ハミルトンとウォルフの口論、競争力不足でメルセデス内部の緊張が高まっているとの指摘
メルセデスのルイス・ハミルトンとトト・ウォルフ代表が22日(土)のF1エミリア・ロマーニャGP予選の最中にガレージ内で言い争うような様子を見せた事についてニコ・ロズベルグは、競争力の欠如によってチーム内の空気が張り詰めてきている可能性があると指摘した。
世界選手権8連覇中のシルバーアローは雨のイモラで行われた予選でジョージ・ラッセルが11番手、ハミルトンが13番手とダブルQ2敗退を喫した。メルセデスが予選Q3を逃したのは2012年日本GP以来初めての事で、187戦連続Q3進出という記録は遂に途絶えた。
開幕戦から続く不振の中でV6ハイブリッド時代におけるワースト記録を更新する事になるQ2終了を前に、国際放送のカメラはガレージ内で熱を帯びるハミルトンとウォルフを捉えていた。落ち着きを装いながらもウォルフの表情は非常に険しく、ハミルトンを厳しくたしなめているような様子だった。
会話の内容について問われたハミルトンは「内々の事だから話す気はない」と退けた。
2010年から7年間に渡って英国ブラックリーのチームのレギュラードライバーとして活躍したロズベルグはSky Sportsに対し、会話の正確な内容は分からないと前置きした上で「いま推測するなら、トトはルイスがした何かについて腹を立てていたように見える。まあ無理もないかもね」と語った。
「ルイスはメルセデスのガレージ内無線か何かで、かなりの苛立ちをぶつけたのかもしれない。戦略面での自分の考えにチームが従わなかったとか、クルマか何かについて文句を言ったのかも」
一つ明らかな事は、共にQ2敗退を喫する事になるラッセルが最後まで諦めずにコックピット内に留まった一方、ハミルトンは早々に諦めてクルマを降りていたという事だ。少なくとも残り2分の段階で44号車は空っぽだった。
カート時代からハミルトンを良く知る36歳のドイツ人ドライバーは「それにルイスはQ2が終わる前にクルマを降りていた。終盤に路面が改善する可能性がまだ1%あったかもしれないのに。トトはその事について怒っていたのかもね」と付け加えた。
「いずれにしても、ストレスが溜まり始めているように見える。前進するどころか、むしろ後退している感じだしね。昨日の予選では1周あたり2秒近くも遅く、ここ10年で最悪の結果に終わったわけで、当然、内部では緊張が高まっているはずだ」
なおこの件についてウォルフは「意見の相違は全くなかったし、仲違いしていたわけじゃない。2人ともがセッション全体の出来について腹を立てていたというだけの話だ。私は彼に、彼は私に怒りをぶつけたが、それは同じ事についてだった」と説明した。
予選後のインタビューに応じるハミルトンは印象的だった。いつ如何なる時であれ、希望を捨てずに決して諦めない姿勢を強調してきた王者の姿はそこになかった。失望や落胆と言うよりは、ただただ力なく気力を失っているように見えた。
至らぬ状況にあって奮起できるのは、現実的に達成可能な魅力ある目的地と今立っている現在地、そして現在地から目的地までの道のり・到達するための方法が揃っている時に限られる。今のメルセデスにはそのいずれもが欠け、あるいはボヤケているように見える。