13歳ハミルトンがロズベルグ家で知った「地続きの可能性」、モナコ移住の原点となった”ジェームズ・ボンドの世界”

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ルイス・ハミルトン(フェラーリ)がモナコへの移住を夢見たのは、メルセデス時代のチームメイト、ニコ・ロズベルグの父ケケ・ロズベルグが所有するプライベートジェットに搭乗したことがきっかけだった。

2026年F1第6戦モナコGPに際して7度のF1王者は、マクラーレンの支援を受けてレース活動を本格化させた13歳での衝撃的な原体験を振り返りつつ、現在のモータースポーツ界が抱える資金格差をめぐる問題に警鐘を鳴らした。

ハミルトンを変えたロズベルグ家での体験

イタリアのパルマで開催されたカートレースで、ハミルトンは当時すでに頭角を現していたロズベルグとトップ争いを繰り広げた。22周にわたって背後に食らいつき、最終ラップでロズベルグを抜いて勝利を収めると、そのレース後、モナコにあるロズベルグの自宅に招かれた。

ハミルトンは、1982年のF1王者ケケ・ロズベルグが所有するプライベートジェットでモナコへと飛んだ。米スポーツ専門局『ESPN』によると、ハミルトンは当時の衝撃をこう語った。

「彼の親父さんのジェット機に乗ったときのことを覚えている。『うわっ、マジか』って感じだったよ。プライベートジェットを持ってるなんて知らなかったんだ。信じられないくらい衝撃的な経験だった。着陸したら、すぐ横に親父さんのヘリが駐機していて、まるでジェームズ・ボンドの世界みたいだった」

幼少時代のニコ・ロズベルグ、ルイス・ハミルトン、ロバート・クビサcopyright nico_rosberg

幼少時代のニコ・ロズベルグ、ルイス・ハミルトン、ロバート・クビサ

ロズベルグ一家が暮らすアパートを訪れたハミルトンは、そこから見える景色に圧倒された。それまで遠い物語の中にしかないと思っていた成功者の世界が、自分が取り組んでいるレース活動の延長線上に確かに存在しているという実感。しかも、それは同じカートレースを戦った自分と同じような少年のすぐそばにあった。

ハミルトンは、いつか自分もヘリコプターを所有し、こうした場所に住みたいと夢見るようになったという。そしてマクラーレンでのタイトル獲得を経て2010年、スイスからモナコへと居を移した。

かつてロズベルグが育ったのと同じ建物で暮らすことになったのは、13歳のときに見たあの景色が、彼の中で明確な可能性として残り続けていたことの表れだった。

目にしたことでリアル化した可能性

ハミルトンの父アンソニーは、息子のカート活動を支えるために複数の仕事を掛け持ちし、家を抵当に入れて資金を捻出していた。そんな出自を持つハミルトンにとって、ロズベルグ家で見た光景は文字通りの別世界だった。

だがハミルトンは、その別世界が完全に断絶したものではなく、レースを通じて自分自身とつながっているという認識を得ることとなった。

「結局のところ、見たことがなければ、それを信じるのも難しいということなんだ」とハミルトンは語る。

「僕は幸運だった。ああいう経験を通じて、何が可能なのかを知ることができたからね。僕みたいに小さな町で育つと、そういう世界を見る機会はなかなかない。だから、それが実現可能だと想像することさえ難しいんだ」

「でもレースのおかげ、マクラーレンと契約できたおかげ、そしてニコと出会えたおかげで、それを知ることができた。本当に最高の経験だったよ」

モンテカルロ港を望むヨット上でメディア対応に臨むシャルル・ルクレールとルイス・ハミルトン(フェラーリ)、2026年6月4日(木) F1モナコGPメディアデー(モンテカルロ市街地コース)copyright Ferrari S.p.A.

モンテカルロ港を望むヨット上でメディア対応に臨むシャルル・ルクレールとルイス・ハミルトン(フェラーリ)、2026年6月4日(木) F1モナコGPメディアデー(モンテカルロ市街地コース)

才能より資金力が問われる時代への警鐘

ハミルトンは、自身の成功が13歳でマクラーレンに見出され、資金援助を得られたことに大きく依拠していたと考えている。それがなければF1へと至る階段を上ることはできなかったという彼の認識は、現在のモータースポーツ界を覆うコスト高騰に対する危機感に繋がっている。

ハミルトンは、自身と似た境遇のドライバーが今日、同じ道をたどれるとは思えないと語る。

「状況はただひたすら、間違った方向に進んでいると思う。その背景には、この業界や競技を運営している人たちの責任が問われていないという現状がある」

ハミルトンがカートを始めた頃、父アンソニーはクレジットカードを限度額まで使い切り、最初の1年に約2万ポンドを投じたという。それも家を抵当に入れての捻出だった。一方、現在では8歳の子どものレース活動に年間100万ドル以上を費やす家庭も存在するという。

この隔たりが、才能ある者ではなく資金を持つ者が勝ち上がる構造を生んでいるとハミルトンは指摘する。

「今では、普通の家庭の子どもが、最低限必要とされる額を投じる人たちと同じ土俵に立つところまでたどり着くのは、不可能ではないにしても極めて難しい。そんなことは許されるべきじゃないし、上のカテゴリーに行けばさらに金がかかる」

「本当に残念なことだよ。本来なら才能のある子どもが上がってくるべきなのに、今は資金力のある家庭が子どもにチャンスを与えて、恵まれた環境の子どもだけが上がっていくんだ」

ハミルトンは、FIAとF1が変革を起こさない限り、この状況は今後数十年続くと指摘したうえで、メディアの役割にも踏み込んだ。

「FIAとF1はこの状況を変えなければならない。そして、君ら(メディア)のような人々が彼らの責任を追及しない限り、改革が行われる可能性は極めて低いと思う」

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