
映画に映らないF1、王者アロンソの新規ファンへのメッセージ
映画『F1/エフワン』が世界的な注目を集めている。これまでF1に関心のなかった層も劇場に足を運んでおり、主演のブラッド・ピット(61歳)が長いブランクを経てF1に復帰し、再び成功を収めるというストーリーが話題を呼んでいる。
だが、一部には「非現実的なストーリー展開」との批判もあり、新たにF1に触れるファンに対して、部分的に歪んだイメージを植え付ける危険性も指摘されている。
一方、今年のイギリスGPでは、37歳のニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)がF1デビューから239戦目、実に16年越しでキャリア初の表彰台を獲得するという、“おとぎ話”のような出来事が現実のものとなったばかりだ。
Courtesy Of Sauber Motorsport AG
メディア取材を受けるニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)、2025年7月24日(木) F1ベルギーGP木曜記者会見(スパ・フランコルシャン)
そうした中、ベルギーGPでは、44歳の誕生日を迎えたばかりのフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)に対し、この映画が新たなF1ファン層に与える影響について質問が飛んだ。
アロンソは、「正直、ニコ(ヒュルケンベルグ)も僕も次世代のファンがどう感じるかなんて、あまり気にしていないと思う。ただレースで勝つこと、チームと共に最善を尽くしてパフォーマンスを引き出すこと、それだけに集中している」と述べ、ファンの印象よりも競技そのものへの取り組みが優先事項だと強調した。
また、「もし来年、ニコと僕に勝てるマシンがあって、8連勝してタイトル争いをするようになったら、みんなは『冬の間に何か特別なものでも食べたのか?』とか、『新しいトレーニングを始めたのか?』、あるいは『急にドライビングが上達したのか』なんて思うだろう。でも、現実はそうじゃない」とも語り、結果の裏には日々の積み重ねがあることを指摘した。
「僕らは日々トレーニングに励み、毎日移動しながら食事にも気をつけて、シミュレーターでの作業を繰り返してる。ただひたすら、チームと一緒に改善に向けて努力を重ねているんだ」
「結果が出れば、それを世界中のファンと共有したいと思っているけど、ファンの反応が僕らの優先事項ってわけじゃない」
そして、最後にこう締めくくった。
「誤解してほしくないけど、ファンを愛していないわけじゃない。でも、僕らは『自分たちの走りの良し悪しをファンが理解してくれているか』なんてことを考えて走っているわけじゃない」
「重要なのは、チームやこのスポーツの技術的な側面なんだ」