
使えるのに、使わない――ホンダ同様1回に絞るアウディ、PUアップグレードを見送る理由
アウディはホンダと同様、2026年シーズンに2回のF1パワーユニット(PU)アップグレードが認められているが、この権利を使い切らず、1回にとどめる方針だ。なぜ、競合メーカーとの差を埋める貴重な機会を使い切らないのか。
追加開発・アップグレード機会制度(ADUO)の今季1回目の査定が公表されるや否や、アウディは第7戦バルセロナ・カタロニアGPで、いち早くPUのアップグレードを投入した。主にドライバビリティの改善に焦点を当てた改良だった。
アウディのレーシング・ディレクターを務めるアラン・マクニッシュは、その翌戦となる第8戦オーストリアGPで、次のアップグレードの投入時期について「おそらく、次の本格的な一歩は2027年になるだろう」と答えていた。
アウディが2度目のPU改良を見送る理由
ADUOによって今季割り当てられたPUのアップグレード権の未使用分を、来季に繰り越すことはできない。技術規則には、シーズン最終戦までにアップグレードを導入しなかった場合、その権利は失効すると明記されている。
ホンダはサマーブレイク明けの2026年F1第12戦オランダGPで、今季唯一のPUアップグレードを投入する。
2回のPUアップグレード権を与えられながら、その使用を1回にとどめるというアウディの決断の背景には、コストキャップ規則のもとで複数年にわたってリソースをどう配分するかという、PUメーカーに共通する課題がある。
今季中に2度目のアップグレードを投入する場合、予算ばかりでなく技術的リソースを消費し、2027年に向けて、より強力なPUを用意する余地が削られる可能性がある。あるいは、次の一歩に必要な改良を施すだけの予算が既に残っていない可能性もある。
イギリスの専門誌『Autosport』によると、マクニッシュは「誰もが、シャシーとパワーユニットのアップグレードをいつ投入するのか、そして資金をどこに使うのかというトレードオフを抱えている」と説明した。
「一度にすべてを使い切ってしまうと、後で戦うための手段が残らない。だから、期待値を管理する必要がある。それも1シーズンだけでなく、複数年にわたって考えなければならない」
Courtesy Of Audi
アラン・マクニッシュ(アウディF1チーム レーシング・ディレクター)、2026年7月23日(木) F1ハンガリーGPメディアデー(ハンガロリンク)
アウディはシーズン後半戦でも、引き続きマシン全体の性能向上に取り組む。ただし、PUについては制御面の最適化などを進めるにとどめ、大掛かりなハードウェア変更を伴う本格的なアップグレードは、2027年シーズンに向けた開発へ集中させる。
「目指す方向は決まっているが、それはライバル勢との相対的な比較にも左右される。だから我々は常に、自分たちばかりでなくライバルの進化の程度を注視している」とマクニッシュは語る。
「今季ここまで、我々のパフォーマンスが向上してきたことは分かると思う。パワーユニットも間違いなくその一因であり、各システムを最大限に生かそうとしてきた。同時に、アップグレードによってシャシー面でも確実に前進している」
「今季の後半も同じように改善させるつもりだが、パワーユニットについては2027年の話だ。何よりそれはハードウェアに関する変更であり、すぐに変えられるものではない」
2027年仕様のPUでどれだけの改善を期待しているかと問われると、マクニッシュは笑いながらこう答えた。
「少し休ませてほしいね。それは2027年の話であって、まだ2026年の半ばに過ぎないんだ。まずは紅茶を1杯飲ませてくれ」