ピアストリ物議の真相:ブラウンの”無線無視疑惑”と祝賀セレモニー不参加―F1シンガポール後のふたつの「謎」

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2025年F1第18戦シンガポールGP。マクラーレンが34年ぶりとなるコンストラクターズ選手権連覇を果たした歴史的舞台は、2つの奇妙な「謎」とともに締めくくられた。

表彰台で繰り広げられた祝賀セレモニー。クイーンの「We Are The Champions」が流れる中、アンドレア・ステラ代表、ザク・ブラウンCEO、そしてチームクルーに混じってランド・ノリスが喜びを爆発させる一方、もう一人のドライバー、オスカー・ピアストリの姿はどこにもなかった。

さらに、レース後にブラウンがピアストリへ送った無線メッセージは途中で不自然に途切れた。SNS上では瞬く間に憶測が飛び交った。

「チーム内不和では?」

疑惑には、ある「伏線」があった。

スタート直後の接触が生んだ緊張

サイドバイサイドでポジションを争うマクラーレンのオスカー・ピアストリとランド・ノリス、2025年10月5日(日) F1シンガポールGP決勝(マリーナベイ市街地コース)Courtesy Of McLaren

サイドバイサイドでポジションを争うマクラーレンのオスカー・ピアストリとランド・ノリス、2025年10月5日(日) F1シンガポールGP決勝(マリーナベイ市街地コース)

レーススタート直後、ノリスはマックス・フェルスタッペン(レッドブル)との接触を避けようとして、チームメイトであるピアストリに接触。ターン3でピアストリをウォール際まで追いやる場面があったのだ。

ピアストリは直後の無線で怒りをあらわにした。

「他のクルマとの接触を避けるためにチームメイトにぶつかるなんて、避け方としてはクソみたいな仕事だ」

この激しい言葉が、レース後の「ピアストリ不在」と重なり、ファンの想像力をかき立てたのだ。だが、真相は全く異なるところにあった。

すべては「F1側の企画」から始まった

実は、マクラーレンはコンストラクターズタイトル獲得の可能性を認識していたものの、”フラグ”となることを恐れ、大々的な祝賀イベントを準備していなかったとされる。

実際、2週間前のアゼルバイジャンGPでも理論上はタイトルを決められる状況にあったが、結果的にその機会は持ち越しとなった。シンガポールでは、レース後にピットレーンで記念撮影を行う案が検討された程度だったという。

ところが、レース終了直後、F1公式放送を担当するフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)が動いた。この歴史的瞬間を最大限に演出しようとしたのだ。

まず、ブラウンとステラを国際中継のインタビューに招集。さらに、通常の表彰台セレモニー(トップ3フィニッシャー用)の直後に、マクラーレンのための祝賀セレモニーの場を設けた。

F1側の構想は、チームメンバーに焦点を当ててチャンピオン獲得を祝うというものであり、そもそもドライバーたちの参加を想定したものではなかった。

34年ぶりのコンストラクターズ選手権2連覇を表彰台で祝うランド・ノリスとマクラーレンのチームメンバー、2025年10月5日(日) F1シンガポールGP決勝(マリーナベイ市街地コース)Courtesy Of McLaren

34年ぶりのコンストラクターズ選手権2連覇を表彰台で祝うランド・ノリスとマクラーレンのチームメンバー、2025年10月5日(日) F1シンガポールGP決勝(マリーナベイ市街地コース)

ノリスが「偶然」巻き込まれた理由

レース後、優勝したジョージ・ラッセル、2位のフェルスタッペン、そして3位のノリスは通常の表彰台セレモニーを終え、メディア取材エリアへ案内されるのを待っていた。

だが、マクラーレンのクルーが表彰台に向かう途中、3人のドライバーと偶然鉢合わせた。その結果、ノリスは急遽、祝賀セレモニーに参加することになった。意図したことではなかったのだ。

レース後トップ3記者会見に出席する2位マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、優勝したジョージ・ラッセル(メルセデス)、3位ランド・ノリス(マクラーレン)、2025年10月5日(日) F1シンガポールGP決勝Courtesy Of McLaren

レース後トップ3記者会見に出席する2位マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、優勝したジョージ・ラッセル(メルセデス)、3位ランド・ノリス(マクラーレン)、2025年10月5日(日) F1シンガポールGP決勝

ピアストリは何を? 取材対応中に見た「自チームの快挙」

では、ピアストリはどこで何をしていたのか?

レース後、ドライバーは厳格に定められたスケジュールに沿って行動しなければならない。4位でフィニッシュしたピアストリも例外ではなかった。マシンを降りた後に計量を済ませ、すぐさまメディアペンに向かい、各国のテレビ局のインタビューに応じていた。

皮肉なことに、その最中、彼の背後に設置されたモニターには、マクラーレンの表彰台セレモニーの映像が映し出されていた。自分のチームが歴史的な瞬間を迎える中、その様子を画面越しに眺めながら質問に答えるという、何とも複雑な状況だった。

メディアへの対応を済ませた頃には、表彰台はとうに空になっていた。

4位以下のドライバーが、表彰式や国歌演奏の最中にインタビューを受けることは珍しくない。F1ではテレビ中継、表彰式、メディア対応がほぼ同時進行で行われるのが常だ。さらに、レース中のインシデントでスチュワードへの召喚が決まっている場合でも、まずはメディア対応を優先しなければならない。

その結果、インタビューでの発言が裁定を経て意味を持たなくなることもしばしばだ。

チームの記念写真撮影―今度はブラウンが不在

インタビューを終えたピアストリはオフィスに戻った。一方、ノリスもメディアペンでの対応とFIA記者会見を終えて合流。そして、マクラーレンが当初から計画していたチャンピオンシップ制覇を祝う記念撮影がようやく行われた。こちらには両ドライバーとマクラーレンチームのほぼ全員が参加した。

だが、ここでも皮肉な出来事が待っていた。

ノリスのメディア対応が長引いて撮影が遅れた結果、ブラウンは帰国便に間に合わせるため空港に向かわざるを得ず、今度はCEOがピットレーンでの記念撮影に参加できなかったのだ。

祝賀セレモニーにはノリスがいてピアストリがおらず、記念撮影にはピアストリがいてブラウンがいない。すべては偶然とタイミングの問題だった。

ピットレーンで34年ぶりのコンストラクターズ選手権2連覇を祝うマクラーレンとランド・ノリス、オスカー・ピアストリ、2025年10月5日(日) F1シンガポールGP決勝(マリーナベイ市街地コース)Courtesy Of McLaren

ピットレーンで34年ぶりのコンストラクターズ選手権2連覇を祝うマクラーレンとランド・ノリス、オスカー・ピアストリ、2025年10月5日(日) F1シンガポールGP決勝(マリーナベイ市街地コース)

無線が途切れた「もう一つの謎」

ピアストリの祝賀セレモニー不在と並んで話題になったのが、ブラウンからピアストリへのレース後の無線メッセージが途中で途切れた件だ。

「オスカー、2年連続チャンピオンだ!タフなレースだったけど、ありがとう……」

無線はそこで途切れた。

国際放送で流れたこの場面を見て、SNS上では「ピアストリはブラウンの無線を無視したのでは?」との憶測も流れた。だが、これも単なる誤解だった。

クールダウンラップを終えたピアストリは、ピットウォールから指示を受けていた。

「パルクフェルメに戻ったら、マシンを完全にシャットダウンしてくれ。エンジンを切って5秒待ち、それから完全にオフにして」

ピットに戻ったピアストリは指示通りにマシンをシャットダウン。これにより通信システムも停止し、当然、無線も機能しなくなった。まさにそのタイミングで、ブラウンが無線メッセージを送り始めたのだ。

オランダの専門メディア『RacingNews365』によると、マクラーレンは、すでにマシンがシャットダウンされていたため、ピアストリはそもそもブラウンのメッセージを聞いていなかったと認めた。

すべての「謎」は偶然の産物だった

スタート直後の接触と激しい無線。表彰台セレモニーでのピアストリの不在。途切れた祝福のメッセージ。

これらの出来事が重なり、SNS上では「チーム内不和」の憶測が駆け巡った。だが実際には、F1側の即興的な演出、ドライバーの義務的なスケジュール、そしてマシンのシャットダウンタイミングという、複数の偶然が重なっただけだった。

真のセレブレーションは、カメラの届かないピットレーンで、両ドライバーとチーム全員が揃った場所で行われた。

ピットレーンで34年ぶりのコンストラクターズ選手権2連覇を祝うマクラーレンとオスカー・ピアストリ、2025年10月5日(日) F1シンガポールGP決勝(マリーナベイ市街地コース)Courtesy Of McLaren

ピットレーンで34年ぶりのコンストラクターズ選手権2連覇を祝うマクラーレンとオスカー・ピアストリ、2025年10月5日(日) F1シンガポールGP決勝(マリーナベイ市街地コース)

ピットレーンで34年ぶりのコンストラクターズ選手権2連覇を祝うマクラーレン、2025年10月5日(日) F1シンガポールGP決勝(マリーナベイ市街地コース) (1)Courtesy Of McLaren

ピットレーンで34年ぶりのコンストラクターズ選手権2連覇を祝うマクラーレン、2025年10月5日(日) F1シンガポールGP決勝(マリーナベイ市街地コース) (1)

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