
理論上は勝てた――メルセデスが明かす”アジャスターガン問題”の代償、ラッセル終盤失速の真相
2026年F1第7戦バルセロナ・カタロニアGPの決勝レースにおいて、ジョージ・ラッセル(メルセデス)が最終ストップでペース不足に陥った原因が判明した。それは、ラッセル本人のドライビングとは全く関係のないものだった。
当時首位を走行していたラッセルが、36周目に最後のピットストップを行った直後、バーチャル・セーフティーカー(VSC)が導入された。その結果、ラッセルのストップにより首位に浮上していたルイス・ハミルトン(フェラーリ)は、順位を失うことなく3回目のタイヤ交換を実施した。
レースがリスタートを迎えるとラッセルは、ハミルトンに対してタイムを失っていったばかりでなく、後続のチームメイト、アンドレア・キミ・アントネッリの接近を許していき、残り6周でオーバーテイクを許した。
ただ、アントネッリはその直後に電気系統のトラブルに見舞われ、リタイヤを余儀なくされた。
最終ストップで痛恨のウイング誤調整
ペースダウンの原因は、ラッセルの最終ストップにあった。この際チームは、タイヤ交換と併せてフロントウイングのフラップ角を調整していた。
調整に際しては、フロントウイング・アジャスターガンと呼ばれる専用工具が使用されるのが一般的だ。この工具は、あらかじめ設定された分だけ瞬時に調整機構を回転させることができる。
調整機構はウイングの左右それぞれに備わっているが、通常は左右同量を変更する。
メルセデスの副チーム代表を務めるブラッドリー・ロードは、「我々は最後のピットストップにおいて、アジャスターガンの問題が原因で、フロントウイングを誤って調整してしまった。その結果、彼は本当に酷いオーバーステアなバランスで走ることになり、終盤のペースを確実に落とすことになった」と説明した。
最終的に2位でフィニッシュしたラッセルはレース後、ハミルトンと同じ3ストップ戦略を望んでいたと示唆した。だがロードは、3ストップも検討したものの、2ストップの方が紙一重ながら「有利」だと考えていたと明かした。
レース展開を踏まえたうえで、なおメルセデスはトラックポジションを重視した。ハミルトンが3ストップを視野に2回目のピットストップを行った時点で、これに合わせてピットに入った場合、ラッセルはハミルトンの後方でコースに復帰する計算だった。
メルセデスは、そのシナリオは勝利から遠ざかるものだと見ていた。
「理論上は、勝てたレースだった」
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
パルクフェルメで健闘を称え合うルイス・ハミルトン(フェラーリ)とジョージ・ラッセル(メルセデス)、2026年6月14日(日) F1バルセロナ・カタロニアGP決勝(カタロニア・サーキット) – コピー
ロードはまた、「すべてを完璧」にこなしていれば、今回のバルセロナではフェラーリではなく、メルセデスが勝利していた可能性があったと指摘した。
それは、VSCの導入によりハミルトンがアドバンテージを得たから、また、アントネッリが信頼性の問題によりリタイヤを強いられたから、そしてラッセルのウイング調整に問題があったから、ということだけが理由ではない。これらに加えてロードは、両ドライバーにバトルを許可したことを挙げている。
ラッセルとアントネッリは第2・3スティントを通じて互いにポジションを争った。これにより、必然的に両ドライバーはハミルトンに対してタイムを失っていた。チームオーダーを出していれば、失われることのないタイムだった。
ロードは、仮にVSCがなければハミルトンは最終ストップを終えた段階でメルセデス勢の後方に下がっていたとしたうえで、「無論、それによって必ずしも結果が変わったとまでは言えない」としつつも、「勝利を狙ううえで、より有利な立場に立てていた可能性があった」とし、「理論上は、勝てたレースだった」と結論づけた。