ハミルトン、迫るフェルスタッペンのカウントダウン…3輪ながら時速230kmで周回「驚くべき才能」とロス・ブラウン

2020年イギリスGPの優勝トロロッソを掲げるメルセデスのルイス・ハミルトンCourtesy Of Daimler AG

メルセデスのルイス・ハミルトンは、F1第4戦イギリスGPのファイナルラップで不運にも左フロントタイヤを失い3輪での走行を強いられながらも、背後から迫るマックス・フェルスタッペンの恐怖にも動じず、クルマをフィニッシュラインへと運び勝利を収めた。

F1のスポーティング・ディレクターを務めるロス・ブラウンは、ラップをリードしている状況でホイールを一つ失うという過酷な試練において、一切ミスを冒さず卓越した走りを見せたハミルトンを「驚くべき才能」との言葉で称賛した。


© Daimler AG / パンクして破壊された左フロントタイヤを眺めるルイス・ハミルトン

タイヤのデフレーションでエキサイティングなフィナーレを演出したシルバーストンでの闘いを振り返ったロス・ブラウンは「ルイスのレースは最終ラップまでケークウォーク(楽勝)に見えた。だがそれは当たり前の事ではなく、彼がレースを通して終始、とびきり優れたドライビングをしていたからだ」と語った。

「ファイナルラップで彼が成し遂げたことを振り返ってみたい。左フロントタイヤを失ったにもかかわらず、彼は130km/h以上のスピードでコップスとストウの各コーナーを攻略した」

「更に、左フロントタイヤがふらついたままの状態で、ストレートでの速度は230km/hに到達していたから驚きだ。彼はこの状況を完璧に支配して数秒差で優勝してみせた。これはルイスの驚くべき才能と勇敢さを見事に物語っている」

タイヤに問題を抱える直前のラップをハミルトンは1分32秒185で走行しているが、3輪での走行となったファイナルラップは1分55秒484と、それでも23秒余計に時間を要しただけだった。

ハミルトンはレースエンジニアのボノから、崖っぷちの彼を攻め立て追い詰めようとするフェルスタッペンとのギャップを逐次無線で聞かされていた。19秒後ろだ、7秒、6秒、5秒というように。フェルスタッペンがチェッカーフラッグを受けたのは、ハミルトンがフィニッシュラインを通過した僅か5.856秒後の事だった。

レース後のトップ3カンファレンスに出席したハミルトンは「レースが終わって時間が経つにつれて、何が起こったのかを直視出来るようになってきた。どんどん気分が悪くなってきたよ」と振り返った。

「何とか冷静さを保って、慎重にクルマを持ち帰ることができたけど、こうしてここに座っていて落ち着いて考えてみると、実際は何が起きてもおかしくない状況だった」

「もしタイヤが高速コーナーかギブアップしていたとしたら、状況は大きく違っていただろう、って考えている。だから、そうならずに済んだことを心から感謝している」

「(無線で)マックスが猛烈なスピードで追いかけて来ている事を聞かされていたんだ。確かハンガーストレートに差し掛かったところだと思うけど『19秒だ』って声が聞こえてね。スピードを上げようとしたんだけど、ホイールが明らかにめちゃくちゃな状態で『ああ、一体どうやってタイムを失わずに最後の数コーナーを通過すりゃいいんだ…』って考えていた」

「幸いにも後15秒というところで最後の2コーナーに辿り着けたんだけど、その後は大惨事だった。「7秒、6秒、5秒…」という声が聞こえてきて。何とか上手くまとめる事ができて本当に感謝している」

タイヤの破損の原因は現時点で不明だが、ピレリのレース部門を統括するマリオ・イゾラは、早急に調査を終えて8月4日(火)を目処に調査結果を報告したいとしている。

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