
日本と中国からの「より多くのF1開催要請」を明かすドメニカリ、世界各地で過熱する招致争いの行方
F1のCEOを務めるステファノ・ドメニカリが、中国と日本から新たなレースの開催を求める打診が寄せられていることを明らかにした。現在、日本では鈴鹿サーキット、中国では上海インターナショナル・サーキットで、それぞれ年1回のグランプリが開催されている。
F1人気の高まりを背景に、カレンダー入りを目指す動きが世界各地で活発化している。ドメニカリは、交渉が進む各地域の状況とあわせて、中東情勢を踏まえた2028年の代替計画について説明した。
日本と中国の開催打診、大阪誘致の行方
creativeCommons Andy Atzert
大阪・関西万博の会場に設置された世界最大級の木造建築物る「大屋根(リング)」、2025年10月11日
イギリスの衛星テレビ局『Sky Sports』によると、ドメニカリは極東でいくつかの協議が行われていることを認めたうえで、日本と中国から幾つかの要請が寄せられていることを明かした。
「ひとつ明かせるのは、中国と日本では、より多くの開催要請を受けているということだ。ただし現時点では、中国については1レースにとどめたい。ほかの選択肢を考える前に、まず市場を定着させる必要があるからだ」
中国については、近い将来に2レース目を開催する可能性を否定する一方、日本については具体的に踏み込んでおらず、鈴鹿との併催の可能性を完全には排除していないようにも受け取れる。一方で、鈴鹿の代替候補という可能性も除外できない。
さらに打診の件数や、具体的な都市・団体名も明らかにしていないが、公になっている構想としては、2025年10月に閉幕した大阪・関西万博の会場跡地である夢洲へのサーキット建設案があり、大阪が有力候補として挙げられる。大阪観光局は、F1誘致を目指す意思を明らかにしている。
2025年1月、大阪府・市は万博跡地の活用方法を巡り、二つの提案を優秀提案に選定した。そのうちの一つが、F1誘致を視野に入れたサーキット建設を核とする再開発案だ。大林組大阪本店を代表企業とする事業体が「The heart of OSAKA」を掲げて提示した。
もっとも、実現までの道のりは長い。
大阪府・市は2026年7月、民間開発エリア約42ヘクタールを対象とする開発事業者の公募を開始した。開発事業予定者の決定は2027年2月頃を見込み、その後、地盤調査や基本設計を経て、土地売買契約を2031年2月に締結することを目標としている。なお、優秀提案を行った二つの共同事業体は、合流して応募を検討する意向を明らかにしている。
計画は事業者選定の結果にも左右されるため、F1開催に至るかは依然として見通せない。
アフリカや南米、世界各地で進む招致交渉
Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd
ホンダのF1マシン「RA273」を駆るジョン・サーティース、1967年南アフリカGP、キャラミGPサーキットにて (2)
アジア以外でも、複数の国々がカレンダー入りを目指している。ドメニカリは、各地域での交渉状況をこう説明した。
「アフリカでの交渉は非常にうまく進んでいる。南米でも別の協議を行っている。極東でも話し合いを進めている」
アフリカでは、ルワンダと南アフリカが関心を示している。F1は1993年以来、アフリカでレースを開催しておらず、大陸への復帰は長年の悲願となっている。南アフリカでは、かつてF1を開催したヨハネスブルク近郊のキャラミ・サーキットがカレンダーへの復帰を目指している。
アジアでは、タイと韓国が候補に挙がる。タイ政府は2028年に首都バンコクでF1を開催するための総額約400億バーツ(約1,900億円)規模の招致計画を承認しており、新たな開催国として最も有望な候補のひとつとみられている。
南米で名前が挙がっているのは、1998年の開催を最後に姿を消したアルゼンチンだ。その背景には、フランコ・コラピント(アルピーヌ)がグリッドに加わって以降の同国におけるF1人気の急上昇がある。
ホッケンハイムの復帰打診と中東リスク
Courtesy Of Red Bull Content Pool
水しぶきを上げてホッケンハイムリンクを走行するレッドブル・ホンダRB15
意外な候補として浮上したのが、ドイツだ。ドメニカリは、欧州が再びF1にとって重要な市場になりつつあるとしたうえで、「ホッケンハイム側から連絡があり、最初の話し合いを行った」と明かした。
「彼らは現在、ホッケンハイムのモータースポーツ・パークを、[F1開催とは]別の目的に沿って開発している。仮にF1開催の可能性について協議したいのであれば、当然、投資の内容を変える必要がある。F1というプラットフォームには、現在の開発計画とは異なる種類の投資が必要だからだ。ただし、その点についてはすでに話し合っている」
ホッケンハイムでF1が開催されたのは、2019年が最後だ。採算が取れないことがカレンダー脱落の主な要因の一つとされるが、同サーキットは2024年に所有形態と投資モデルが変わった。現在、ホッケンハイムの株式の大半を保有するemodromグループは、2億5000万ユーロ(約455億円)規模の投資を計画している。
これらの候補地がF1カレンダーに加わる可能性があるのは、早くても2028年となる。すでに2027年に向けては、トルコとポルトガルの復帰が決まっている。
ただし、2027年のカレンダーには、中東情勢による不確実性が残っている。ドメニカリは、不測の事態に備えて複数の計画を用意していることを明らかにした。
「中東情勢が収束しない場合に備え、[2027年に向けては]複数の選択肢と計画を用意している。ただし、それを実行に移す判断は当然ながら年末になる。つまり、調整するための時間はまだ十分にあるということだ」
「ただ、来年になってもこの地域の情勢が収束していないとしても、F1に関することは心配すべき問題のなかではごく些細なものにすぎない。[紛争そのものの]状況が非常に深刻なものになるからだ」
「安心してもらいたいのだが、いかなる場合でも来年も24戦という目標を維持できるよう、すでに複数の選択肢を盛り込んだ異なるプランを用意している」