ハースF1、訴訟を準備…期限2週間 リッチエナジーに47億円を請求

ガレージへと戻されるハースのケビン・マグヌッセン、F1イギリスGPにてcopyright Haas

ハースF1チームが、リッチエナジーへの損害賠償請求を検討している。今季よりハースのタイトルスポンサーを務めているリッチエナジー社は、第10戦イギリスGP開幕を前に突如チーム側との契約破棄を発表。その一方でハース側は、契約は依然有効だとしており、両者の間の溝が深まっている。

ハースは英国ロンドンに事務所を構えるエブリー社を代理人として、リッチエナジーとの交渉を開始。7月11日付けでエブリーがリッチエナジーへと送った書簡によって、ハースが約47億円のスポンサー料の支払いを求めて、損害賠償請求を検討している事が明らかとなった。なおこの書簡を公開したのは、エブリーではなくリッチエナジーだ。

ハース側は、リッチエナジーのウィリアム・ストーリーCEOからの一方的な契約の打ち切りは、両者の間で締結済みのスポンサーシップ契約に違反するものだと主張。ストーリーCEOは契約解消の理由としてハースの「成績不振」を挙げたが、ハースの代理人が主張するには、契約には所謂パフォーマンス条項はなく、リッチエナジーには成績不振を理由に契約を解消する権利はないという。

また、公には語られていないものの、リッチエナジーはもう一つの契約解消の理由として、ハースF1マシンからの同社ロゴの取り外しを挙げているようだ。リッチエナジーは、ATBセールス社がロンドン高等裁判所に提訴した著作権侵害訴訟に敗訴。7月18日に差止命令が下されるため、ハースはF1カナダGPを前に、問題とされたリッチエナジーのロゴのシンボルマーク部分を削除。以降、マークを除いたタイプのみがマシンに掲載されている。

ところが、ウィリアム・ストーリーCEOはハース側のこの措置に不満を抱いているようで、エブリーは書簡の中でこれについて反論。ロゴ撤去は裁判所命令に基づくものであり、この件に関するウィリアム・ストーリーCEOの反応は「全く我慢ならないものだ」としている。

なお同裁判では、裁判所がリッチ・エナジーに対して、ATBセールスが裁判のために負担した費用として35,416ポンド(約483万円)を7月13日までに支払う事ならびに、問題のロゴを使用した商品の世界での総売上を原告に対して開示する事などを命じたが、同社は期限を過ぎた今もこれに応じていない。

Rich Energy LimitedとHaas Formula LLCとの間で交わされた現在の契約は、法的に2022年11月末日まで有効とされ、ハースは既に請求済みのスポンサー費用の内、未払いとなっている600万ポンド(約8億円)、そして契約によって得られるはずの将来の売上である2020年分の1400万ポンド(18億8000万円)と、2021年分の1500万ポンド(約20億円)を合わせた合計3500万ポンド(約47億円)を訴訟によって回収しようとしている。

ハースは、7月25日までに3500万ポンド全ての支払いがなされない場合、訴訟に向けての手続きを始めると、リッチエナジーに対して宣告したが、著作権侵害訴訟での同社及び同氏の対応の進捗を鑑みれば、期限内に入金される可能性は低いと見るべきだろう。

なおリッチエナジー社の一部株主は、一連の出来事はウィリアム・ストーリーCEOの独断によるものだとして、同氏解任に向けた法的プロセスを進めているが、ストーリーCEOは13日、取締役会での決議を経て、エナジードリンク缶「リッチエナジー」の独占販売権を、同氏が所有する第三企業に譲渡したと発表。事態は一層泥沼化の様相を呈している。

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