
フェラーリ暗転―ハミルトン怒涛の「メガペース」が”仇”に、ルクレールも技術問題で沈黙
2025年F1第18戦シンガポールGPでスクーデリア・フェラーリは、週末を通して苦しい戦いを強いられた。マクラーレンがコンストラクターズ選手権連覇に王手をかける中、フェラーリは何もできずに、ただ見届けるしかなかった。
シャルル・ルクレールは6位、ルイス・ハミルトンはレース後のペナルティにより8位に降格。2位メルセデスとの差は25ポイントに拡大し、4位レッドブルにも10ポイント差まで迫られた。
初日のFP1では両マシンがトップ4に入り、好調なスタートを切ったかに見えた。だが、その後は急速に失速。フレデリック・バスール代表は「週末の立ち上がりは力強かったが、予選ではクルマのポテンシャルを十分に引き出せなかった」と振り返る。
予選での低迷により、決勝のレース展開はほぼ決まってしまった。さらに追い打ちをかけたのが、決勝で発生した冷却系の問題だ。これによりフェラーリはライバルに対してさらに後れを取る結果となった。
Courtesy Of Ferrari S.p.A.
レースを前にグリッドに向かうルイス・ハミルトン(フェラーリ)、2025年10月5日(日) F1シンガポールGP決勝(マリーナベイ市街地コース)
ルクレール、冷却問題とトラフィックに阻まれる
ソフトタイヤの優位性を活かし、スタートで2つポジションを上げたルクレール。5番手でレースを進めたが、ピットストップ後にメルセデスの新鋭アンドレア・キミ・アントネッリに抜かれると、そのペースについていくことができなかった。
その後、異なる戦略を採用したチームメイトのハミルトンにも順位を譲り、最終的には6位でチェッカーフラッグを受けた。
「トラフィックの中でポジションを上げるのは不可能だった」とルクレールは振り返る。加えて冷却系の問題がマシンのパフォーマンスを制限し、思うような走りができなかった。
「週末全体を象徴するような本当に厳しいレースだった。初日からクルマに苦戦し、思うようにドライブできなかった。残念だけど、今日の結果は今の僕らの実力を反映するものだった」
過去2戦連続で様々な困難に直面していることを指摘したルクレールは、「詳細に分析して改善していく必要がある。2週間後のアメリカGPでは、主なライバルと再び戦えるように、もっと万全の準備を整えたい」と前向きな姿勢を示した。
ハミルトンの劇的な「メガペース」と悲劇の結末
一方、レースで最もドラマチックな展開を見せたのがハミルトンだった。入賞者の中で唯一、2ストップ戦略を採用。他車との位置関係からフリーピットストップ(順位を失わずにピットストップできる状況)が可能だったためだ。
2回目のストップで新品ソフトに交換すると、状況は一変した。フレッシュタイヤの優位性を活かし、前方のチームメイト、ルクレールとの差を急速に詰めていく。チームの指示でルクレールを抜くと、次なるターゲットはアントネッリだ。
そして残り5周で見事に追いつき、DRS圏内に食い込んだ。バスール代表が「ラスト15周のルイスはメガペースだった」と称賛するほどの驚異的な速さだった。
だが、その激しいプッシュが仇となった。
最終盤、ハミルトンはブレーキトラブルに見舞われた。「前を追うためにプッシュしすぎたことでブレーキがオーバーヒートしてしまった」とバスールは説明する。
アントネッリへの追撃を諦め、ルクレールに順位を戻すと、最終2周だけでアロンソに約40秒も差を詰められた。かろうじて0.3秒差で交わしてチェッカーを受けたが、ハミルトンの苦難はそれだけでは終わらなかった。
ブレーキの問題によりクルマを曲げることに苦戦した結果、最終ラップで4度のトラックリミット違反を犯し、5秒ペナルティが科されたのだ。これにより7位から8位へと順位を落とし、アロンソが最終的に7位、ハミルトンが8位という結果となった。
レース後、ハミルトンは冷静に状況を分析した。
「この数日はチャレンジングだったけど、ポジティブな要素もいくつかある。週末を通してクルマの感触は良かったし、レースの最後の三分の一はとても力強い走りができた。ソフトタイヤは素晴らしい攻撃的なペースをもたらしてくれて、前を走るクルマとの差を一気に詰めることができた」
潜在的にはもっと上位でフィニッシュできるだけのポテンシャルがあったとも振り返り、「オースティンでは持てる力を最大限に発揮し、クリーンなレース運びでできるだけ多くのポイントを持ち帰りたい」と次戦への意気込みを語った。
マクラーレン連覇、フェラーリは劣勢に
フェラーリが厳しい週末を過ごした一方、マクラーレンはシーズン6戦を残してコンストラクターズ選手権連覇を果たした。
バスールは、マクラーレンのコンストラクターズ選手権制覇について「十分に値する」と称賛する一方、自分たちについては「ここ2戦、ライバルたちに一歩遅れを取っているのは明らかだ」と認めた。
「マシンのポテンシャルを高めると同時に、週末全体の進め方を改善して、ドライバーとマシンの力を最大限に発揮できるようにしなければならない」
コンストラクターズ選手権2位争いでは、メルセデスがフェラーリとの差を25ポイントに拡大。さらに、4位レッドブルに10ポイント差まで接近を許した。
「非常にフラストレーションが溜まる結果だ」とバスールは締め括った。残り6戦、フェラーリは盛り返せるだろうか。次戦アメリカGPでのパフォーマンスが注目される。
2025年F1第18戦シンガポールGP決勝レースは、ジョージ・ラッセル(メルセデス)がポール・トゥ・ウインを飾り、2位にマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、3位にランド・ノリス(マクラーレン)が続く結果となった。
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)を舞台とする次戦アメリカGPは10月17日のフリー走行1で幕を開ける。