
F1王者マクラーレンの「心臓部」を奪取…ウィリアムズ、幹部4人を一挙に引き抜き再建加速
ウィリアムズは2026年F1第5戦カナダGPに先立ち、マクラーレンでチーム・オペレーティング・オフィサー(COO)を務めたピアース・ティンの獲得を発表した。ティンは8月に、新設ポストのチーフ・オプティマイゼーション&プランニング・オフィサーとしてチームに合流する。
ティンは表舞台で華々しいスポットライトを浴びるような存在ではないが、2023年初頭の大規模な技術チーム再編以降、チーム代表アンドレア・ステラを支えるなど、マクラーレンの裏方で重要な役割を担ってきた人物だ。
ティンがマクラーレンに加わったのは2008年。以降、オペレーション担当エグゼクティブ・ディレクターなど、複数の要職を歴任した。2023年3月にCOOへと昇格。それと時期を同じくして、マクラーレンはコンストラクターズ選手権の頂点へと駆け上がっていった。
低迷し続ける中団チームから世界王者へ。マクラーレンが過去10年で遂げた復活劇において、ティンは中核的人物の一人と評価されてきた。
製造と運営を変革する新設職
ウィリアムズは、ティンのために新たな戦略的ポストを設けた。製造とオペレーションを主導し、変革するための役職だ。チームによれば、この役職は長期的な成功を追求するためのものだという。
具体的には、プロセスの合理化、リソースの最適化に加え、ロボティクスやAI、先進的な製造技術といった最新のテクノロジーを導入し、設備を刷新することが含まれる。製造・運営の根幹を刷新せんとの狙いがうかがえる。
ティン自身も新天地での意欲に満ちている。ウィリアムズはあらゆる領域でトップを争い、F1で新たな基準を打ち立てるという明確な野心を持っているとし、その一翼を担うことへの期待を語った。
「マクラーレンでは素晴らしい時間を過ごし、チームを頂点へと押し上げる手助けができた。同じことをウィリアムズでも実現できればと思っている」
チーム代表のジェームズ・ヴァウルズは、トップ争いへの復帰に向けて人材、プロセス、技術への投資を続けるなかで、ティンを迎えられることに胸を躍らせていると語った。
また、タイトル争いで勝利するチームを築くというウィリアムズの野心は明確であるとし、ティンはまさに「それを成し遂げた直近の比類なき経験を持つ」と評価した。
メルセデスとアルピーヌからも補強
ウィリアムズが今回、ライバルチームから獲得した人材はティン一人にとどまらない。一部はすでに業務を開始している。
その一人が、新たに空力開発責任者となるクレア・シンプソンだ。メルセデスで12年を過ごしたのち、ウィリアムズに加わった。シンプソンが在籍した期間、メルセデスの空力部門は数々のコンストラクターズタイトルを支えた。
同じくメルセデスからは、フレッド・ジャッドが加わる。パワーユニット開発部門ハイパフォーマンス・パワートレインズ(HPP)に長年在籍した人物で、ウィリアムズでは新設のパフォーマンス最適化責任者を務める。
2026年型パワーユニットの開発を主導した中心人物の一人とされており、PUが根幹に据えられた新たな時代のレギュレーション下において、それを熟知するジャッドが加わる意味は小さくない。
3人目は、アルピーヌでチーフエンジニアを務めたスティーブ・ブースだ。すでに4月から、車両エンジニアリング責任者としてウィリアムズでの職務を開始した。2014年に短期間トロロッソに移った時期を除き、エンストンを拠点とするチームに20年以上在籍した古参で、ルノーが2005年と2006年にタイトルを獲得した時期にも在籍していた。
低迷する2026年、道のり長き再建への道
ウィリアムズは2026年シーズンの開幕4戦を終えて、コンストラクターズ選手権8位に沈んでいる。獲得したポイントはわずか5点にとどまる。
アレックス・アルボンとカルロス・サインツが駆るウィリアムズの2026年型マシン「FW48」は、ペース不足に加えて重量超過の問題を抱えている。
ヴァウルズは、長期的な視点に立ってウィリアムズの再建を進めてきた。短期的な結果ではなく、数年先を見据えてグリッド前方への復帰を目指している。
ウィリアムズは、今後数カ月のうちに、ライバルチームからさらに上級幹部を迎え入れると予告している。
王者マクラーレンの裏方を引き抜いた今回の人事は、低迷するチームをどこまで押し上げるだろうか。その答えが出るまでには、なお時間を要することになる。