インディ500はF1とどう違う?F1との比較でコースやルール、マシンを解説copyright IMS

インディ500はF1とどう違う?F1との比較でコースやルール、マシンを解説

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佐藤琢磨が日本人として初めて優勝を果たしたインディ500とは、一体どのようなレースなのだろうか?世界最高峰レースとして知られるF1とは何が違うのだろうか?

琢磨が歴史的快挙を達成した2017年のインディ500には、F1に参戦中の最強ドライバー”フェルナンド・アロンソ”も参戦、インディ500の決勝はF1モナコGPとブッキングする5月28日であったため、アロンソはモナコGPではなくインディ500でのレースを選んだ。インディ500は、二度のF1ワールドチャンピオンがモナコGPを蹴ってまで参戦する程のレースなのだ。

F1と比較する形でインディ500のコースやルール、マシンについて解説する。

101年の伝統を持つインディ500

indy500
©IMS

「インディアナポリス500マイルレース」通称インディ500は、アメリカのインディアナ州で開催される自動車レース。初めて開催されたのは1911年、なんと2017年の今年で101回目の開催となる歴史あるレースなのだ。1929年に初開催となったモナコGPよりも長い歴史を持つ。現在のインディ500は、佐藤琢磨が参戦している「インディカー」シリーズの中の1戦として開催されている。インディカーは北米で最も人気のある4輪モータースポーツレースだ。

インディ500は世界三大レースの1つとされており、世界で最も伝統ある自動車レースの中のひとつに数えられている。

レース名 シリーズ 初開催
インディ500 インディカー・シリーズ 1911年
ル・マン24時間レース FIA 世界耐久選手権(WEC) 1923年
モナコGP F1世界選手権 1929年

一つの場所で開催され続けているレースとしては、世界で最も長い歴史を誇るのがインディ500なのだ。なお、インディ500の賞金総額は15億円以上と言われており、優勝者は3億円近い大金を手にすることになる。ザ・アメリカン・ドリーム。なお、F1がFIA国際自動車連盟に登録された世界選手権であるのに対して、インディ500を擁するインディカー・シリーズはFIAの管轄でもなければ世界選手権でもない。

舞台はオーバル、最高速度は380km/h

インディアナポリス・モーター・スピードウェイの空撮写真
creativeCommonsbiverson 楕円形のオーバルコース

インディ500の会場となるのはオーバルコースのインディアナポリス・モーター・スピードウェイ。シケインやら複合コーナーやらがあるF1のサーキットとは正反対の、楕円状のサーキット。1周2.5マイル(4.023km)のコースを200周、つまり500マイル(804.672km)を走行するためインディ500と呼ばれている。

平均速度は予選で約362km/h、決勝で約354km/h、最高速度は380km/hにも達する。インディ500はオーバルコースなので単純に比較することはできないが、高速サーキットと言われるモンツァ(イタリアGP)の予選の平均速度が約240km/hであることを考えると、如何にインディ500が速いかがよく分かる。

インディ500のレースマシン

インディ500が開催されるインディカーシリーズでは、2012年より2.2リッターV6ツインターボエンジンが採用されており、現在サプライヤーとなっているのはホンダとシボレーの2メーカーのみ。とは言え、シボレーエンジンの実際の開発は、イギリスのレースエンジンメーカーであるイルモアが担当している。最高出力は550馬力~700馬力程度、最高回転数は12,000rpmとなっている。大雑把に言えばインディカーはワンメイクに限りなく近いモータースポーツである。

カテゴリ エンジン仕様 最高回転数 馬力
インディ500 2.2リッターV6
ツインターボ
12,000rpm 550~700馬力
F1 1.6リッターV6
ハイブリッドターボ
15,000rpm 1,000馬力

インディカー・シリーズがドライバーやチームの腕を競うところに焦点を当てているのに対して、F1ではエンジンや車体、その他様々な”メカ”の製造者の技術を争う実験場のような側面があり、ドライバーやチームの腕よりも機械的な良し悪しに結果が大きく左右される傾向が強い。

F1日本GPの5倍の観客動員数

観客動員数は、決勝日だけで30万人を超えると言われている。何しろ常設の観客席だけで25万人分あるという。さらに、仮設の観客席まで含めると40万人を超えるというから驚きだ。ちなみに東京ドームは収容人数は5万5000人。2016年のF1日本GPの決勝の観客数は7万2000人と発表されており、インディ500はF1日本GPの5倍以上の規模を誇るイベントとなっている。

F1とはまるで違うルールとレース形式

インディ500でのレース風景
creativeCommonsMike Miley

インディ500は、F1とは大きく異なるルールが設けられており、そのレース形式は独特だ。出走台数を見ても、F1が20台前後で争われるのに対してインディ500は33台で争われる。

5日間もの練習走行

F1の場合、金曜の練習走行、土曜の予選、日曜の決勝と、3日間に渡ってイベントが行われるが、インディ500の場合は2週間以上に渡ってイベントが開催される。オーバルコースは周りを全てコンクリートの壁で囲まれており、決勝の平均時速は350km/h超にもなる。1つ間違うだけで大きな事故につながってしまうため、5日間にも渡る練習走行が行われる。この練習走行は「プラクティス」と呼ばれる。プラクティス最終日となる金曜日は「ファスト・フライデー」と呼ばれ、マシンにターボチャージャーが追加、予選仕様のエンジン出力となる。

プラクティスの初日と2日目には、インディ500を初めて走行するドライバーに対するオリエンテーションが行われる。これは、インディ500に初めて参加するドライバーが出場に値する能力を有しているかどうかの適正審査のために行われ、ルーキー・オリエンテーション・プラクティス(ROP)と呼ばれている。

現役最強と呼ばれ、2度のF1チャンピオンであるアロンソであってもオリエンテーションは必須。審査にパスできなければアロンソと言えどもインディ500には出場できない厳しいルールなのだ。F1で3度の世界チャンピオンに輝いたネルソン・ピケでさえ、初挑戦の時にはこの審査を受けている。これは超高速でのオーバルコースが如何に危険であるかの裏返しである。参考:

恐怖…歴史に名を残すインディ500クラッシュ動画”5選”

平均速度を競う2日間の予選

インディ500の予選は非常に複雑なことで知られている。予選ルールはエントリー台数や年によってマチマチであるため、まずはその概略だけを簡単に紹介する。

F1の場合には「1周の最速タイム」を競うが、インディ500では「4周の平均速度」を競う。また、F1とは異なり予選を勝ち抜かなければ決勝には進めない。決勝に進めるのは33台のみ。初日の予選は、全マシンを”速い組”と”遅い組”の2つのグループに分けるために行われる。そして2日目の予選で、各グループ毎に速度を競い合いそのグループ内での順位を決定し決勝グリッドを決める。予選初日の走行順はくじ引きによって決められる。インディ500はチーム戦であるため、チームメイトよりも後で走行した方がマシンセッティングの点で優位。

以下は、エントリー台数が33台以上の場合の予選方式。2017年はエントリーが33台であるため予選での脚切りは行われない。

まずは、ポールデーと呼ばれる予選初日に、各マシンが3回ずつ走行を行いその平均速度を争う。上位30名のドライバーはここで予選通過が確定する(この時スターティンググリッドは決定しない)バンプデーと呼ばれる予選2日目に、ポールデーの敗退組が残りの3台の枠をかけて平均速度を争い、予選1日目に予選通過を果たした30台が、スターティング・グリッドを決める争いを行う。

シャンパンファイト、ではなくミルクファイト?

2017年のインディ500で優勝し、勝者のミルクを飲む佐藤琢磨
©IMS

F1では、表彰台を獲得したドライバーがシャンパンファイトを行うが、インディ500の場合には勝者が牛乳を飲むのが慣例となっている。1933年にインディ500を制したルイス・メイヤーが、レース終了後に牛乳をリクエストしてその場で飲んだのが始まりと言われる。牛乳製造会社がこれに目をつけスポンサーとなったのだ。インディ500では優勝して牛乳を飲むとスポンサーからの賞金がもらえる。