レッドブルF1、初の自社製PU「DM01」に込めた想い―マテシッツの遺志を継ぎ、2026年新ステージへ

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レッドブル・レーシングとレッドブル・フォード・パワートレインズ(RFPT)は2026年1月15日、米ミシガン州デトロイトで開催されたローンチイベントにおいて、初の自社製F1パワーユニットの名称を「DM01」と命名したことを発表した。

これは、エンジンマニュファクチャラーへの転身を主導した故ディートリッヒ・マテシッツ氏への敬意を表したものだ。

創業者の頭文字を冠したパワーユニット「DM01」

レッドブル創業者のディートリッヒ・マテシッツCourtesy Of Red Bull Content Pool

レッドブル創業者のディートリッヒ・マテシッツ

「DM01」は、レッドブルGmbHの共同創業者であり、自社製PU開発への切り替えを決断したマテシッツの頭文字に由来する。レッドブルが2021年にエンジンメーカー化を決断してから約5年。その構想は2026年シーズン、遂に現実のものとなる。

レッドブルは2005年にF1参戦を開始し、一貫してエンジンを外部供給に頼る路線を歩んできた。だが、ホンダのF1撤退を機に、2026年の新規則に向け自社でパワーユニットを設計・製造するという選択に踏み切った。DM01は、レッドブルのシャシー専用に設計された初の自社製PUであり、マックス・フェルスタッペンとアイザック・ハジャーがドライブする2026年型マシン「RB22」に搭載される。

マテシッツは2022年10月に逝去したが、彼が遺したPUプロジェクトは、その後も着実に前進を続けてきた。DM01という名称は、レッドブルがその遺志を継承し、具現化したことを示す証だ。

このプロジェクトに2023年から加わったのがフォードだ。当初は技術パートナーとして参画し、現在はチームパートナーとして製造、開発、エンジニアリングの各分野で重要な役割を担っている。フォードにとっても、22年ぶりのF1本格復帰を象徴する取り組みとなる。

フォードのジム・ファーリーCEOはローンチイベントで次のように述べ、自動車メーカーではない企業がF1のパワーユニットを独自開発するその異例性を称えた。

「エナジードリンク企業がF1のPUを自ら開発するという特筆すべき物語に、フォードが関われたことを誇りに思う」

5年間の挑戦―2000名が一丸となって

イギリス・ミルトンキーンズに位置するレッドブル・パワートレインズのファクトリー外観、2023年2月22日Courtesy Of Red Bull Content Pool

イギリス・ミルトンキーンズに位置するレッドブル・パワートレインズのファクトリー外観、2023年2月22日

レッドブルには、エンジン開発の歴史がなかった。ファクトリーも専門技術者もノウハウも存在しなかった。それらを5年間でゼロから構築するという挑戦は、F1史上でも異例の試みだ。

RFPTのテクニカル・ディレクターを務めるベン・ホジキンソンは、プロジェクトの困難さを次のように振り返る。

「施設、人材、設計、製造、そのすべてをゼロから築いてきた。ディートリッヒの夢を、ミルトンキーンズのチームが現実にした」

レッドブルGmbHのコーポレート・プロジェクト統括CEOを務めるオリバー・ミンツラフは、この挑戦を2005年のF1参戦と重ね合わせて「リスクを伴うものだ」と認める。一方で、挑戦する企業文化が変わっていないことを強調し、既存の枠組みに収まらず、失敗を恐れない姿勢こそがレッドブルの本質だと示唆した。

このプロジェクトには、PU部門で約700名、シャシー部門で約1300名、レッドブル・テクノロジー・キャンパスに集う総勢約2000名の人材が携わっている。CEO兼チーム代表を務めるローラン・メキーズは、この結集こそが、シャシーとPUを一体として走らせる瞬間を可能にしたと強調した。

PU供給を受けるいわゆるカスタマーチームは、シャシーとPUの統合という点で常に妥協を強いられる。一方、PUの自社開発は、両者を同時に最適化できるという圧倒的な利点がある。これは、ワークスチームだけが享受できる特権だ。

メルセデス、フェラーリ、ルノー、ホンダ。レッドブルは、こうした名だたるエンジンメーカーの系譜に新たに名を連ねることになる。

真価が問われる3月8日、マテシッツの遺志を実現へ

技術責任者ピエール・ワシェ、アイザック・ハジャー、マックス・フェルスタッペン、フォードCEOジム・ファーリー、レッドブルGmbHのCEOオリバー・ミンツラフ、チーム代表ローラン・メキーズ、アリーシャ・パルモウスキー、フィリップ・プルー、2026年1月15日レッドブル・レーシングのシーズンローンチイベント(米国デトロイト)Courtesy Of Red Bull Content Pool

技術責任者ピエール・ワシェ、アイザック・ハジャー、マックス・フェルスタッペン、フォードCEOジム・ファーリー、レッドブルGmbHのCEOオリバー・ミンツラフ、チーム代表ローラン・メキーズ、アリーシャ・パルモウスキー、フィリップ・プルー、2026年1月15日レッドブル・レーシングのシーズンローンチイベント(米国デトロイト)

レッドブルにとってDM01は、初の自社製PUというにとどまらず、創業者の哲学、ブランドの反骨精神、そして2026年というF1の新時代に向けた覚悟を体現する存在だ。

だが、いかに意義深いプロジェクトであっても、結果が伴わなければ評価されない。それがモータースポーツの現実だ。

DM01の真価は、3月8日に開催される今シーズンの開幕戦オーストラリアGPで問われることになる。メルセデス、フェラーリ、ルノー、ホンダ、そしてアウディ。5つのPUメーカーが競う2026年、レッドブルはどこまで戦えるのか。

マテシッツが描いた未来は、まもなくコース上で現実となる。