新車発表を120%楽しむ!図解:F1マシンの主要パーツ名称と構造

F1マシンの主要空力パーツの名称

シーズン開幕前の新車発表ウィークが到来すると、メディアには「バージボード」やら「サイドポッド」やら、一体マシンのどの部分を指す名称なのかよく分からない用語が大量に飛び交う事になる。折角の新車解説もそれでは存分に楽しめない。

ここでは初心者のファン向けに、F1マシンの主要パーツの名称を図を使って解説する。全ての部品を明示する事は難しいが、最低限知っておきたい基本的な部位を集めた。随時書き足していく所存である。気になった方はお気に入りにでも追加しておいて頂ければ幸いだ。

基本的なエアロパーツ

まずはマシン全体を構成する主要な空力パーツを見ていく。

フロントウイングとノーズ

空力の起点となるのが最前方に設置されるフロントウイング。フロントノーズと一体で、レース中の接触事故などによって破損した場合に備えて、容易に着脱可能となっている。フロントのダウンフォース量を規定すると共に、これより後方に位置する全ての空力パーツのエアロダイナミクスに影響を与える重要な部位。

サイドポッド

コックピット脇の膨らみがサイドポッド。サイドポンツーンとも呼ばれる。中にはエンジン冷却用のラジエーターや発熱する電気機器が配置されており、先鋒にサイドポッド・インレットと呼ばれる冷却用の空気取り入れ口を備える。また、サイドポッドの上下には、横からの衝撃に備えてサイドインパクト構造なるパイプフレームが設けられる。

エンジンカバー

パワーユニットを覆う形で設置されるのがエンジンカバー。後方には”背びれ”の形をしたシャークフィンがある。マシンの中では珍しく平坦な領域が広いため、スポンサーロゴを掲載するにはもってこい。

リアウイング

車体最後部の翼形状のパーツがリアウイング。フロントウイングと同じく、左右両端のエンドプレート(翼端板)の間にメインプレートを通す構造となっている。メインプレートは飛行機の翼を逆さまにしたような形状で、翼の下に揚力を生み出してダウンフォースを発生させる。飛行機の場合には真逆のフォルムなので、上空に向かう力が発生し、離陸を助ける。

主要構造

次はマシンを真上から見た図で、基本構造とその他の空力パーツを確認する。

サスペンション

前後車輪と車体をつなぐためのパーツがサスペンション。タイヤを路面に接地させるのが主な役割だが、F1においては整流パーツとして積極的に利用される。サスペンションには大きく分けてダブル・ウィッシュボーン、マルチリンク、マクファーソン・ストラットという3方式が存在するが、F1ではダブル・ウィッシュボーン式が採用されている。詳しい構造は後で図解する。

バージボード

前輪とサイドポッドとの間に設置される垂直面のエアロパーツがバージボード。最も開発の余地が残されているエリアであるため、近年のF1マシンのバージボードは複雑極まりない形状をしていたが、2022年のグランドエフェクトカー導入と共に禁止された。

フロントウイングや前輪で発生した乱流=ダーティーエアを整流するのが主な役割。これによって、マシン下部を流れる気流への悪い影響を減らしダウンフォースを稼ぐ効果を得ることができる。前方からの気流をマシン外側へ導くよう設計されるため、車体から離れるように湾曲している。

フロア

マシンの下部を覆うパネル形状のパーツがフロア。アンダートレイとも呼ぶ。後部にはディフューザーと呼ばれる負圧増大装置を備え、フロア下面の気圧を下げることでダウンフォースを生み出す。他の空力部品とは異なり、空気抵抗を発生させずにダウンフォースを作り出す事ができるため、設計上極めて重要なパーツとなっている。

サスペンション構造

正面図を使ってフロントサスペンションの構造を中心に解説する。

インダクションポッド

コックピットの後方上部に位置する開口部がインダクションポッド。エンジン内部に空気送り込むための取り入れ口のこと。欧米ではエアインテークと呼ばれるのが一般的で、エアボックス・インレットとも呼ぶ。チームによって大きさや仕切り板の数が異なるので注目してみてほしい。

アッパーアーム

ダブル・ウィッシュボーン式サスペンションの上部にある支持体をアッパーアームと言う。このアングルだと分かりづらいが前後に2組あって、タイヤ側から車体に対してV字形状に設置される。アッパーサスペンションアームとも呼ぶ。

ロア・アーム

アッパーアームと対を成す下側の支持体をロア・アームと呼ぶ。upper(英:上の)とlower(英:下の)というわけだ。ホイールと車体を繋ぐアップライト(ハブキャリア)と呼ばれる部位に接続される。

プッシュロッド

ウィッシュボーンを構成するもう一つのエレメントがプッシュロッド。F1においては前サスにはプッシュロッドを用い、後サスにはプルロッドを採用する。タイヤが路面の凹凸に乗り上げるとロッドが押され(プッシュ)、車体内部に格納されたスプリングとダンパーを収縮させる。プルロッドはその逆で、凹凸に乗り上げるとロッドが引っ張られる形となる。

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