レッドブルとマックス・フェルスタッペンの連勝記録が遂に潰えた。2023年FIA-F1世界選手権第16戦シンガポールGPの決勝が9月17日に行われ、角田裕毅（アルファタウリ）を含む4台リタイヤの激動を乗り越え、カルロス・サインツ（フェラーリ）がポール・トゥ・ウインを飾った。

久々にレッドブル以外のドライバー達が熾烈な優勝争いを繰り広げた。勝負を盛り上げたのは残り19周、7番手を走行していたエステバン・オコン（アルピーヌ）がギアボックスの不具合と見られるトラブルによりマシンストップした事で導入されたバーチャル・セーフティーカー（VSC）だった。

逆転優勝を狙う2番手ジョージ・ラッセルを含むメルセデス勢は攻めのミディアムタイヤに交換。一旦は後方に下がるも、猛烈なペースでフィールドを駆け上がっていき、ラッセルは残り9周で3番手にポジションを上げてランド・ノリス（マクラーレン）を射程に捉えた。

残り5周で4台が1.7秒差に収まるスリリングなトップ争いが勃発。ラッセルはフレッシュなミディアムタイヤを武器に2番手ノリスを果敢に攻めたが、最終周のターン10を前に横壁に接触。そのまま直進してバリアに突っ込む劇的な幕切れを迎えた。

結果、サインツが粘り強い走りで全周リードを守り切って通算2勝目を挙げ、2位にノリス、3位表彰台にラッセルの僚友ルイス・ハミルトンが滑り込んだ。

トップ10圏外からスタートしたレッドブル勢は決勝でも尽くパフォーマンスと運がなかったが、それでも特に2セット目に履いたミディアムによりRB19が本来持つ強力なレースペースを取り戻し、マックス・フェルスタッペンは11番グリッドから5位、セルジオ・ペレスは8位入賞を果たした。

サインツと同じく使い古したハードタイヤで終盤を迎えた僚友シャルル・ルクレールはコンマ3秒差でフェルスタッペンを振り切り4位。オコンの不運もあってチームメイトのピエール・ガスリーが6位でチェッカーを受けた。

オスカー・ピアストリ（マクラーレン）はノリスとは異なり旧スペックながらも、堅実にレースを戦って7位を確保。ケビン・マグヌッセン（ハース）が10位に滑り込んだ。

アルファタウリ勢は角田裕毅が1周目にペレスと接触。クルマのダメージにより1周も走り切れずにリタイヤした一方、リアム・ローソンはアルファタウリの今季最高成績を塗り替える9位でフィニッシュした。

レース概要

決勝は日本時間17日(日)21時にブラックアウトを迎え、再開発工事の影響で一時的にレウアウトが変更された1周4,940mのマリーナベイ市街地コースを62周する事で争われた。フォーメーションラップは気温30℃、路面37℃のドライコンディションで開始された。

公式タイヤサプライヤーのピレリは最も柔らかいレンジのC3からC5までのコンパウンドを投入。主流戦略はミディアムからハードに繋ぐ1ストップで、ルクレール、角田裕毅、ピアストリ、そしてピットレーンスタートの周冠宇はソフトを、レッドブル勢とバルテリ・ボッタスはハードタイヤをスタートに選んだ。

オープニングラップではソフトの優位性を活かしてルクレールが2番手に浮上。フェラーリが早速1-2体制を築いた。5番手ハミルトンは3番手に躍り出るも、コース外に出た上でのポジションアップであったため、チームの指示に従い順位を戻した。

角田裕毅は14番手争いを繰り広げる最中、シニアチームのペレスと接触。ターン14のエスケープにクルマを停めたため、レース進行への影響はなかった。

フェルスタッペンがじわじわと順位を上げる中、19周目にローガン・サージェント（ウィリアムズ）がターン8のバリアに衝突。フロントウイングが脱落したが、自走してピットへと戻った。デブリ回収のために翌周にセーフティーカーが導入された。

これを機に、ハードスタートのボッタスとレッドブル勢を除く全車がピットイン。フェルスタッペンは2番手に、ペレスは4番手に浮上した。ルクレールはファストレーンのトラフィックの影響でピットアウトが遅れてしまい、ラッセルとノリスに対してポジションを失い6番手にまで後退した。

8番手を走行していたフェルナンド・アロンソ（アストンマーチン）は、ピットへと向かう際にコースとの間の白線をまたいで5秒ペナルティを受けた。

23周目にレースが再開されるとルクレールがコースアウト。ハミルトンに先行を許した。タイヤのワーキングウインドウを外れたか。フェルスタッペンは数周をかけて4台にパスされ6番手に、ペレスも同じ様にズルズルと後退していった。

入賞圏内を争っていたケビン・マグヌッセン（ハース）は折返しを過ぎた37周目、ターン1とターン7で立て続けにコース外に飛び出てガスリーに追い抜きを許した後、タイヤが汚れた事でパフォーマンスが一気にダウン。ピアストリ、ローソン、ヒュルケンベルグ、アルボン、周冠宇にも追い抜かれ、ポイント圏外16番手にまで転落した。

40周目、オコン、アロンソ、ガスリーに対して立て続けにポジションを許して10番手に後退したところでペレスが2回目のピットイン。ミディアムタイヤに履き替えて最後尾18番手でコースに復帰した。フェルスタッペンも翌周にミディアムを履き15番手でコースに戻った。

その僅か2周後、オコンのマシンストップによりVSCが導入された。レッドブルにとっては不運なタイミングであったが、新品ミディアムにより強力なレースペースを取り戻し、終盤に向けて着実に順位を上げていった。

メルセデス勢と同様にアロンソもまたVSCを機にタイヤ交換に動いたが、作業に手間取り大きくタイムをロス。トップ10から転げ落ち、15番手にまで後退した挙げ句、アウトラップのターン14を曲がれず最後尾にまで転落した。

残り4周、10番手を争うペレスとアレックス・アルボン（ウィリアムズ）が接触。ペレスはポイント圏内に浮上し、アルボンは13番手に後退した。 一件はレース後に調査される。

そして迎えたファイナルラップ。猛追するラッセルがバリアに正面衝突した事で優勝争いが決着した。

2023年F1第16戦シンガポールGP決勝リザルト

コンディション

セッション概要

サーキット

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