角田裕毅の去就を巡り対立か…レッドブルF1闘争激化、ペレスとマルコを含めた退陣の噂
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角田裕毅(アルファタウリ)の去就を巡って対立したとされるレッドブル首脳陣、つまりクリスチャン・ホーナー代表兼CEOとモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコによる「権力闘争」が激化していると報じられている。
シーズン最終戦を待たずにコンストラクターズ選手権とドライバーズ選手権の両タイトルを手中に収めたレッドブルは、成績不振のセルジオ・ペレスだけでなくマルコに関しても決別の可能性が指摘されている。
激化するホーナーとマルコの権力闘争
ブラジルの大手日刊紙「グローボ」は、世界的なエナジードリンク企業の共同創設者、ディートリッヒ・マテシッツが昨年10月に亡くなって以来、英国ミルトンキーンズのチーム上層の「権力争い」が激化していると伝えた。
報道によるとホーナーは、F1チームの運営全体を自身の管理下に置きたいと考えており、「以前からマルコを解任しようとしてきた」という。
レッドブルの指揮官は、ホンダから1,000万ドル(約14億9,566万円)の収益が得られるにも関わらず角田裕毅の解雇を望んでいるが、マルコは2025年末までの事実上のパワーユニット・サプライヤーであるホンダとの摩擦を避けるべく、これを阻止する立場に立ったとされる。
角田裕毅は母国F1日本GPの週末に、アルファタウリとの2024年の契約が発表されたばかりだ。その背景にはホンダの介入があったと報じられている。
ドライバーに関する決定はもちろん、国際自動車連盟(FIA)の元エグゼクティブ・ディレクターであるピーター・バイエルのCEO就任を含め、ホーナーは既にアルファタウリの人事に対して大きな影響力を持っているとグローボは伝えた。
バイエルは2024年のドライバーラインナップについて、ダニエル・リカルドとリアム・ローソンの組み合わせが理想と仄めかしていた。
報道によると今週予定されている同社の取締役会では、80歳のオーストリア人ディレクターの将来についての何らかの決定が下されるとの事で、レッドブルがF1に参戦した2005年以来初めて、マルコはチーム内での職を失うリスクに晒されているという。
マテシッツの死去を経てレッドブル社の企業プロジェクト・新規投資部門CEOに就任したオリバー・ミンツラフもマルコと緊張関係にあるようだ。
マルコの絶対的庇護者であった故マテシッツのレッドブル株49%は、一人息子のマーク・マテシッツが相続した。31歳のオーストリア人はかつて、同社のオーガニック部門責任者を務めていたが、現在は同職を辞して株主としての役割に専念している。
ホーナーとマルコの2頭体制によりレッドブルはこれまでに、6度のコンストラクターズ選手権タイトルと、セバスチャン・ベッテルとマックス・フェルスタッペンによる7度のドライバーズ選手権タイトルを収めるなど、輝かしい成功を築き上げてきた。
2024年契約にも関わらずペレスに「最後通告」
グローボはまた、ペレスがレッドブルから「最後通告」を受けたとも報じた。情報筋によると、次戦アメリカGPを含めた今季残り5戦でドライバーズランキング2位を維持できなかった場合、レッドブルは2024年にリカルドを起用する方針だという。
ダブル王座獲得のチャンピオンマシン「RB19」が愛機であるにも関わらず、シンガポールGP以降のスプリント1戦、決勝3戦の計4レースでペレスが手にしたポイントは僅か5点に過ぎず、ランキング3位のルイス・ハミルトンに30ポイント差まで詰め寄られている。
7度のF1ワールドチャンピオンはペレスとは異なり今季、一度も優勝していないが、全ての週末にポイントを重ねる高い一貫性を示している。
仮に報道が事実でペレスがシートを失った場合、その恩恵を受けるのはリカルドだけではない。リカルドのレッドブル昇格に伴い空いたアルファタウリのシートにはローソンが収まる事になるだろう。
骨折負傷したベテランドライバーに代わってオランダGPでF1デビューを果たしたローソンは、新人ながらも目立ったミスが少なく、シンガポールGPではチームにとっての今季最上位となる9位フィニッシュを果たしてパドックに感銘を与えたが、来季はリザーブ兼テストドライバーの役割に戻ると発表されている。
角田裕毅、開かれるアストン入りのシナリオ
角田裕毅はレッドブルに留まることが最優先事項と仄めかしているが、マルコがチームから放出された場合、アストンマーチンへの道が急速に切り開かれることになるかもしれない。
角田裕毅を支援するホンダは次世代パワーユニットが導入される2026年以降、レッドブルとの関係を絶ち英国シルバーストンのチームとタッグを組む。
放出を望んでいるとの報道が事実であれば、ホーナーが角田裕毅の移籍を妨害する事はないだろう。フェルナンド・アロンソと並びアストンをドライブするランス・ストロールは今季のチーム総得点の2割しか稼げておらず、2026年のホンダ・ワークス化に向けて将来を疑問視する声が広まっている。
ただしアストン移籍への道のりは険しい。ホンダはドライバー人事に口を出さないとしており、また、2024年のドライバーズ・マーケットは近年稀な活況を帯びる。
来季はアロンソに加え、フェラーリのシャルル・ルクレールとカルロス・サインツ、アルピーヌのエステバン・オコンとピエール・ガスリーを含む多くのドライバーが契約の満了を迎える。更に2025年にはランド・ノリスが市場に出る。
アルファタウリでの3シーズン目を迎えた角田裕毅は今年、他カテゴリで圧倒的な実績を築き上げてきた開幕当初のチームメイト、ニック・デ・フリースを完膚なきまでに打ち下し、ローソンが加わるまで唯一のポイントゲッターとしてチームを率いてきた。