
F1ベルギーGP:異例…3年ぶりの”飛び番”でレースは動くか?
2025年シーズンの後半戦が、7月25~27日にかけてベルギーのスパ・フランコルシャンで幕を開ける。中国、マイアミに続く今季3回目のスプリントフォーマットが採用される中、ピレリは異例の“飛び番構成”を採用するが、その試みはスパ特有の変数により無に帰す可能性がある。
2022年以来、3年ぶりの飛び番構成
ピレリは今回、全6種類あるスリックタイヤの中から、最も硬いC1をハードとし、ミディアムにC3、ソフトにC4を投入する。
このような一段飛ばしの“非連続構成”は、2022年オーストラリアGP(C2/C3/C5)以来、実に3年ぶりの採用となる。C3とC4は前年と変わらないが、C2に代わって新仕様のC1が投入される点が今回の最大の特徴だ。
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.
2025年のF1に供給されるピレリのソフト、ミディアム、ハード、インターミディエイト、ウェットの各タイヤ、2025年2月27日(木) F1プレシーズンテスト2日目(バーレーン・インターナショナル・サーキット)
この構成には明確な狙いがある。2025年前半の各グランプリでは、1ストップ戦略が常態化し、マシン性能の収束と相まってオーバーテイクが困難になり、展開に乏しいレースが続いていた。
こうした状況の一因は、F1側の要請を受けてピレリが開発した「より耐久性の高い」タイヤ──すなわち、サーマル・デグラデーション(熱による性能劣化)への耐性を高めたことにある。
今回ピレリには、C2よりもグリップが低く、ラップタイムが落ちるC1をあえて投入することで、C1とC3による1ストップ戦略の優位性を低下させ、マルチストップ戦略の採用を促す狙いがある。
スプリントならではタイヤ配分
今大会は、今季3回目となるスプリントフォーマットでの開催となる。通常とは異なり、初日金曜日のフリー走行は1回(60分)のみ。その後すぐにスプリント予選が行われ、土曜日には15周のスプリントレースと、決勝に向けた通常予選が続く。
また、ドライバーに供給されるタイヤセット数も、通常より1セット少ない計12セットに限定される(ソフト6/ミディアム4/ハード2)。スプリント予選においては、Q1とQ2でミディアム、Q3ではソフトの使用が義務づけられる。
このフォーマットは、各チームにとってセットアップやタイヤ評価の時間を著しく制限するものであり、非連続なコンパウンド構成と相まって、戦略の不確実性が一層高まることになる。
なお、スプリントレースにおいては、レッドブルのマックス・フェルスタッペンが絶対的な強さを誇っており、これまでに実施された20回のスプリントで11勝を挙げている。
ピレリの試みを無に帰す変数
ピレリによる今回の実験的な試みに対する最大の不確定要素が、スパ特有の気まぐれな天候、通称”スパ・ウェザー”だ。
スパ・フランコルシャンはアルデンヌの森に位置し、局所的かつ急激な天候変化で知られる。予報によれば、今週末も例外ではなく、金曜・日曜を中心に雨が予想されており、スリックタイヤの出番がない状況も想定される。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
スプリント開始直前に大雨が降り注いだスパ・フランコルシャンのグリッド、2023年7月29日F1ベルギーGP
なお2024年大会においては、決勝でほとんどのドライバーがミディアム(C3)でスタートし、2セットのハードに履き替える2ストップ戦略を採用。この戦略を採ったルイス・ハミルトンが優勝を飾った。トップでチェッカーを受けたジョージ・ラッセルは、レース後の車検により車両重量規定違反で失格となった。