マリーナベイ市街地コース
サーキット名 | マリーナベイ・ストリート・サーキット |
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所在国 | シンガポール |
住所 | Marina Bay, Singapore |
設立年 | 2008年 |
設計 | ヘルマン・ティルケ、KBR, Inc. |
全長 / コーナー数 | 5,063m / 23 |
最大高低差 | 5m |
周回数 | 61 |
ピット長 / 損失時間 | 402.3m / 24.337秒 |
ターン1までの距離*1 | 164m |
平均速度 | 166.578km/h |
最高速度 | 313km/h |
エンジン負荷と全開率*2 | 47% |
ブレーキ負荷 | |
燃料消費レベルと量 | 1.72kg/周 |
フューエル・エフェクト | 0.33秒/10kg |
タイヤ負荷レベル | |
ダウンフォースレベル | |
グリップレベル | |
変速回数 | 80回/周 |
SC導入率 | 100% |
ウェット確率 | 4% |
WEBサイト | www.singaporegp.sg |
SNS | twitter facebook instagram |
*1 ポールポジションから最初の制動地点までの距離 *2 全開率は距離ではなくタイムベースで算出
マリーナベイ市街地コース(英:Marina Bay Street Circuit)は、F1シンガポールGPの初開催(2008年)に合わせて設計されたストリートコース。F1史上初となるナイトレースが開催されたサーキットでもある。マリーナベイ・ストリートサーキット、またはシンガポール市街地コースとも呼ばれる。
常設のコースではなく、グランプリ開催に合わせてシンガポールの首都中心部の湾岸地区に特設される。ホームストレート及びピットは、公園の一部を一時的に路面舗装して仮設される。
公道故に全体的にコース幅が狭く、最も狭い橋を渡るセクションは約8m程。バンピーな路面、間近に迫るコンクリートウォール、高温多湿の環境…マリーナベイはマシンにもドライバーにも容赦がない。身体的な過酷さはシーズン最大と言われる。
ストリートサーキットの宿命であるが、少しでもグリップを失えばクラッシュのリスクが大きく高まる。2022年現在、レース中のセーフティーカー出動率は100%に至る。
F1初のナイトレース会場
コース全体が1500以上の照明によって光の道へと姿を変える。開催に際しての最大の問題点は照明設備にあったが、イタリアのヴァレリオ・マイオーリ社による最先端の照明システムは見事にレースを成功へと導いた。同社は、光のぎらつきや濡れた路面、あるいは他のマシンの上げる水しぶきなどの反射を最低限にするために完璧な提案を打ち出した。
コースを照らす照明設備
- 電源ケーブル10万8,423m
- スチール製パイロン×240基
- 照明プロジェクタ×1,600基
- 総電力318万ワット
- 照度約3,000ルクス(スポーツ競技場の照明の4倍の明るさ)
- 発電機×12基
路面が極めてバンピーであるため、ナイトレースの決勝では、フロアを路面にこすりながら激しく火花を散らすマシンが見られる。また、ドライバーは透明なバイザーでレースに挑む。
何故ナイトレースなのか?
F1の中心地であるヨーロッパ諸国とシンガポールとの時差は7~8時間。レース開始はシンガポール現地時間で20時=ヨーロッパの午後1時~2時。欧州のファンがテレビ観戦しやすい時間にレースが行われる。
コースレイアウト
当初は1周5,067mの長さを誇っていたが、2018年のグランプリでターン16からターン17のラインが変更となり、結果として1周の総距離が2m減少し、5.063kmへと変更された。
また、2023年はコース付近の再開発工事の影響で一時的に、ターン16~19区間にあった4つの90度コーナーが撤去され、代わって長さ398 mのストレートに置き換えられた。これによりコーナー数は23から19に減り、全長が135m短くなったため、レース周回数は61周から62周に増加した。
DRSゾーンは全部で3箇所。2019年にターン13からターン14の区間が新たに追加された。
特徴
コーナー数23、超低速サーキット
全23ヶ所のうちの半分が時速100km以下の超低速コーナー。セクター3だけで10ヶ所ものコーナーが存在する。最長ストレートは僅か832m(5~7コーナーの区間)と短く、パワーエフェクトが非常に低い。
エンジン性能がラップタイムに与える影響が非常に小さいため、車体に定評のあるレッドブルが伝統的に強さを見せる。コーナー数が多いため、エネルギー回生はほとんど問題にならず、燃費を気にする必要はない。
ドライバーとマシンと襲う過酷な環境
高温多湿な熱帯環境が、マシンの信頼性を試し、ドライバーの体力を揺さぶる。コックピット内の気温は50℃を超え、レースを終えるとドライバーの体重は3kg程度減少する。全体としてグリップが低く、一般道特有のマンホールや白線といった”障害物”がマシンのスリップを誘う状況の中で、ドライバーは一瞬のミスすら許されぬ戦いを強いられる。
ブレーキングポイントは16ヶ所もあり、冷却可能なストレート区間も少ないため、ブレーキへの負荷はカレンダー最大レベル。そのため、ブレーキ周りの冷却性能を限界まで高める必要がある。コーナー数が多く低速からのトラクションが必要とされるため、リアタイヤへの負担も大きい。オーバーヒート傾向(熱ダレ)となるため、タイヤマネージメントは必要不可欠。
過酷であるもう一つの理由は”時間”。決勝ワンラップのタイムが2分近くに及ぶため、アクシデントなく順調に進んだとしてもチェッカーフラッグまで2時間近くを要する。シンガポールGPはシーズンの中で最も長いレースであり、その分、ドライバーとマシンにかかる負担が大きくなる。
特殊な準備とスケジュール
F1カレンダーは例年、イタリアGPの2週間後にシンガポールGPを配置する。ドライバーはこの間、シンガポールの特殊な環境に適応するために、サウナを使ったトレーニングや厚着でのランニング等を行う。通常であれば時差ボケを解消するために、余裕を持って現地入りするが、シンガポールの場合はやや特殊だ。
チームメンバー及びドライバーは、欧州時間の生活リズムのままにシンガポールの週末に突入する。つまり、現地時間の昼過ぎに起床し、現地早朝にベットに入る。チームは現地正午に朝食を、そして現地午後6時にランチを提供し、ディナータイムは概ね現地午前1時にスタートする。
困難なオーバーテイク
2018年の統計では、レース中に記録されたオーバーテイクはわずか12回(2017年は14回)。その内DRSを使ったものですら5回に留まった。ポール・トゥ・ウィンの確率は70%(2017年までの統計)。著しく追い抜きが難しいため、予選リザルトが極めて重要となる。
スタート直後に接触祭りが開催される1・2コーナーは、コース幅が狭く切り返しがきつい。ここを上手く駆け抜けないと、続くターン4付近に設置されたDRS検知ポイントで前走車の1秒以内につくことができなくなる。
DRSゾーン1付近およびホームストレートエンドでは300km/h以上の速度となる。ターン5を如何に上手く立ち上がれるかがオーバーテイクの鍵。
年 | オーバーテイク | リタイヤ | ||
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通常 | DRS | 接触 | 機械的問題 | |
2022年 | 9回 | 2回 | 4台 | 2台 |
2021年 | 中止 | |||
2020年 | 中止 | |||
2019年 | 29回 | 22回 | 2台 | 1台 |
2018年 | 7回 | 5回 | 1台 | 0台 |
2017年 | 14回 | 2回 | 6台 | 2台 |
強力な地場
ターン13付近のエスプラネード橋の鉄骨が磁気を帯びているため、マシンの電子機器・センサー類に影響を与える。対策としてチーム側は、磁気干渉の少ない特殊なパーツを使う。また、ギヤボックスの油圧バルブへの影響を防ぐため、磁気誘導のためにミューメタル(ニッケル合金)でこれを覆う。
レースの勘所と勝利へのポイント
パッケージングとしては、高ダウンフォース仕様のセットアップに加え、低速コーナーから素早く脱出可能なトラクションの良さが重要となる。パワーユニット的には、ドライバーが思い通りにドライブ出来るよう、パワーよりも優れたドライバビリティが求められる。
セーフティーカー出動率は100%。2時間打ち切りレースとなる可能性が高く、他のサーキットに比べて戦略の重要性が高い。勝利のためには、迅速かつ的確な判断が求めれられる。
コースレコード
タイム | ドライバー | チーム | 年 | |
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ラップレコード | 1:41.905 | ケビン・マグヌッセン | ハース・フェラーリ | 2018年 |
コースレコード | 1:36.015 | ルイス・ハミルトン | メルセデス | 2018年 |
サーキットの場所・アクセス
湾岸地区に仮設される。グランプリウィークに限って公道をサーキットにしているため、決勝レース翌日はコースの解体作業が行われその翌日には通行止めも解除、普通の一般道に戻る。