ウィリアムズF1消滅の危機、チーム売却を検討…冠スポンサー喪失で財務悪化

フィニッシュラインを駆け抜けるウィリアムズFW43、2020年F1バルセロナテストcopyright Williams Racing

F1世界選手権に参戦する名門ウィリアムズは2020年5月29日(金)、タイトルスポンサーのROKiTおよびメジャースポンサーのROKドリンクスとの契約終了並びに、「2021年から始まる新時代のF1を優位に進めるための新たな戦略的方向性」を追求するために、チーム売却のための正式な手続きを開始したと発表した。

英国グローブのチームは2シーズン連続でコンストラクターズ選手権10位に終わり、F1からの商業収入が大きく目減りしていたが、これに追い打ちをかけるように、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響で2020年シーズンの開幕は延期されスポンサーシップが減少。財務状況が急速に悪化していた。

チームは声明の中で「この度の新しい戦略的方向性の一環として、WGPH(ウィリアムズ・グランプリ・ホールディングス)の取締役会は、当社が利用可能な様々な戦略的オプションの見直しを行っている」と述べ、生き残りのための複数のソリューションを評価中であると説明し、その選択肢の中にチームの売却が含まれている事を明らかにした。

「検討中の選択肢には新たな資本調達の他に、WGPHの少数株あるいは、会社全体の売却の可能性を含む多数株の売却などが含まれるが、これに限らず他のオプションを選択する可能性もある」

「最善の結果を追求しているため現時点では如何なる決定も下していないが、関係者との議論を円滑に進めるために”正式な売却プロセス”を開始する」

ウィリアムズは更に、戦略策定支援および利害関係者との窓口役として、投資銀行の「アレン・アンド・カンパニー」と機関投資家向けの投資支援を行う「ラザード」を共同ファイナンシャル・アドバイザーに任命した事を明らかにした。発表によれば、現時点では如何なるアプローチも受けていないとの事だが、少数ながらも潜在的な投資家との予備的な会談が行われているという。

この日発表された2019年度の決算は、名門チームの懐事情の厳しさを物語っていた。

グループ全体の収益は2018年度の1億7,650万ポンド(約233億円)から1億6,020万ポンド(約211億円)へと減少。その内、F1関連の収益は2018年度の1億3,070万ポンド(約173億円)から9,540万ポンド(約126億円)へと減少し、利益は1,600万ポンド(約21億円)の黒字から1,010万ポンド(約13億円)の赤字へと転落し、減収減益となった。

チーム再建のためにウィリアムズは、2019年12月にウィリアムズ・アドバンスト・エンジニアリング(WAE)の過半数の株式をEMKキャピタルへと売却。更に今年4月には、112台のF1マシンコレクションを含む多数の資産を抵当にマイケル・ラティフィから融資を受け当面の運転資金を確保していたが、冠スポンサーを含む2つのブランドを失った事で今季の財務計画の見直しを迫られる形となった。

2019年度の決算についてマイク・オドリスコル最高経営責任者(CEO)は「近年のF1オペレーションにおける競争力の低下と、これに伴う商業権収入減少の現れ」と説明した上で、2020年度についてはF1カレンダーの中断に触れて、商業権収入の更なる減少への懸念を口にした。

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