
異変は決して突然ではなかった…F1モナコGPで複数ドライバーが察知していた路面異常、レース中断の異例事態
2026年F1第6戦モナコGPの決勝では、残り10周で赤旗が提示され、レースが一時中断した。その原因は、最終コーナーであるアントニー・ノゲス(ターン19)付近のアスファルトが剥離するという異例のものだった。
オスカー・ピアストリ(マクラーレン)は、最高峰の舞台で起きたコースインフラの不備に対し、「こんなことは起きるべきではない」と苦言を呈した。
ターン19の路面剥離で赤旗中断
赤旗中断の直前には、ランス・ストロール(アストンマーティン・ホンダ)がアントニー・ノゲスでクラッシュしており、セーフティーカー(SC)の導入を経てリスタートを迎えると同時に、今度はシャルル・ルクレール(フェラーリ)が同じ場所でバリアにクラッシュする事故が起きた。
マーシャルがルクレールの事故処理を行う中で路面の異常が報告されたため、FIAは「ターン19で路面剥離」の疑いがあるとしてレースを中断。レースディレクターのルイ・マルケスが自ら路面状況を視察し、剥がれたアスファルトの撤去が行われた。
ルクレールは事故の原因をブレーキ不良に求めたが、ストロールのクラッシュについて、アストンマーティン・ホンダのチーフ・トラックサイド・オフィサーを務めるマイク・クラックは「路面が剥がれていたことも一因だった可能性がある」と振り返った。
複数ドライバーがレース前から異変を察知
ドライバーたちは、この兆候をレース前から察知していた。
ニコ・ヒュルケンベルグ(アウディ)は、「レース前のドライバーズパレードですでに確認できた」と明かした。カルロス・サインツ(ウィリアムズ)も、レースの1周目にはその状態を目にしたと語る。
レース序盤にピットストップ義務を消化したエステバン・オコン(ハース)は、「最終コーナーは厄介だった」と振り返りつつ、赤旗中断になればステイアウト組のライバルが大きなアドバンテージを得るため、積極的に路面状況の悪さを訴えることは難しかったと明かした。
レースが進むにつれ、最終コーナーの状況は悪化の一途をたどった。ピアストリは、「かなり急速に崩れていった」と振り返る。
「最初はマーブル(タイヤのカス)のように見えたけど、そのうち地面が窪んできた。明らかに終盤はひどい状態だった。もちろん、こんなことは起きるべきじゃない」
ピアストリによれば、剥離があったのはレーシングライン上だった。そのためドライバーたちは、通常とは異なるタイトなライン取りを強いられたという。
再開後も残った安全面への懸念と過去の事例
最終的にレースは再開されたが、FIAは慎重な手順を踏んだ。安全に再開できるかどうかを見極めるため、スタンディングスタートの前にSC先導で2周のフォーメーションラップを実施した。
ヒュルケンベルグは、レース再開に向けて「安全上の懸念はなかった」と語ったが、すべてのドライバーが納得していたわけではない。レース再開後、路面は大丈夫だと感じたかと問われたピアストリは、「ノーだ」と答えた。
今回のように、走行中にアスファルト表層が剥がれたり崩れたりするトラブルは、F1では非常に珍しい。ただ、過去に例がないわけではない。
2008年のカナダGPでは予選中にジル・ヴィルヌーヴ・サーキットの複数箇所で路面が崩れ、主催者が夜間に補修を行った。
さらに1984年ダラスGPでは、市街地コース、酷暑、仮設舗装という条件が重なり、路面の損傷がレースの成立そのものを脅かす事態となった。また、1980年アルゼンチンGPでも、猛暑と当時のグラウンド・エフェクトカーの負荷により、路面崩壊が問題となった。