
相次ぐDNF。メルセデスPU勢に何が起きているのか?アリソンが明かす”共通要因”、フェラーリ急伸で王座争いは新局面へ
メルセデス製パワーユニット(PU)を採用するマシンに信頼性トラブルが相次ぐ中、テクニカル・ディレクターのジェームズ・アリソンが、その原因に関する見解を示した。すべてが同じではないとしつつも、根本的にはバッテリーに関連する共通の要因があると指摘した。
メルセデスは過去3戦のうち2戦で、勝利を視野に入れながらも痛恨のリタイヤを喫した。
ジョージ・ラッセルは5月のカナダGPで、首位を走行中にリタイヤを強いられた。また、アンドレア・キミ・アントネッリは直近のバルセロナ・カタロニアGPで、残り5周の時点で2番手につけながらも電気系統のトラブルによりマシンを降りた。
トラブルはワークスチームにとどまらない。新たな技術規則により新世代PUが導入される中、マクラーレンを含むカスタマーチームもシーズン序盤に同じような信頼性トラブルに相次いで見舞われている。
copyright FORMULA 1
コース脇の芝生上でマシンを止めたアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、2026年6月14日(日) F1バルセロナ・カタロニアGP決勝(カタロニア・サーキット)
PU信頼性問題「バッテリーの同じ領域に起因」
アリソンはチームの公式ポッドキャストの中で、「熱心なF1ファンなら、今季これまでにいくつかのメルセデス製パワーユニット搭載マシンが、この問題で戦列を離れたことを見ているはずだ」としたうえで、個々のトラブルの原因は同一ではないとしつつも、共通の要因があると説明した。
「すべてが同じ問題というわけではないが、広い意味ではバッテリーの同じ領域に起因している」
「リスク要因の大部分は理解できていると思うし、うまくいけば、新しいバッテリー、これは我々が言うところのモジュールだが、これを今後段階的に投入し始めた際には状況が改善するはずだ」
アリソンは、一連のリタイヤがチームにとって「本当に、本当に手痛いものだ」と認めつつも、パフォーマンスの追求と信頼性確保のバランスという観点で、メルセデスはトラブルの発生をある程度は前提として受け入れていると語った。
「故障は起こり得るものだと受け入れなければならない。ただ、その故障がテストやリグ上で起きるようにし、チャンピオンシップ・ポイントを稼ごうとする場面では、できるだけ起きないように努めている」
アリソンはまた、バッテリートラブルの再発を予防するために、メルセデスがバルセロナ・カタロニアGPで意図的にパフォーマンスを抑えていた可能性を示唆した。
「こうした故障が起きて、その原因を完全に理解できていない場合、チームは少し慎重になるものだ。負荷を少し下げ、やや保守的に運用することで、問題を抱えているシステムに余裕を持たせるんだ」とアリソンは語った。
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
リタイア後に険しい表情でピットレーンを歩くジョージ・ラッセル(メルセデス)、2026年5月24日(日) F1カナダGP決勝(ジル・ビルヌーブ・サーキット)
フェラーリ急伸、タイトル争いは開発競争次第か
アントネッリがリタイヤするか否かにかかわらず、メルセデスはバルセロナで今季初の敗北を喫する流れにあった。
予選でポールポジションのラッセルにわずか0.064秒差まで迫ったルイス・ハミルトンは、見事なタイヤマネジメントを背景に決勝で印象的なペースを発揮。VSCの導入で一気に勝機を手繰り寄せると、2位以下に19.561秒もの大差をつけ、フェラーリ移籍後初となるトップチェッカーを受けた。
この活躍の背景には、バルセロナで導入されたフェラーリにとって今季2回目の大規模アップグレードがあった。マラネッロの技術部門はこの週末、他のどのチームよりも広範なパッケージを持ち込み、既にかなり強力であったリアエンドの空力性能を更に引き上げた。
現時点でフェラーリSF-26は、PU性能でメルセデスに遅れを取っている一方、ランド・ノリス(マクラーレン)が認める通り、コーナリング性能という点では最速のマシンであり、速度域を問わず安定して高いダウンフォースを発生させているように見える。
Courtesy Of Ferrari S.p.A.
フェラーリのガレージ前で優勝を祝福し合うルイス・ハミルトンとシャルル・ルクレール、2026年6月14日(日) F1バルセロナ・カタロニアGP決勝(カタロニア・サーキット)
メルセデスは現在、コンストラクターズ選手権でフェラーリを72点リードしている。ドライバーズ選手権では、アントネッリがハミルトンに41点、ラッセルに50点の差をつけて首位に立つが、この圧倒的な状況が今後も続くかどうかは不透明だ。
アリソンは、今シーズンの勢力図がシーズン中の開発競争に強く左右されるとみている。
「今見ている状況の大半は、レギュレーションがまだ非常に新しいことによるものだと思う」とアリソンは語る。
「レギュレーションがまだ成熟していないため、現時点でパフォーマンスを見つけ出すのは比較的容易だ。ルールが十分に研究され尽くしていないからだ」
「そのため、大規模なアップグレードパッケージひとつで、シーズン序盤に我々が持っていた優位性に匹敵するほどの性能向上を得ることができる」
「そのため、フェラーリがアップグレードを投入し、我々が対抗策を持ち込まなければ、それまで余裕と感じていた差は縮まることになる。今起きているのは主にそういうことだと思う」
そのうえでアリソンは、メルセデスにも反撃の手段はあるとし、「シーズン序盤に持っていたアドバンテージを再び取り戻せるはずだ」と自信を示した。
「もちろん、我々もこの戦いで丸腰なわけじゃない。いずれ我々のマシンにもアップグレードが投入される」
次戦オーストリアGPでフェラーリは、追加開発・アップグレード機会制度(ADUO)を利用した最初のPUアップグレードを展開するとみられており、さらにサマーブレイク明けのオランダGPまたはイタリアGPでは、より大型のターボを含む今季2回目のPUアップグレードを計画しているとされる。