VW傘下のポルシェ、F1参戦を検討…鍵を握るは2025年導入の次世代PU。既に3チームと交渉か
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フォルクスワーゲン傘下の高級自動車メーカー、ポルシェの上級幹部がF1への参戦を検討している事を認めた。実現の鍵を握るのは、2025年に導入予定の次世代パワーユニットの仕様だ。
ポルシェは1958年から1964年にかけてF1に参戦。62年のフランスGPでのダン・ガーニーの優勝を含む計5回の表彰台を獲得した。
その後はエンジンサプライヤーとして1983年から1987年までマクラーレンに1.5リッターV6ターボを供給。ニキ・ラウダ、アラン・プロストと共にドライバー及びコンストラクターの両タイトルを獲得するなど活躍したが、フットワークからシーズン半ばで契約解除された1991年を最後にF1を去った。
ポルシェ・モータースポーツのフリッツ・エンツィンガー副社長はBBCスポーツに対して、2025年に導入が予定されている次世代パワーユニットの仕様如何で参戦の可能性がある事を認めた。
鍵となるのはサステナビリティ(持続可能性)だ。エンツィンガー副社長は「e燃料」を引き合いに出し、F1がカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを加速させていく事が確認できれば、VWグループ内で詳細を評価して「次なるステップを検討する」と語った。
e燃料(eフューエル)は工場などから排出される二酸化炭素を材料に、水素と合成して製造される液体燃料の事で、カーボンニュートラルを実現する代替燃料として注目されている。
ポルシェは昨年、シーメンスなどのエネルギー関連企業と共同でe燃料の商業生産に向けたプラント開発プロジェクト「Haru Oni」の立ち上げを発表したばかりだ。e燃料は既存の内燃エンジンはプラグイン・ハイブリッドにそのまま使用できるだけでなく、ガソリンスタンドをも既存のまま利用できるという利点がある。
EVは時期尚早であるとして当面はハイブリッドを継続する意向を明らかにしているF1は、サステナビリティへの取り組みの一環として、2030年までに二酸化炭素の実質的排出量をゼロにするカーボンニュートラルを目標に掲げており、2022年にE10燃料(バイオ成分10%含有)を導入。最終的にこれを100%にする事を公言している。
ポルシェのF1参戦はこれまで度々取り沙汰されてきた。最近では、MGU-Hの廃止議論に合わせて2021年の参戦が噂されていた他、2022年からのパワーユニット開発凍結が合意された先月11日のF1コミッションでは、ポルシェの新規参入が議題に挙がったとされている。またワーゲンに関しては、ディーゼルエンジンの排出規制不正問題が足かせとなり、計画が頓挫した経緯がある。
仮に参戦するとして、それがパワーユニットサプライヤーとしてなのか、メルセデスのようなワークスとしてなのかは明らかになっていないが、BBCが伝えたところによると、既にレッドブル、マクラーレン、ウィリアムズと最初の交渉が行われた可能性があるという。
屈指の強豪であるレッドブル・レーシングは、エンジンパートナーのホンダが今季末でF1から撤退する。22年からの向こう3年間はホンダのパワーユニット資産を引き継ぎ「レッドブル・エンジン」のバッジでチャンピオンシップを戦い、次世代パワーユニットが導入される2025年以降は、独自でのエンジン製造を視野に入れている。
マクラーレンとウィリアムズに関しては、かつてワーゲングループ傘下で幹部職を務めていたキーパーソンがチームのマネジメントに就いている。今年、F1のCEOに着任したステファノ・ドメニカリもワーゲン傘下のランボルギーニでCEOを務めていた。
マクラーレンのチーム代表を務めるアンドレアス・ザイドルはかつてポルシェのモータースポーツ部門を率いていた人物であり、2015年から2017年までのポルシェのWECダブルタイトル3連覇、ル・マン24時間レース3連覇の立役者の一人として知られる。
また、ウィリアムズのヨースト・カピートCEOは2012年から2016年までワーゲンのモータースポーツ部門を率い、世界ラリー選手権(WRC)でのフォルクスワーゲンチームの4年連続ダブルタイトル獲得を成し遂げた。
両チームの広報担当者はノーコメントを貫いている。