーは「悪い意味で目立つ」ことになるとの見方を示した。2026年のグリッドに並んでいた場合、バトン自身はどちらに入っていただろうか。
現役時代のバトンは特に、刻々と変化するレース展開において真価を発揮した。路面グリップレベルのわずかな変化やレースの流れを瞬時に読み取る感覚は、彼の大きな武器だった。
チームの成績がどうあれ、ニューウェイが手掛けた新世代マシンに乗れるアロンソとストロールを「羨ましい」と言うバトンだが、46歳という年齢には抗えない、とも認める。
「本当にエイドリアンが設計したマシンをドライブするチャンスがあるなら飛びつくと思う。デモランとかね。でも年間24戦となると……さすがにもう年齢的に厳しいね」