
ルクレールに向けられる”疑念”、実は「失格寸前」だった?ラッセル分析―エンジンモードとタイムから推定
2025年F1第14戦ハンガリーGPで3位表彰台を獲得したジョージ・ラッセル(メルセデス)は、レース終盤にシャルル・ルクレールを抜いた際、違和感を感じたと明かし、失格を回避するためにフェラーリが意図的な対応を行った結果、ルクレールのペースが低下していた可能性を示唆した。
「彼のペースが遅かったから、何かおかしいと思ったんだ」とラッセルは振り返った。彼が疑いの目を向けているのは、ルクレールのフェラーリSF-25に施されたライドハイト(車高)のセッティングだ。
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
表彰台の上で3位トロフィーを掲げるジョージ・ラッセル(メルセデス)、2025年8月3日(日) F1ハンガリーGP決勝レース(ハンガロリンク)
車高調整とプランク摩耗のリスク
ラッセルは、フェラーリがルクレール車の車高を極端に下げたことで、プランク(車体底部の摩耗測定板)が規定の許容値を超えて摩耗するリスクが生じたと指摘。その対策として、最終スティントではタイヤの内圧を意図的に上げ、さらにエンジンモードを制御することで、プランクが地面と接触しやすいストレートエンドのような地点で速度を抑え、摩耗を回避しようとした結果、クルマのパフォーマンスが著しく低下したのではないかとの見方を示した。
「考えうる唯一の理由は、車高を低くし過ぎてしまった結果、最終スティントに向けてタイヤの内圧を上げなければならなかったということだ」
「というのも、ストレートの終端で出力の低いエンジンモードを使っていたからだ。あの場所はプランクの摩耗が最も大きくなるポイントなんだよ」
「ラップタイムや彼らが使っていたエンジンモードなどから、僕らに考えられる唯一の理由はそれくらいだ」
ポールポジションからスタートしたルクレールは、今季初優勝に向けて第1スティントを「完璧」にまとめ、第2スティントの前半までレースをリードするも、その後ペースが急激に低下。最終スティントでオスカー・ピアストリ(マクラーレン)とラッセルに立て続けにオーバーテイクを許し、最終的に4位でレースを終えた。
レース後にルクレールは、失速の原因について「シャシー関連の問題」と説明したが、ラッセルはその説明に懐疑的な姿勢を崩さず、「『車高が低すぎて違法ギリギリだったんだ』なんて彼が言うわけがない」と受け入れなかった。
“1mm”が命取り─プランク規定と過去の前例
F1競技規則では、車体底部に装着されるプランクの摩耗は最大1mmまで許容されており、これを超えると違反となる。プランクは厚さ10mm±0.2mmの長方形の板材で、フロア最前部の“キール”から後輪前方までの領域に取り付けられている。
摩耗を抑えるため、プランクにはチタン製の滑材(スキッド)を取り付けることが許可されているが、車高を過度に下げれば摩耗リスクは急激に増す。
実際、今年3月の中国GPでは、ルクレールのチームメイトであるルイス・ハミルトンがこのプランク規定に抵触し、6位でフィニッシュしながらも失格処分を受けている。
今回のルクレールの失速が規定とのせめぎ合いによるものだったのか、それとも本当に技術的なトラブルだったのか。その真相は現時点では不明だ。
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.
決勝でフェラーリSF-25をドライブするシャルル・ルクレール(フェラーリ)、2025年8月3日(日) F1ハンガリーGP(ハンガロリンク)
2025年F1第14戦ハンガリーGPでは、3番グリッドからスタートしたランド・ノリス(マクラーレン)が今季5勝目を達成。2位にチームメイトのオスカー・ピアストリ、3位表彰台にジョージ・ラッセル(メルセデス)が続く結果となった。
F1サーカスはこの後、サマーブレイクを迎える。ザントフォールト・サーキットを舞台とする次戦オランダGPは、8月29日のフリー走行1で幕を開ける。