
ホーナー初告白「フェルスタッペン家に非ず」解任の真相と角田&ローソン交代、宿敵ウォルフへの最後の言葉
2005年の参戦以来、レッドブル・レーシングを常勝軍団へと導いてきたものの、昨年7月に突如としてチーム代表兼CEOの座を追われたクリスチャン・ホーナーが、Netflixのドキュメンタリーシリーズ『Drive to Survive(邦題:Formula 1: 栄光のグランプリ)』シーズン8で、解任の舞台裏と現在の心境を赤裸々に語った。
最も注目されるのは、フェルスタッペン父子の関与という疑惑への言及だ。
父子の関与を全面否定
Courtesy Of Red Bull Content Pool
優勝したマックス・フェルスタッペンをパルクフェルメで待ち受けるヨス・フェルスタッペンと、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表、2023年7月23日(日) F1ハンガリーGP(ハンガロリンク)
2021年から2024年にかけて4年連続でドライバーズタイトルを獲得したマックス・フェルスタッペン陣営が、ホーナー解任に関与したのではないかとの見方は根強かった。だがホーナーは、マックスや父ヨスが「いかなる形でも責任を負っているとは思わない」と述べ、疑惑を全面的に否定した。
ホーナーによれば、解任の真因は別にある。2022年10月にレッドブルGmbHの共同創業者ディートリッヒ・マテシッツが死去したことに伴う、グループ内の力関係の変化だ。
「創業者を失ったことで、おそらく私は支配力を持ちすぎていると判断されたのだろう」
チーム代表解任後、オックスフォードシャー州の自宅にてNetflixのカメラの前に立ったホーナーはそう振り返り、解任の構図をこう説明した。
「ヨスが私の最大の理解者だったことは一度もないし、私に批判的な発言もしてきた。だが、解任はオリバー・ミンツラフ(レッドブルCEO)が下したものであり、その過程でヘルムート(マルコ)が助言した結果だと考えている」
大切なものを奪われた──レッドブルの体制転換
Courtesy Of Red Bull Content Pool
クリスチャン・ホーナー(レッドブル代表)とヘルムート・マルコ(レッドブル顧問)、2025年4月18日(金) F1サウジアラビアGP(ジェッダ市街地コース)
マテシッツの右腕としてチーム創設当初からホーナーと共にレッドブル・レーシングを強豪へと育て上げたヘルムート・マルコもまた、ホーナーの退任から間もなく、2025年末を以てチームを去った。20年にわたり築かれた体制は、マテシッツの死去から3年で崩壊した。
ホーナーにとって、自ら築き上げた組織との別れは受け入れ難いものだった。
「本当に辛い。喪失感を感じている。すべてがあまりに突然だった。きちんと別れを告げる機会さえなかった。あんな仕打ちを受ければ、とっさに『くたばれ』と言いたくもなる。自分の意思とは無関係に、本当に大切なものを奪われたのだからね」
ホーナーは2005年、31歳の若さでチーム代表に就任。マクラーレンからエイドリアン・ニューウェイを引き抜き、2010年にセバスチャン・ベッテルと共にチーム初のタイトルを獲得すると、その後ドライバーズタイトル7回、コンストラクターズタイトル6回という実績を積み重ねた。
角田&ローソン交代の裏側
Courtesy Of Red Bull Content Pool
レッドブル・レーシングのチーム代表クリスチャン・ホーナーと角田裕毅、2025年5月24日(土) F1モナコGP予選(モンテカルロ市街地コース)
2023年にはフェルスタッペンが支配的な強さを見せ、22戦中21勝を挙げた。だが直近2年はマクラーレンがコンストラクターズタイトルを獲得し、勢力図に変化が生じていた。
加えて、女性従業員に対する不適切行為疑惑が浮上。2度の調査で潔白とされたものの、批判的な視線は消えなかった。セルジオ・ペレスが契約延長から半年後に放出された件や、開幕2戦でリアム・ローソンを角田裕毅と交代させた人事も波紋を広げた。
ホーナーはローソンと角田の交代について「それは私の決断ではない」と語り、「その件ではヘルムートが大きく関与していた」と明かした。
ローソンはレッドブルで1ポイントも獲得できず、僅か2戦でレーシング・ブルズに出戻りとなった。一方の角田も好不調の波に直面し、2026年シーズンを前にシートをアイザック・ハジャーに譲ることになった。
「愛すべき宿敵」ウォルフとの最後の応酬
Courtesy Of Red Bull Content Pool
レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表とメルセデスのトト・ウォルフ代表、2023年5月5日のF1マイアミGP金曜記者会見にて
長年のライバルであり、犬猿の仲でもあるメルセデスのチーム代表トト・ウォルフとの私的なやり取りも明かされた。特に歴史的なタイトル争いを繰り広げた2021年は、コース外で激しい火花を散らせた両者だが、解任直後にウォルフから届いたメッセージには、競争相手への敬意が込められていたという。
「どう声をかければいいのか分からなかった。ある意味では、君は本当に嫌な奴だった。だが同時に、このスポーツは主要な主人公の一人を失うことになる。私はこれから誰と戦えばいい? 君がいつも言っていた『愛すべき宿敵』を失ってしまう。過去15回のうち、14回のタイトルを我々二人で分け合ってきた。悪くない数字だ」
ウォルフからのメッセージに対し、ホーナーはこう返したという。
「長年、君と真正面から戦えたことを誇りに思う。ライバル関係、競争、そして刺激をありがとう。数字が示す通り、他の誰も我々の領域には届かなかった。君の幸運を祈る。追伸、髪は切ったほうがいいぞ」
最後まで皮肉とユーモアを交えた応酬だった。
『Formula 1: 栄光のグランプリ』シーズン8は、2026年2月27日の日本時間17時より配信が開始される。