2022年型F1マシン「RB18」の開発についてレッドブル・レーシングのテクニカルディレクターを務めるピエール・ワシェは、マックス・フェルスタッペンの好みを重視したわけでもセルジオ・ペレスの好みを軽視したわけでもないと主張した。

ペレスは6月のアゼルバイジャンGPまでの8回の予選のうちの3回でチームメイトを上回り、モナコGPでは支配的な週末を過ごして優勝を飾るなど、序盤はフェルスタッペンと接戦を演じ、悲願の初タイトルに向けて堅実にシーズンを過ごしているように見えた。

だがアップグレードによってマシンが進化するにつれ、フェルスタッペンが盛り返して成功を積み上げていく展開となり、対照的にペレスは徐々に厳しい状況に置かれ始めた。

言わずもがな、フェルスタッペンはレッドブルのリードドライバーであり、現役のF1ワールドチャンピオンだ。

進化するにつれてペレスよりフェルスタッペン好みのクルマに変化してきたのは単なる偶然なのだろうか？ チームはフェルスタッペンの好みを重視してRB18の開発を進めてきたのではないか？ こうした疑問が湧くのは自然の成り行きと言える。

だがワシェはこの点について「マシン開発においては最高のパフォーマンスを目指すものだ。確かに徐々にマックスに合うようになってきているが、それを目指してクルマを開発してきたわけではない」と述べ、その憶測を否定した。

その上でペレスの苦戦については、マシン開発によってクルマの性格が変化した事が一因だと認めつつ「複数の要因があると思うが、主な要因はマシンバランスとクルマに対する自信と言える」と説明した。

「シーズン当初のマシンバランスは彼にとって少し上手く働き、マックスにとっては少し悪く働いていた」

「一旦、マックスに相応しいセットアップが見つかれば、マックスに勝つ、あるいはマックスと争う上でチェコが自信を持つのは非常に難しい」

またワシェは、セットアップの柔軟性が損なわれる事を理由に、理論的に導き出された究極のパフォーマンスを追求してマシン開発が行われる事はないと付け加えた。

「クルマのパフォーマンスを理論的に追求しようとすると、セットアップツールという点で行き詰ってしまい、マシンバランスを調整するのが難しくなる」

「つまり、適切なバランス、望ましいバランスにするためには、パフォーマンス面で少し妥協しなければならいないという事だ」

「一般的に言うと、より良いマシンを作るためには少しパフォーマンスを犠牲にするわけだ」

今季の課題の1つは重量であったが、かつてグリッド随一の肥満児とも呼ばれたRB18は少しずつシェイプアップしており、ヘルムート・マルコ曰く、現在は最小重量プラス5kg以下にまで絞り込まれていると言う。

フェルスタッペンはドライビング面に悪影響を及ぼしていたアンダーステアとフロントロックの問題が軽量化により解消した事を認めているが、これについてワシェは、より良いマシンバランスを追求する上でウエイトの自由度が上がった事がフェルスタッペンを後押ししていると説明した。

「確かにウェイトは（クルマとフェルスタッペンの相性が向上した）一つの要素だ。それはクルマのセットアップの一部になった」

「シーズン当初はウェイトを移動させる余地がなかったが、今ではセットアップの一部になっている」