
ホンダF1パワーユニット「RA626H」回生能力に深刻懸念、ニューウェイ言及。250kWにすら届かない?
アストンマーティンの2026年型F1マシン「AMR26」に搭載されているホンダ製F1パワーユニット「RA626H」が、エネルギー回生能力においてレギュレーションで想定されている水準に達していない可能性が浮上した。英公共放送『BBC』の報道によれば、F1コミッションの会合でその問題が指摘されたという。
F1会合で浮上した回生能力への疑念
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
ガレージ内で作業を見守るアストンマーティンのF1チーム代表兼マネージング・テクニカル・パートナーを務めるエイドリアン・ニューウェイ、2026年2月20日 F1プレシーズンテスト6日目(バーレーン・インターナショナル・サーキット)
報道によると、第2回バーレーンテスト初日に開かれたF1コミッションの場で、アストンのチーム代表エイドリアン・ニューウェイが、「ホンダのパワーユニットは250kWという下限値ですらエネルギーを回生できず、特定条件下で有効となる350kWの上限値には到底及ばない」と発言したと、複数の関係者が証言した。
2026年の技術規則では、エネルギー回生システム(ERS)が扱う最大電力は350kWに制限されている。一方で、規則には「250kWという下限値」は存在しない。ただし、ストレート走行時などにドライバーが最大パワーを要求しているにもかかわらず、システムが自動的に車速を抑え、モーターを発電側へ切り替える際の上限値として「250kW」という値が定められている。
これは、ドライバーが意図しないレベルの激しい減速を防ぎ、クルマの挙動が不安定になる事態を回避するための安全規定であり、「250kWを超える強い回生を禁止する」という趣旨だ。
したがって250kWという数値は、「メーカー側は当然に到達するだろう」と規則が想定している一つの値と解釈する余地がある。その意味において、ニューウェイがこの値を最低限クリアすべき基本的な回生レベルと捉えているとしても、不自然とは言えない。
仮にメルセデスやフェラーリ、アウディ、レッドブルといった他メーカーが350kW近い領域を有効に活用できている場合、理論上は少なくとも100kWの差が生じる計算になる。ただし、各社の到達水準は公表されていないため、実際の差は不明だ。
2026年規定のPUは、ICE(内燃エンジン)とほぼ同等の出力をMGU-Kが担う、電動依存度が極めて高いパッケージだ。100kWという回生能力の差は、ラップタイムやレース戦略に重大な影響を及ぼすだけでなく、安全面での懸念にもつながりかねない。
1周あたりで許容されている8.5MJの回生上限に届かない場合、慢性的なエネルギー不足に陥ることになる。その結果、ストレートの途中でMGU-Kの出力を早期に停止せざるを得なくなる可能性がある。これは、ライバルがストレートエンドまでモーターの力で加速を続けるなか、自車のみが途中で最大350kW(約476馬力)の出力を失う事態を意味する。
性能不足にとどまらないホンダPU問題
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
アストンマーティン・ホンダAMR26をドライブするフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン・ホンダAMR26)、2026年2月19日 F1プレシーズンテスト5日目(バーレーン・インターナショナル・サーキット)
アストンの苦境は、パフォーマンス不足にとどまらない。テスト最終日の前日には、バッテリー関連のトラブルにより、残り3時間を残して走行が打ち切られた。HRCの角田哲史F1パワーユニット総責任者は先月、バッテリーについて「自信がある部分です」と語っていた。
さらに、テスト最終日には前日のトラブルに加えてPUパーツ不足が露呈し、走行プログラムはショートランに限定された。チーム代表のペドロ・デ・ラ・ロサは各ランの間にデータ分析を行うと説明していたが、ランス・ストロールがこの日に記録した周回数はわずか6周にとどまった。
具体的にどのパーツが不足していたのかは明らかにされていないが、パドックでは、最終日の時点でホンダ側には使用可能なバッテリーが1基しか残っていなかったと噂されている。また、ホンダPUは15kg近い重量超過にあるとも取り沙汰されている。
度重なるPUの信頼性トラブルを背景に、第2回テスト期間におけるアストンの総走行距離は693kmにとどまった。一方、メルセデスは全チーム最多となる2,365kmを走破。アストンを除いて最も周回数が少なかった新規参戦のキャデラックでさえ、270周を重ねた。