”かつての悪循環”の影…アストン、挽回へ「数カ月単位」を覚悟。ホンダは性能にも「不満」――僅か6周でF1テスト閉幕

  • Published:
  • Googleで優先するソースとして追加する

車体とパワーユニットの双方が刷新される2026年シーズンの開幕戦に向けたバーレーンでのF1プレシーズンテスト最終日は、アストンマーティン・ホンダにとって、これ以上ない厳しい結末を迎えた。

チームは度重なるトラブルと深刻なスペアパーツ不足により、セッションを2時間以上残した段階で走行プログラムを打ち切った。この惨状は、かつてのマクラーレン・ホンダ時代の悪夢を彷彿させるものだった。

ホンダF1の折原伸太郎トラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアは、3日間合計でわずか128周にとどまった今回のテストを振り返り、目標としていた走行距離を確保できなかったとして、「長く厳しい1週間になった」と認めた。

さらに、信頼性だけでなくパフォーマンスにも「満足していない」とし、HRC Sakuraだけでなく、ミルトン・キーンズ、そしてシルバーストンの各拠点の総力を挙げて解決策を模索していくと誓った。

わずか6周、計測ラップすら刻めず

ガレージ内でアストンマーティン・ホンダ「AMR26」に乗り込むランス・ストロール、2026年2月20日 F1プレシーズンテスト6日目(バーレーン・インターナショナル・サーキット)Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

ガレージ内でアストンマーティン・ホンダ「AMR26」に乗り込むランス・ストロール、2026年2月20日 F1プレシーズンテスト6日目(バーレーン・インターナショナル・サーキット)

この日、AMR26をドライブしたランス・ストロールは、午前のセッションの大半をガレージでの修復作業に費やした。終了間際にようやくコースインしたものの、2周のチェックランにとどまった。

期待された午後のセッションでも状況は好転せず、最終的な周回数はわずか6周に留まり、ストロールは一度も計測ラップを刻むことのないままテストを終えた。走行が限られたことについて、現場チームを統括するマイク・クラックは「信頼性問題への対応が主な課題だった」と説明した。

一連のテストでは、マクラーレンとの提携時代にも見られた悪循環があった。ホンダにトラブルが発生し、走行距離と貴重な学習機会を失う。その結果、十分な改善ができないままコースに戻ることとなり、再びトラブルに見舞われる――。

バーレーンでの第2回テスト期間を通じたホンダ製パワーユニット(PU)の合計走行距離は693kmにとどまった。最多を記録したメルセデスPUとは7,825kmもの差が生じた。

特にストロールの走行不足は深刻で、この3日間を通じて走行できたのはわずか32周に過ぎなかった。ストロールはセッション後、挽回には「数カ月」を要する可能性があると認めた。

「今日の走行は限られたものになり、望んだ形でテストの締め括れなかった。クルマが性能面で求めるレベルに達していないことは明らかだ。今後数週間から数カ月にわたって多くの課題に取り組む必要がある」

ガレージ内で話をするアストンマーティン・ホンダのチームメンバー、2026年2月20日 F1プレシーズンテスト6日目(バーレーン・インターナショナル・サーキット)Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

ガレージ内で話をするアストンマーティン・ホンダのチームメンバー、2026年2月20日 F1プレシーズンテスト6日目(バーレーン・インターナショナル・サーキット)

ホンダが直面する「パーツ不足」と体制再構築の課題

背景には、ホンダが抱える物理的な制約がある。テスト最終日にスペアパーツ不足を認めたことから、主要部品の在庫が限られている状況が明らかになった。

さらに、2021年シーズン末限りでの撤退から復帰表明までの約1年半の空白期間に伴う体制再編も影響している可能性がある。

また、エイドリアン・ニューウェイが主導するアグレッシブな空力パッケージが、PUの冷却や信頼性確保において難度を高めている可能性も否定できない。

アストンの苦境はバーレーンで始まったわけではない。1月末のバルセロナ・シェイクダウンでも初日から遅れを取り走行できず、開発遅延と信頼性不足から十分な走行距離を稼げていなかった。

その結果、初期トラブルの洗い出しもさることながら、2026年規定の鍵となるエネルギーマネジメントの習熟も完全に止まっている。他メーカーがバッテリーの充放電最適化を進めるなか、アストンとホンダは依然としてそのスタートラインにすら立てていない可能性もある。

アストン「理想とは程遠い」

チームの顔役を務めるペドロ・デ・ラ・ロサは、現状が理想から程遠いことを認める。

「望んでいた場所にいないことは確かだ。プレシーズンテストを通じて、最も周回数の少ないチームになってしまった。当然、もっと走り込みたかった」

その一方で、「限られた周回数の中でも膨大なデータを得ることはできた。これを分析してオーストラリアでの開幕戦に備えたい」とも語った。

また、クラックは「通常のウインターテストで行うべき作業をすべて完了できていない」と認めつつも、「改善すべき点は明確」であると主張した。

とはいえ、ライバル勢が着実に熟成を進めるなか、十分な距離を確保できなかった代償は計り知れない。わずか15日後に迫る開幕戦オーストラリアGPまでに、アストンマーティン・ホンダは、現在抱える課題をどこまで解消できるだろうか。厳しい船出は続く。