アロンソ「頑張っといたぞ」とフェルスタッペンに一言、ハミルトン封じ込めでレッドブル・ホンダに余りに大きな”10点”贈る

エステバン・オコンのキャリア初優勝を祝うアルピーヌのメンバーとフェルナンド・アロンソ、2021年8月1日F1ハンガリーGP決勝レースにてCourtesy Of Alpine Racing

ルイス・ハミルトンの追撃を巧みなドライビングで交わしていた際、フェルナンド・アロンソの脳裏にあったのはアルピーヌのチームメイト、エステバン・オコンの事だけではなかったようだ。2度のF1王者はレース後、マックス・フェルスタッペンに「俺、頑張っといたぞ」と声を掛けた。

フェルスタッペンはポイントリーダーとしてF1第11戦ハンガリーGPに臨むも、ハミルトンの僚友バルテリ・ボッタスの1周目のクラッシュによってバージボードを全損し、更にはフロアにも大きなダメージを負った。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

バルテリ・ボッタス(メルセデス)を起点とするクラッシュにより破壊されたマックス・フェルスタッペン駆るレッドブル・ホンダRB16B、2021年8月1日F1ハンガリーGP決勝レースにて

それはレースを続行する事すら厳しいダメージで、クリスチャン・ホーナー代表の言葉を借りれば、33号車RB16Bのダウンフォースは今季唯一ポイントを獲得できていないハースVF-21レベルにまで低下していた。

フェルスタッペンが「正直に言って、ドライブするのは殆ど不可能な状態だった」と不満をあらわにしたのも下記の画像を見れば頷く他にない。魚雷と化したメルセデスW12に撃墜されたフェルスタッペンのクルマはホーナーが言うところの「ハーフカー」そのものだった。

翼をもがれたフェルスタッペンが10位フィニッシュに留まった一方、ハミルトンはタイヤ交換のタイミングを見誤った事で赤旗からのリスタートで最後尾に転落するも、追い抜き困難なハンガロリンクで次から次へとフィールドを駆け上がっていった。

22周目という早い段階でポイント圏内に舞い戻ると、その後はミック・シューマッハ、ニコラス・ラティフィ、ピエール・ガスリーを立て続けに交わし、54周目に4番手を走行していたアロンソの1秒以内に迫った。

アロンソはハミルトンよりも1段階堅いハードタイヤを、それも8周オールドというハンデを負いながらも、10周に渡って逆襲の元チームメイトを退ける激しい防衛レースを繰り広げた。この時の競争力の差についてアロンソは、ハミルトンに1周あたり2.5秒のアドバンテージがあったとしている。

ハミルトンがアロンソを交わして4番手に浮上した時には既に残り周回数は5周となり、タイヤと時間を使い切ったハミルトンは、カルロス・サインツを追い抜くのが精一杯の3位フィニッシュに留まった。

これによりエンストンのチームは、ロータスを名乗っていた2013年のキミ・ライコネン以来となる劇的勝利を収める事となった。

Courtesy Of Alpine Racing

エステバン・オコンのキャリア初優勝を祝うアルピーヌとフェルナンド・アロンソ、2021年8月1日F1ハンガリーGP決勝レースにて

エグゼクティブ・ディレクターのマルチン・ブコウスキーが「エステバンがポジションを守り抜けたのはフェルナンドの功績が大きい」と述べたように、オコンの初優勝にアロンソが極めて重要な役割を果たした事は疑いない。

当のアロンソも「チームメイトの勝利をサポートしたのは(WEC参戦時の)トヨタの時以来だった」と語り、ハミルトンとの攻防の際に16歳年下のフランス人ドライバーを意識していた事を認めている。

だがそれは同時に、レッドブル・ホンダとフェルスタッペンのタイトル戦をも強力に手助けする事にも繋がった。それはクリスチャン・ホーナーの以下の発言にも表れている。

「メルセデスは愚かな戦略的ミスを犯し、フェルナンド・アロンソは、まるでレッドブルのためにドライブしているかのようだった。おかげでダメージは限定的だった」

セバスチャン・ベッテルの失格処分の行方にも依るが、最終リザルトが保留という現状を前提にハミルトンが3位を獲得したとして話を進めるならば、フェルスタッペンの1ポイントに対してハミルトンは15ポイントを手にする事となるため、両者の差は14ポイントとなる。

だが仮にアロンソが早々に抜かれてしまいハミルトンが逆転優勝を飾っていれば、その得点は15点から一気に25点へと増える事になる。つまりアロンソの働きによってレッドブル・ホンダとフェルスタッペンは目に見えない10ポイントという非常に大きなボーナスを得たとも言えるわけだ。

Courtesy Of Alpine Racing

2021年8月1日のF1ハンガリーGPで5位フィニッシュしてアルピーヌのチームメンバーと健闘を称え合うフェルナンド・アロンソ

シーズン前半戦のようなタイトな展開が今後も続くと仮定するならば、これは最終的にタイトルの行方を左右しかねない程の余りに大きなポイントと言える。その事を両者は十分に理解していたのだろう。

レース後にアロンソがDAZNスペインのインタビューを受けていた際、10位フィニッシュしたフェルスタッペンが何処からともなくその場に表れ、アロンソの肩に無言で手を置いた。するとアロンソはインタビューを一旦中断して「俺、頑張っといたぞ」と声を掛け、2人は握手を交わした。

仮にオコンがラップをリードしていなくとも、またフェルスタッペンが後方に転落していなくともアロンソがハミルトンに対して変わぬ激しいディフェンスを見せた事は想像に難くないが、いずれにせよアロンソのハンガロリンクでの奮闘がチャンピオンシップの行方に大きな影響を及ぼし得るものになった事は確かだ。

F1ハンガリーGP特集

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