角田裕毅のサポート役を担うアレックス・アルボン、苦闘するF1ルーキーに自身の経験から助言
1年目のF1に苦闘するアルファタウリ・ホンダのルーキー、角田裕毅をサポートするため、レッドブルは同じファミリーの先輩ドライバー、アレックス・アルボンにサポート役を託したようだ。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響でプレシーズンテストと週末のプラクティスが削減されるという特異な状況下故に、今年は経験不足のドライバーにとって不利なシーズンと言わざるを得ない。
小林可夢偉以来となる7年ぶりの日本人F1ドライバーとして今季デビューを飾った角田裕毅は、開幕バーレーンGPでポイントを獲得してセンセーショナルな形で初戦を締め括ったものの、イモラ、アゼルバイジャン、ポールリカールの予選、そしてモナコのFP2でクラッシュを喫するなど、序盤は特に新人らしい厳しいひと時を過ごした。
セッションを通して少しずつ積み上げていく慎重なアプローチに変更して以降はミスも減った。経験値を上げるという点でルーキーにとってはマイレージを稼ぐ事が重要だ。ただその一方で、物怖じしないアグレッシブな走りは影を潜めた。
チームメイトのピエール・ガスリーが一貫して高いパフォーマンスを発揮しているため、苦戦ぶりはより際立つ。
角田裕毅は17戦を終えて6回の入賞を獲得しているが、ガスリーは3位表彰台を含めて11回のトップ10フィニッシュを果たしている。チームの総獲得ポイントの8割はガスリーによるものだ。
また、純粋なペースという点で予選に着目してみると、クラッシュしてノータイムに終わったイモラを除き、角田裕毅の平均順位は13.5位だが、対するガスリーは6.9位と大きく離れており、一度もチームメイトを上回れていない。
対予選成績でチームメイトに全敗しているのは他に、ミック・シューマッハ相手に遅れを取るハースのニキータ・マゼピンとウィリアムズのニコラス・ラティフィの2名がいる。
浮き沈み激しいシーズンを過ごしているとは言え、首脳陣は角田裕毅を見捨ててはいない。
アルファタウリ・ホンダのフランツ・トスト代表は、天性の速さを示して日々改善しているとして角田裕毅の将来的な「成功」を疑っておらず、F1に馴染んで才能の全てを遺憾なく発揮できるようになるためには3シーズンが必要だとして終始、バックアップ。レッドブルは2022年も角田裕毅をファエンツァのチームで走らせる事を決断した。
更にレッドブルは、シニアチームでマックス・フェルスタッペンのチームメイトを務めた事もあるアルボンを角田裕毅のサポート役に任命したようだ。
第16戦トルコGPの週末、Sky Sportsのピットレポーターを務めるテッド・クラヴィッツは、レッドブル・ホンダのリザーブドライバーが角田裕毅の”ドライバーコーチ”を務めていると報告した。
またF1公式サイトは、アルボンが「自身の経験から非公式な形でアドバイスを提供する」役割を命じられたようだと報告。過去数戦においてセッション中のチーム無線やエンジニアリング・ブリーフィングを通して課題や問題点を把握し、角田裕毅にアドバイスしていると伝えた。
アルボンは”リリー”の愛称で親しまれる中国出身の女子プロゴルファー、へ・ムニを伴ってサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)を訪れ、ガレージ内からトラック上の様子を見守っていた。
ウィリアムズで来季F1復帰を果たすアルボンは昨年、決勝レースでチームメイトに周回遅れにされるなど、同じRB16を駆るフェルスタッペンに太刀打ちできず苦しいシーズンを経験した。
若き日本人ドライバーに助言を贈っているのはアルボンだけではない。
角田裕毅は「セルジオからはたくさんのアドバイスを貰いました。特にフランスやモナコの後、僕が本当に厳しい週末を過ごしていた時にメッセージをくれましたし、アドバイスやポジティブな言葉を送ってくれました」と語り、セルジオ・ペレスへの感謝を口にしている。
直近の2戦でディフェンディング王者、メルセデスの2人のドライバーと見事な防衛戦を演じ、オースティンではキミ・ライコネンとフェルナンド・アロンソという2人のF1ワールドチャンピオンを後方2秒圏内に抱えながらも、見事抑え切って9位でフィニッシュするなど、シーズン終盤に向けて角田裕毅は再び輝きを見せつつある。
初走行のCOTAでハンガリーGP以来となるトップ10で週末を締め括った角田裕毅は「難しい状況ではありましたが一貫性を発揮できましたし、これまでのシーズンで最高のレースができたと思います」と自信を深めた様子を見せた。