オーストリアのレッドブル・リングと英国シルバーストン・サーキットは、週末ではなく平日にレースを行った上で、2週連続でグランプリを開催する事に前向きな意向を示している。「2デイ+平日+ダブルヘッダー」のフォーマットは、今シーズンのF1カレンダーの救世主となる可能性がある。

カナダまでの開幕9レースは既に中止あるいは無期限の延期が発表されており、6月28日に決勝レースが予定されているポール・リカールでの第10戦フランスGPも同様の措置が取られる見通しとなっている。

失われた収入を取り戻すためにはグランプリの開催数確保が欠かせない。F1チームとリバティ・メディア首脳陣、そして現地プロモーターたちは、同一開催地でのダブルヘッダーの可能性について検討を重ねており、オーストリアとイギリスの2カ国が無観客レースでのそれに手を上げている。

レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、地元オーストリアの公共放送局「ORF」のラジオ番組の中で、シュピールベルクでの2戦連続開催に強い意気込みを示した。

オーストリア国内での新型肺炎の猛威は、厳しいロックダウン措置を経て3月26日以降、明らかに下降傾向を示しており、最大で一日あたり1321人の確定症例と30名の死者が観測されていた以前とは異なり、4月19日には新規感染者が78人、死亡者が9名にまで減少している。

こうした情勢を受けてオーストリアの副首相兼スポーツ大臣を務めるヴェルナー・コグラーはF1オーストリアGPについて先週、「無観客かつソーシャルディスタンスなど（パンデミックに関する）の条件を守れるのであれば、開催を阻害しない」と明言している。

つまりオーストリアは、当初のスケジュール通りに7月5日に決勝レースを行った上で、その翌週に再びレッドブル・リンクでグランプリを開催する余地があるという事だ。ヘルムート・マルコが明らかにしたところによると、火曜日に予選を行い、水曜の夜に決勝を行うプランが検討されている。これはテレビ視聴者数を最重要指標として検討した結果、導き出された日程のようだ。

F1の収入の大部分はホスティング料とテレビ放映権料で支えられているが、中止となるグランプリが複数発生するのは避けられない情勢であり、出来る限り多くの開催地でレースを行う計画の実現性は低い。つまり、目下求められているのはホスティング料ではなくテレビ放映権料の確保と言える。

放映権料に関してはシーズンで最低15戦開催しないとディスカウントが発生する。F1は今、同一開催地であろうが何であろうが、如何に15戦を確保するかという点に焦点を絞っている。

© Andreas Kolarik/Red Bull Content Pool、インタビューに応えるレッドブルのヘルムート・マルコ

レッドブルの顧問は今季のオーストリアGPの開催の可能性について「非常に高い」と見積もりつつ、完全に受け入れられないシナリオとして、2020年シーズンの全面的な凍結を挙げている。ヘルムート・マルコは「シーズンが中止されれば、6つの小規模チームは収入がゼロになってしまう。それは大部分のチームにとって財務的な終わりを意味する事になるはずだ」と懸念を表明した。

レッドブル・リンクと同じ様に、シルバーストン・サーキットもまた、無観客かつ平日開催のダブルヘッダーに柔軟な姿勢を示している。

© Getty Images / Red Bull Content Pool、F1イギリスGPの舞台シルバーストン・サーキットのホームストレート”

シルバーストンのマネージング・ディレクターを務めるスチュアート・プリングルはThe Raceとのインタビューの中で「必要であればレース数やフォーマットに関して何でもする」と述べると共に、平日開催とダブルヘッダーの可能性について「いずれも間違いなく実現可能」と答えた。

F1ではモナコを除き、金曜日から日曜日までの3日間を1イベントとして設定し、初日にフリー走行、2日目に予選、そして3日目に決勝レースを行っているが、ウィークエンド、ウィークデイに関わらず、トップマネジメント達は既に日程を短縮して2デイイベントとしてグランプリを開催することを検討しており、フリー走行が削られる可能性が高まっている。

同一サーキットで2度連続してイベントを開催すれば、準備の負担を大幅に減らせるだけでなくフリー走行の必要性を抑える事が可能となる。新型コロナウイルスを巡る世界的な収束の見通しが立たない現在の状況に照らし合わせると、「2デイ+平日+ダブルヘッダー」のフォーマットは非常に合理的なアイデアと言える。