「満足してもいないし誇りに思ってもいない」とトスト、アルファタウリF1での18年間を振り返る
スクーデリア・アルファタウリのフランツ・トスト代表は後の2人のF1ワールドチャンピオンを指導し、18年という長きに渡ってチームを率いた類まれなる経歴を以てこのスポーツの表舞台から去るが、それでもなおF1でのキャリアに満足していない。
トロ・ロッソとアルファタウリという名前を掲げたイタリアのチームの指揮官としてトストは、角田裕毅を含む17名のドライバーと共に通算351戦に臨み、2回の優勝と5回の表彰台を獲得し、ポールポジション1回、ファステストラップ3回を刻んだ。
だが、長年の目標であったコンストラクター選手権5位の目標は最後まで達成できなかった。トストはF1公式サイトとのインタビューの中で「目標を達成できなかったのだから、満足していないし誇りに思ってもいない」と述べ、最後まで自らに対する厳しい姿勢を変えなかった。
「『なぜ愚かにもこんな事をしてしまったのだろう』と自分自身に問いかけている。F1は本当に公明正大なスポーツなんだ。できないのであれば、それは十分にクレバーでないということだ」
在任中にトストはセバスチャン・ベッテルとマックス・フェルスタッペンを育て上げた。2人はレッドブル昇格の後に計7つのワールドタイトルを獲得した。
トストが若手育成の仕事に初めて関わったのは、母国オーストリアのレースチーム、ウォルター・レヒナー・レーシング・スクールでチームマネージャーを務めていた時にまで遡る。
「若いドライバーと一緒に仕事をするのが好きなんだ」とトストは語る。
「始まりはウォルター・レヒナー・レーシング・スクールでの仕事から始まった。何人か優秀なドライバーがいてね。彼らと共に仕事に取り組み、指導できたのは私にとって興味深い経験だった。あの数年間が、若いドライバーの教育方法を学ぶという点で役に立った」
「(トロ・ロッソでは)(ヴィタントニオ)リウッツィと(スコット)スピードでスタートし、その後(セバスチャン)ベッテルがチームに加わった。 セバスチャン・ブエミ、ジャン=エリック・ベルニュ、ダニエル・リカルドなど、本当に速いドライバーがたくさんいた」
「もちろん、フェルスタッペンとカルロス・サインツは本当に興味深いコンビだった。二人とも最初からかなりの競争力があった」
「ダニール・クビアトもかなりの速さだったし、ピエール・ガスリーは大いに熟練したドライバーだった。そして今の我々には力強い角田裕毅がいる。そしてリカルドも高いレベルで戻ってきてくれた」
「私はいつだって彼らと共に仕事をし、どのように成長するかを見守るのが好きだった」
2012年のベルニュとリカルド、2015年のフェルスタッペンとサインツと、トロ・ロッソ時代にチームは2人のルーキーを起用するシーズンもあったが、「今となってはそんな事はできない」とトストは指摘する。
「F1は技術面でもドライビング面でも非常に高いレベルにあるため、そんな事をすればコンストラクターズ選手権で最下位になってしまう」
「F1マシンに乗るに値しないドライバーはF1には存在しない。レベルが非常に高いがゆえに、(現在は)ドライバーを教育するために多くのプライベートテストをこなさなければならない」
トストのF1での旅は今月末を以て終わりを迎える。2025年までは必要に応じてアドバイスを提供する役割を担うようだが、過去18年のほぼ毎日に渡って誰よりも早く出社し、最後に退社してきたとされるこれまでの仕事量を考えれば、完全に手離れするに等しい。
「私のTO DOリストはかなり長い」とトストは語る。
「ここ数年は何もできなかった。 ご存知のように、常にオフィスか空港、飛行機、サーキットのいずれかにいる状況だったからね!」
「例えば土曜日か日曜日に雪が降ったとしよう。そうなれば月曜日は青空に粉雪が舞うだろう。そんな時に、よし、今日はスキーに行こう、と言える自由を楽しみたい。過去20年間、こんな事はあり得なかったからね」
やりたいことは無数にあるというが、その全てにチェックを入れるのは難しいかもしれない。トストは、F1以外のモータースポーツに関するプロジェクトを含む「幾つかのアイデア」があると明かし、それが実現した場合、仕事量は今よりも増えるだろうと説明した。
とは言え、F1から完全に距離を置くつもりはないようだ。トストは「あらゆるデータと共に、FP1、FP2、FP3、予選、そして決勝レースを見るつもりだ。チームにデータの取得方法を聞いたんだ。 MotoGP、インディカー、他にも色んなレースを見るつもりだ」と語った。
「もちろん、みんなと離れるのは寂しい。ファエンツァのチームは本当に力強く情熱的だ。みんなの事が好きだし、18年に渡ってそこで働いてきたわけだから、当然、彼らを恋しく思うだろう」
「F1についてもそうだ。あの雰囲気が恋しくなるだろうね。F1は私にとって特別なファミリーだ。各々のサーキットにはそれぞれ特徴がある。だから色んな場所でレースをするのをいつも楽しみにしていた。人生を面白くしてくれる挑戦だった」
「F1のことは決して忘れない」