
ホンダF1、初のAMR26静的テストを経て「マイアミ追加対策」投入へ
ホンダの拠点は栃木県さくら市に、アストンマーティンのシャシー製造拠点は英国のシルバーストン近郊にある。両拠点は8,000kmの距離で隔てられているため、HRC Sakuraでシーズン中に実車を用いた静的テストを実施することは、物流上の制約も相まって容易ではない。
だが2026年のF1カレンダーは、それを後押しした。日本GP後の5週間に及ぶ異例の中断期間と、その直前のグランプリがホンダの母国で開催されたという2つの偶然――アストンマーティン・ホンダはこの機会を活かし、AMR26をHRC Sakuraに持ち込んだ。
HRC Sakuraでテスト、振動低減と信頼性向上へ
Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd
レーシングスーツが展示されたHRC UKの施設内壁面とロゴ看板
この中断期間にホンダは、日本とイギリスの両拠点において、アストンマーティンと緊密に連携しながら多くの作業を進めてきた。ホンダの折原伸太郎トラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアは「非常に充実した時間」になったと振り返る。
中でも特筆すべきは、鈴鹿で実戦を走ったAMR26の1台をHRC Sakuraに運び込み、静的テストを実施するという判断だった。折原TGMによれば、実車を用いたHRC Sakuraでの静的テストは「初めて」のことだった。
テストの目的は明確だ。振動の低減と信頼性の向上である。アストンマーティン・ホンダはプレシーズンテスト段階から、振動問題に端を発する信頼性トラブルに見舞われてきた。今回の静的テストは、こうした状況を立て直すための直接的なアプローチだった。
折原TGMはテストの結果について「一定の進歩が見られた」と評価。これにより、マイアミおよび今後のシーズンに向けて「追加の対策を投入できる見込み」だと説明する。
Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd
ガレージ内でスタッフに指示を出すホンダ・レーシング(HRC)の折原伸太郎トラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニア、2026年3月14日(土) F1中国GPスプリント(上海インターナショナル・サーキット)
ただし、次戦マイアミGPでの競争力について折原TGMは、こう予防線を張る。「この進展がパワーユニットのパフォーマンスに目に見える形で影響することはないため、ここでの大きな飛躍は期待しないほうが現実的です」
一方で、ホンダが進めてきた取り組みは「正しい方向に進んでいる」と強調し、これが今後に向けた「大きなモチベーション」になっているとも語る。アストンマーティン・ホンダは開幕3戦で苦戦を強いられてきたが、ホンダの認識としては「方向性は間違っていない」ということだ。
今季初の試練続々、マイアミ固有の課題
マイアミ・インターナショナル・オートドロームは、パワーユニットの観点から見て興味深い特性を持つ舞台だ。
折原TGMは、マイアミが「2026年カレンダーの中で、初めて低速コーナーが多く登場するサーキット」だと指摘する。2つの長い全開区間と、複数の低速コーナーを併せ持つユニークなレイアウトを特徴とするマイアミは、マシンセッティングの最適解を見つけるうえで「非常に興味深いコース」だという。
PUの観点で重要なのが、低速区間でのドライバビリティだ。有料道路の陸橋下を通過するセクター2でのエネルギーマネジメントの最適化が、パフォーマンスを最大化するうえで大きな鍵となる。さらに、低速区間でのエネルギーロスをいかに削減するかも重要なポイントだ。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
トップ争いを繰り広げる中でタイヤをロックアップさせるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年5月4日(日) F1マイアミGP決勝(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)
開幕3戦で浮上した「エネマネ地獄」とも称される現象は、ドライバーたちから多くの批判を呼んだ。ランド・ノリス(マクラーレン)の警告通り、日本GPではオリバー・ベアマン(ハース)が時速308kmで芝生に乗り上げる事態にまで発展した。
こうした状況を受けFIAは先日、規則改訂を発表した。マイアミは、改訂版規則のもとで戦われる初の週末となる。低速コーナーの多さは、この新ルールへの適応とも絡む形で、各PUメーカーに新たな試練を課すことになる。
加えて、今週末のマイアミは気温が30℃を超える予報となっており、今季としては初めて高温コンディション下での週末となる可能性がある。折原TGMは、「新レギュレーションの下でPUの温度を適切に管理することも不可欠です」と指摘する。
90分間のFP1、「中身の濃い」セッションへ
マイアミGPは中国GPに続く今季2回目のスプリント週末であり、フリー走行はわずか1回のみとなる。FIAは前述の長期中断と規則改訂、スプリントフォーマットによるプラクティス時間の制約という3つの理由を挙げ、通常60分のFP1を例外的に90分へと延長することを決定した。
折原TGMは、「限られた時間で、スプリント予選に向けて新レギュレーション下におけるすべてのデータ設定を最適化し、かつ最適な冷却仕様を決定する必要があります」と語り、FP1でのプログラムは通常以上に中身の濃いものになるとの見方を示した。
改訂規則が初めて適用される週末、低速セクションが多いコースレイアウト、高温環境、そして90分に延長されてもなお限られたフリー走行。アストンマーティン・ホンダを含む各チームは、マイアミGPのFP1で通常以上に多くの課題を処理する必要がある。