ピアストリ「彼の後知恵は僕にとっての先見の明」”落とし穴”を乗り越え飾ったF1初優勝を経て語るウェバーの影響

キャリア初優勝を飾ったオスカー・ピアストリ(マクラーレン)とアンドレア・ステラ代表、2位ランド・ノリス、2024年7月21日(日)F1ハンガリーGP(ハンガロリンク)Courtesy Of McLaren

一騒動あったF1ハンガリーGPでの初優勝を経てオスカー・ピアストリ(マクラーレン)は、自身のキャリアにおけるマーク・ウェバーの影響について「彼の後知恵は僕にとっての先見の明だ」と語った。

23歳のオーストラリア人ドライバーが同郷の先輩、元レッドブルF1ドライバーのマネジメントを受けることになったのは、2020年1月にルノー・スポール・アカデミー(アルピーヌ・アカデミーの前身)に加入したタイミングのことだった。

大騒動となったアルピーヌからマクラーレンへの移籍を含め、ウェバーとその妻アン・ニール、起業家ジェイソン・アレンが率いるJAMスポーツマネジメントは以降、ピアストリのキャリアをバックアップしている。

残念ながらウェバーはピアストリの初優勝に立ち会えなかった。同じく彼がマネジメントするミッチ・エバンスのサポートのためにフォーミュラE最終戦が行われる英国ロンドンに戻ったためだ。

ウェバーについてピアストリは「彼の影響は本当に大きいし、多方面に渡る」と明かす。

「ジュニア時代、F1への昇格、そしてマクラーレンとの仕事に至るまで、マークとアンは舞台裏で僕のキャリアのために途方もない仕事をしてくれた。それは僕に大きな影響を与えている」

無論、状況が全く異なるとは言え、奇しくもピアストリにとっての初優勝への道のりは、少なからず2013年マレーシアGPの「マルチ21」を思い出させるものだった。

当時、レッドブルに所属していたウェバーはラップをリードしていたものの、「マルチ21」、つまりポジションを維持せよとのチームからの指示を無視した僚友セバスチャン・ベッテルに交わされ優勝を逃した。

Courtesy Of Red Bull Content Pool

表彰台に立つ2位のマーク・ウェバー(インフィニティ・レッドブル・レーシング)と優勝した僚友セバスチャン・ベッテル、2013年3月24日(日)F1マレーシアGP(セパン・インターナショナル・サーキット)

ハンガロリンクでマクラーレンは、ルイス・ハミルトンのアンダーカットを防いで1-2を死守すべく、最終ストップで2番手ノリスを先行ピットインさせた。結果、その3周後にタイヤ交換を終えたピアストリはノリスにアンダーカットされた。

最終的には残り3周でピアストリにトップの座を譲ったものの、20周近くに渡るチームからの懇願にも関わらずノリスはオーダーを実行しなかった。

初優勝を経てピアストリがウェバーについて語ったのは、単にキャリアにおける彼の影響について説明するよう求められたからであって、マルチ12と今回の一件をピアストリが紐づけて口にしたわけではない。

しかしながら今回の件とは無関係に、ウェバーが少なからずチームオーダーを巡る状況についてのアドバイスを贈っていたであろうことは想像に難くない。優勝、タイトルを争うまでに成長したマクラーレンが今回のようなケースに直面するであろうことは容易に想像できた話だ。

ピアストリは「マークはF1で長く成功したキャリアを築いてきた。その大半は大局的なものの見方についてだけど、常にちょっとしたアドバイスやコツのようなものを教えてくれるんだ」と続ける。

「何度か言ったことがあるけど、彼のキャリアにおける後知恵は、僕にとっての先見の明だ」

「彼は、彼自身がキャリアを通して経験した落とし穴や罠から僕を守ってくれる。彼の影響を受けているのは確かだし、それは僕にとって本当に重要だ」

「それに、彼はキャリアの大部分をチャンピオンチームで過ごしてきた。それは僕だけでなく、チーム(マクラーレン)全体にとっても重要だ」

マクラーレンのアンドレア・ステラ代表は、個々のメンバーが個人プレーに走ることなく一丸となってレースに臨むために、毎週日曜朝のミーティングで毎回、繰り返して「方法論」を確認し合うことでチームとしての結束力を高めていると説明した。

「この旅路を我々はともに歩んでいる。チーム、ランド、オスカーの誰であれ、一人で進んでいくことなどできない。それが日曜の朝に話し合ったメッセージだ」

「レーシングドライバーは、このメッセージを常に念頭に置く必要がある。それが毎週日曜日にこのミーティングを行っている理由だ」

マルチ12を経て、ベッテルのマネジメントは弁護士を通してレッドブルに書面を送り、チームオーダーは彼の契約に反するものだと通知した。以降、ウェバーとベッテルの関係は完全崩壊した。

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