
「光る原石」はモナコでダイヤに――ボノが明かすアントネッリ育成論と最終2コーナーの魔法
アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)が、2026年F1第6戦モナコGP予選でポールポジションを獲得した。4度のF1王者マックス・フェルスタッペン(レッドブル)と、史上最多タイの7冠を誇るルイス・ハミルトン(フェラーリ)にわずかな差で競り勝つ見事な走りだった。
1年目のシーズンは時に驚くような速さを見せつつも、荒削りな印象も強く、チームメイトのジョージ・ラッセルに大きく遅れを取っていた。だが、アントネッリとタッグを組む担当レースエンジニアのピーター・ボニントンは、デビュー以前の段階からアントネッリの才能を信じて疑わなかった。
わずか4周で確信した「光る原石」の才能
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
パドックを歩きながらレースエンジニアのピーター・ボニントンと会話を交わすアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、2026年5月7日(木) F1マイアミGPメディアデー(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)
ルイス・ハミルトンと共に6度のタイトルを獲得した、「ボノ」の愛称で知られる名エンジニアが、アントネッリの才能を確信したのは、F1に正式デビューする前だった。TPC規定を利用した旧型マシンでのテスト走行でアントネッリを起用した際、ボニントンは既にそこに光る原石を見ていた。
「正直に言えば、彼が実際に選手権を戦い始める前のことだった。TPCのマシンに乗せたとき、才能があることはすぐにはっきり分かった」
若手ドライバーは通常、F1マシンの速度域に慣れるまで時間がかかる。だがアントネッリは違ったと、ボニントンは振り返る。
「若いドライバーは、普通ならペースをつかむまでに少し時間がかかる。でもキミは、高速域の走りに対応するまで、おそらく4周ほどしかかからなかった。高速域で必要な速さにすぐ合わせられるなら、その子には粗削りでも本物の才能があると分かる」
ボニントンは、メルセデスが「かなり早い段階」でアントネッリを「磨けば光る原石」と見なしていたと明かした。
「あとは少し磨きをかけるだけだった。そして、そういうものは2年目に形になるものなんだ」
楽しむ自由を与える:重圧を避ける育成法
Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.
表彰台の上で担がれる優勝者アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)と2位ルイス・ハミルトン(フェラーリ)、3位マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2026年5月24日(日) F1カナダGP決勝(ジル・ビルヌーブ・サーキット)
メルセデスがアントネッリに寄せた早期の信頼は、今や数字となって表れている。アントネッリは今季5戦で4勝を挙げ、選手権をリード。その過程で、19歳7か月4日という、F1史上最年少の選手権リーダーとなった。
ボニントンが重視するのは、アントネッリにマシンを走らせる楽しさを味わう自由を与え、タイトル争いに過度なストレスを感じさせないことだという。
「とにかく、こつこつ積み上げていくことだ。目標そのものに焦点を当てないようにして、常にプロセスに集中する。そして、彼が集中して、正しいことに取り組み続けられるようにする」とボニントンは語る。
「彼に、楽しめることをやる自由、マシンを走らせる喜びを味わう自由を与える。これは本当に大切なことなんだ。あまりストレスを抱えすぎないこと。この旅を楽しもう、ただやるべきことをやろう、でも調子に乗りすぎないようにしよう、と。一つずつ、山を登ることに集中するだけだ」
予想を覆す最終2コーナーでの逆転劇
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
縁石を攻めながらメルセデスW17をドライブするアンドレア・キミ・アントネッリ、2026年6月6日(土) F1モナコGP予選(モンテカルロ市街地コース)
この育成哲学は着実に実を結んでいるようだ。今週末のモナコでは、初日FP1こそトップ3を視野に入れる4番手につけたが、続くFP2では調子を崩した。その後、アントネッリは状況を立て直すことになるが、その解決の糸口をもたらしたのはアントネッリ本人だった。
ボニントンはこう振り返る。
「今朝、彼がやってきて、いくつか細かい点を見直して、マシンに乗り込んだら、すっかり様変わりした。それだけだ。彼がマシンに満足した途端に、速いラップタイムが出る、というわけさ」
アントネッリは予選でもボニントンの予想を上回る走りを見せた。
「きっと彼は、ここに戻ってきた後に『あと0.1秒か0.2秒は縮められた』と言うはずだ。いつもそうだからね。でも、あのラップはかなり良かった」とボニントンは語る。
「正直私は、やれるとは思っていなかった。[暫定ポールのフェルスタッペンとの]タイム差を見て『良いところまでは行くだろうけど、届かないだろう』と思っていたんだ。でも最後の2コーナーで、彼はやってみせた」
2026年F1モナコGP予選では、アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)がポールポジションを獲得。2番手はマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、3番手はルイス・ハミルトン(フェラーリ)という結果となった。
決勝レースは日本時間6月7日(日)22時にフォーメーションラップが開始され、1周3340mのモンテカルロ市街地コースを78周する事でチャンピオンシップを争う。レースの模様はフジテレビNEXTで生配信・生中継される。