F1アメリカGP:“飛び番実験”が生む2つの戦略シナリオ─ピレリが仕掛けた波乱の種

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テキサス州オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で開催される今週末のアメリカGPに向けて、公式タイヤサプライヤーのピレリが、大胆な一手で波乱の種を蒔いた。

用意されたのは、性能が連続しない「飛び番」のタイヤコンパウンド。この異例の選択は、F1屈指のテクニカルコースで、チームの頭脳を極限まで試すチェスのような戦略バトルを生み出すのか。

戦略を分断する「飛び番」タイヤ選択

ピレリが今回持ち込むのは、C1(ハード)、C3(ミディアム)、C4(ソフト)の3種類。C2を意図的に外したことで、ハード(C1)とミディアム(C3)の間に大きな性能差、いわゆる「ギャップ」が生まれた。

今季この組み合わせが使われるのはスパ・フランコルシャン以来二度目となるが、ベルギーGPでは悪天候の影響で十分な検証ができなかったため、COTAが本格的な初テストの場となる。

特に注目すべきは、ミディアムとソフトが昨年と同仕様である一方、ハードタイヤが昨年より一段階硬いC1に変更された点だ。ハードとミディアムの性能差が拡大したことで、チームは異なる2つの戦略の間で難しい選択を迫られることになる。

水しぶきを上げながらインターミディエイトタイヤで走行するルイス・ハミルトン(フェラーリ)、2025年7月27日F1ベルギーGP決勝レース(スパ・フランコルシャン)Courtesy Of Ferrari S.p.A.

水しぶきを上げながらインターミディエイトタイヤで走行するルイス・ハミルトン(フェラーリ)、2025年7月27日F1ベルギーGP決勝レース(スパ・フランコルシャン)

一か、二か―分かれる戦略の道

今回のタイヤ配分による各チームのタイヤ戦略への影響について、ピレリは二つのシナリオを想定している。

シナリオ1:安定重視の「1ストップ戦略」

最も遅いが耐久性に優れるC1ハードを選び、C3ミディアムとの組み合わせでピットストップを1回に抑える。ペースでは劣るものの、ピットでのロスタイムを最小化しつつ、レース状況に応じた柔軟性を確保して上位を狙う。

シナリオ2:速さ追求の「2ストップ戦略」

C3ミディアムと耐摩耗性を改善したC4ソフトを組み合わせ、より速いラップを刻む戦略。タイヤの摩耗は激しいが、2回のピットストップによるフレッシュタイヤの利点を活かし、コース上でのオーバーテイクで勝負をかける。

2025年のF1に供給されるピレリのソフト、ミディアム、ハード、インターミディエイト、ウェットの各タイヤ、2025年2月27日(木) F1プレシーズンテスト2日目(バーレーン・インターナショナル・サーキット)Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

2025年のF1に供給されるピレリのソフト、ミディアム、ハード、インターミディエイト、ウェットの各タイヤ、2025年2月27日(木) F1プレシーズンテスト2日目(バーレーン・インターナショナル・サーキット)

この決断をさらに難しくするのが、今週末がスプリント形式であるという事実だ。

チームがタイヤのロングラン性能を試せるのは、わずか1時間のフリー走行のみ。限られた時間で収集したデータに基づき、決勝レースの運命を左右する重大な決断を下さなければならない。判断の誤りは、致命傷になりかねない。

昨年の教訓―ミディアム予想外の耐久性

2024年大会を振り返ると、1ストップ戦略が主流だった。

表彰台に上がった3名を含む15名のドライバーがミディアムタイヤでスタートし、残る5名はハード(C2)を選択。ソフトタイヤは、当時アルピーヌ所属のエステバン・オコンが最終ラップにファステストラップ獲得を狙って装着した1例のみだった。

スプリントではミディアムに顕著な摩耗が見られたものの、決勝ではスプリントで得られたデータを踏まえて各車、慎重にタイヤをマネジメント。さらにセーフティカーの介入もあり、フル燃料状態でもスティントを大幅に引き伸ばすことに成功した。

周冠宇(KICKザウバーC44フェラーリ)をリードするリアム・ローソンのRBフォーミュラ1 VCARB 01、2024年10月20日(日) F1アメリカGP決勝レース(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)Courtesy Of Red Bull Content Pool

周冠宇(KICKザウバーC44フェラーリ)をリードするリアム・ローソンのRBフォーミュラ1 VCARB 01、2024年10月20日(日) F1アメリカGP決勝レース(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)

1ストップを可能にしたもう一つの要素が「路面進化(トラック・エボリューション)」だ。

マシンが周回を重ねるごとにタイヤのラバーが路面に付着してグリップが向上。タイヤの滑りや摩耗、グレイニング(表面のささくれ摩耗)が減少する。昨年もこの現象が顕著で、結果としてドライバーたちはスプリントで得られたデータ以上にスティントを延長することができた。

今年も同様の路面進化が期待されるが、より硬いハードタイヤが投入されることで、この効果が戦略にどのように影響するかが注目される。

多様性が要求するセットアップの妙

フェラーリの2台を先頭にサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)のターン1に飛び込むF1マシン、2024年10月20日(日) F1アメリカGP決勝レースCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

フェラーリの2台を先頭にサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)のターン1に飛び込むF1マシン、2024年10月20日(日) F1アメリカGP決勝レース

COTAは、シルバーストーンや鈴鹿といった伝説的サーキットの要素を併せ持つ、全長5.513kmのテクニカルコースだ。

スタート直後の高低差41mの急坂をはじめ、高速コーナーとテクニカルセクションが混在する。高速域でのトップスピードと低速域での安定性を両立できる万能なセットアップが求められるが、実際にはどちらかを犠牲にせざるを得ない。各チームのその選択も、注目ポイントの一つとなる。

特に、素早い方向転換が続くセクションではタイヤに強烈な横方向の負荷がかかり、摩耗は主に熱によって引き起こされる。週末を通して30度を超えると予想されるテキサスの気温が、タイヤマネジメントをさらに過酷なものにするだろう。

2022年シーズンに向けて再舗装されたサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)のセクター1区間、2022年10月20日F1アメリカGPCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

2022年シーズンに向けて再舗装されたサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)のセクター1区間、2022年10月20日F1アメリカGP

今週末の見どころ

ピレリが仕掛けた“飛び番タイヤ”は、COTAの多様なコーナーとテキサスの熱い陽射しの下で、どのようなドラマを生むのか。1ストップか、2ストップか。安定か、速さか――チームとドライバーの戦略的決断に注目が集まる。

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