F1オーストリアGP決勝グリッドとタイヤ戦略考︰スプリントでゲインした者、失った者

2022年7月9日にレッドブル・リンクで開催されたF1オーストリアGPスプリントのスタート直後のホームストレートCourtesy Of Red Bull Content Pool

7月10日(日)の日本時間22時よりレッドブル・リンクで開催されるF1第11戦オーストリアGPの公式スターティング・グリッドが発表された。予選及びスプリント結果からの変動および決勝のタイヤ戦略を見ていこう。

前戦イギリスGPに続き、今週末もフェラーリF1パワーユニット勢の多くがコンポーネントを交換した。

中でもバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)は週末を前に今季4基目となるICE(内燃エンジン)、ターボチャージャー、MGU-H/K、そして3基目のCE(コントロール・エレクトロニクス)を開封。年間上限基数に達したため、ペナルティにより最後尾スタートが言い渡された。

また決勝を前にしては、追加で5基目のターボとMGU-Hを開封した。

フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)は土曜のスプリントで電気系統と思われるトラブルに見舞われ出走できず最後尾に転落した事を受け、日曜の本戦を前に今季5基目のICE、ターボ、MGU-H、そして4基目のES(バッテリー)の封を切った。

降格ペナルティの対象だが、ボッタスがセットアップ変更とリアウイング交換によるパルクフェルメ規定違反となったため、グリッドは19番手のままで影響はない。今後のレースに向けて、ストック用のパワーユニットを確保する狙いがあるものと思われる。

ギアボックスに関しては以下の5名が、ケース及びカセット、駆動部品・ギアチェンジ・補助部品を新たに開封しているが、いずれも規定基数の範囲内だった。参照:F1レギュレーション解説「ギアボックス編」

  • マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
  • シャルル・ルクレール(フェラーリ)
  • バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)
  • 周冠宇(アルファロメオ)
  • ジョージ・ラッセル(メルセデス)

今週末は7件のレギュレーション違反が出ているが、グリッド降格に至ったのはスプリントを10位フィニッシュしたPU交換のボッタスのみで、スプリント結果とグリッドとでは、10番手以降の並びに変更が生じた。

想定されるタイヤ戦略

最も柔らかいソフトタイヤ勢が問題なく完走した23周のスプリントで明らかなように、原則として全車が1ストップ戦略を採ってくるものと思われる。ピレリの理論計算では、71周のレースで最も速いタイヤ戦略はミディアムからハードに繋ぐ1ストッパーだ。

本来の実力より後方からスタートするフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)やバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)はハードをスタートタイヤに選んでくる可能性もある。この場合、最終スティントはミディアムではなくソフトという選択肢もある。

Courtesy Of Alpine Racing

レッドブル・リンクを周回するフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)、2022年7月9日F1オーストリアGP

ミディアムスタートの場合は25~30周目、ハードスタートの場合は40~45周目がピットストップの目安となる。

逆にスプリントで見られたようなソフトスタートはリスクが大きい。レースの場合、搭載される燃料の量が3倍となるためクルマが重く、デグラデーションが大きくなる事が予想される。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

ポールポジションのマックス・フェルスタッペンは順当にミディアムを選ぶか?

レッドブル・リンクはドライバーとクルマに容赦のないコースであり、セーフティーカー(SC)が導入される可能性は高めだ。過去5年の統計では、SCの導入率は60%に及ぶ。

終盤にSCが導入され、ピットでのロスタイムを抑える事ができれば2ストップへと切り替える者も出てくるだろう。昨年のウィニング・ストラテジーは2ストッパーだった。

レース中の降雨の可能性は低くなっているものの、前日夜は雨との予報もあり、週末を通して路面に敷き詰められたラバーはレースを前に全て洗い流されている可能性がある。

この場合グリップが低下しタイヤの摩耗が進み、デグラデーションが大きくなる可能性がある。

2022年F1オーストリアGP 決勝グリッド


スプリント採用の週末なので、予選結果とグリッドの変動値を書き添えた。最も大きくゲインしたのは8ポジションアップのセルジオ・ペレス(レッドブル)。対照的に最も多く失ったのは11ポジションダウンのアロンソだ。

71周で争われるF1オーストリアGPの決勝レースは現地15時、日本時間22時にフォーメーションラップが開始される。日本ではDAZNフジテレビNEXTで生放送・ライブ配信される。

Pos No Driver Team Qualifying
1 1 M.フェルスタッペン レッドブル・RBPT 1(-)
2 16 C.ルクレール フェラーリ 2(-)
3 55 C.サインツ フェラーリ 3(-)
4 63 G.ラッセル メルセデス 4(-)
5 11 S.ペレス レッドブル・RBPT 13(+8)
6 31 E.オコン アルピーヌ・ルノー 5(-1)
7 20 K.マグヌッセン ハース・フェラーリ 6(-1)
8 44 L.ハミルトン メルセデス 9(+1)
9 47 M.シューマッハ ハース・フェラーリ 7(-2)
10 4 L.ノリス マクラーレン・メルセデス 15(+5)
11 3 D.リカルド マクラーレン・メルセデス 16(+5)
12 18 L.ストロール アストンマーチン・メルセデス 17(+5)
13 24 周冠宇 アルファロメオ・フェラーリ 18(+5)
14 10 P.ガスリー アルファタウリ・RBPT 10(-4)
15 23 A.アルボン ウィリアムズ・メルセデス 11(-4)
16 22 角田裕毅 アルファタウリ・RBPT 14(-2)
17 6 N.ラティフィ ウィリアムズ・メルセデス 19(+2)
18 5 S.ベッテル アストンマーチン・メルセデス 20(+2)
19 14 F.アロンソ アルピーヌ・ルノー 8(-11)
Pit 77 V.ボッタス アルファロメオ・フェラーリ 12(-8)

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