ホンダF1、”有言実行”の2019年…目標を達成し続ける姿勢を高く評価するフェルスタッペン

ブラジルで予選ポールポジションを獲得し喜ぶホンダF1の現場統括責任者を務める田辺豊治テクニカル・ディレクターcopyright Honda

マックス・フェルスタッペンは、2019年型のホンダF1パワーユニット「RA619H」の進化に高い満足感を示している。特に、シーズン終盤に向けて導入されたラスト2回のアップグレードは「大きな改善」をもたらしたというが、選手権争いを標榜する来シーズンに向けて、更に有望な材料があるという。それは、有言実行を貫いたホンダの姿勢だ。

今から一年前。レッドブル・レーシングがホンダパワーへと切り替える事について、その決断を疑問視する声は決して少なくなかった。一種の賭けとみる向きもあった。だが、蓋を開けてみれば、フェルスタッペンは3勝を挙げ、更には自身初のポールポジションを獲得。キャリア最高位のチャンピオンシップ3位でシーズンを締め括った。


© Getty Images / Red Bull Content Pool

シーズン半ばを過ぎる頃には、馬力においてメルセデスと遜色ないとの評価を下す欧州メディアも出てくるなど、ホンダの性能向上には眼を見張るものがあった。特に印象的だったのが、サンパウロでのF1ブラジルGPの最終周だ。レッドブルと同じく、ホンダPUを搭載するトロロッソのピエール・ガスリーが、エンジンパワーの真っ向勝負でメルセデスのルイス・ハミルトンを退け、見事2位表彰台に上がった。

シーズンを振り返ったフェルスタッペンは、本田技研のF1エンジンパワーについて「メルセデスとの差はほんの僅か。かなり近い」と主張。また、開発については「ホンダは全力で取り組んできた。最後の2回のアップグレードによって得た改善は本当に大きなものだった」と評価した。

性能面において、ホンダとの提携一年目を非常にポジティブに捉えるフェルスタッペンだが、それを上回る前向きな材料として、彼はホンダが一度も約束を破らなかった点を挙げた。曰く、2019年シーズンに設定したマイルストーンの全てにおいて、ホンダは掲げていた目標を達成し続けたそうだ。

「僕が非常にポジティブだと思うのは、年間を通して設定された目標を全て達成した点だ」とフェルスタッペン。

「時にはターゲット以上のものを成し遂げた。これは本当に素晴らしい事だ。アップグレードによる見込みゲインについて、ホンダは僕らに対して常に極めて正直であり続けた。しばしば僕らは、約束された以上のものを受け取った。当然の事だけど、本当に喜ばしい」

フェルスタッペンはホンダの姿勢を評価する上で、「正直」と「有言実行」という2つの指標を挙げた。評価というのもは常に相対的だ。無意識の内に比較対象としたのは、昨年までのエンジンパートナーだろう。

2018年、ルノー製パワーユニットを搭載していたレッドブルは、マックス・フェルスタッペンとダニエル・リカルドの双方が、エンジンの信頼性不足によって怒りとフラストレーションを溜め込んだ。リカルドのリタイヤ率は4割近くにも達し、シーズン2戦を残して「このクルマは呪われてる。もう走りたくない」との爆弾発言が飛び出すにまで至った。

クリスチャン・ホーナー代表は「こんなエンジンのために数百万ポンドを支払っているなんて!」と腹を立て、「ファーストクラスのチケットの代金を支払ったにも関わらず、提供されたのはエコノミークラスだった」と痛烈に批判。ルノーは新車発表に際して、2018年型PU「R.E.18」の開発に際しての最優先事項は「信頼性向上」だと述べ、実際にダイナモでその成果を確認済みと発表していただけに、裏切られた気持ちになったのかもしれない。

2017年まではホンダも無数のDNFを量産し、見るに堪えない悲惨な状態であったが、今や信頼性の高さは日本のエンジンサプライヤーの強みの1つとなりつつある。フェルスタッペンは「年間を通しての信頼性は高く、ホンダ側のトラブルのためにリタイヤした事は一度もなかった。本当にポジティブだ」と説明する。

「過去の僕らは、クルマとエンジンの信頼性不足のために多くのポイントを失ったけど、今年は両方とも改善された。チャンピオンシップを懸けて戦いたいのであれば、この手の問題によってリタイヤする事は許されないわけだから本当に満足だ」

レッドブルとホンダ、そしてフェルスタッペンは、2020年シーズンのタイトル争いを目標に掲げている。メルセデスがコンテンダーである事は微塵も疑う余地がなく、ハミルトンの7冠は手堅いだろう。だが、来季RB16はホンダパワーユニットに最適化された初めてのマシンとなる。

フェルスタッペンをして、発言と行動に矛盾がないと評価されたホンダは、2020年シーズンについて、レッドブルに何を約束しているのだろうか?

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