退団濃厚 ― ペレスを追い込むホーナー:角田裕毅とローソン、レッドブル昇格争い最終決戦へ
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セルジオ・ペレスの2024年限りでのレッドブル・レーシング退団が濃厚となり、角田裕毅とリアム・ローソンが後任ドライバーの座を懸けてシーズン最終戦のアブダビGPに挑む可能性が高まっている。
カタールGPを終え、レッドブルのコンストラクターズ選手権3連覇の望みが潰えたことで、クリスチャン・ホーナー代表のペレスに対する姿勢は明らかに変化した。ホーナーは、アブダビでのレースを以てペレスがチームを去る可能性に明白な含みをもたせた。
ペレスはカタールGPのスプリントでスタートの反応が遅れ、フランコ・コラピント(ウィリアムズ)に先行を許したほか、決勝ではセーフティーカー(SC)解除直前にスピンを喫し、最終的にクラッチの故障でリタイアした。
スプリントの件について、ペレスは「クリーンエアーでの走行を通じてセットアップに関する有益なデータを得るためだった」と釈明したが、チームは事前にその計画を把握していなかった。
英Crash.Netによると、カタールGP後のインタビューでホーナーは、「チェコ(ペレス)は非常に厳しい1年を過ごしてきた。それはポイントテーブルが示している通りだ。我々はアブダビでチェッカーフラッグを迎えるまで、全力で彼をサポートする。しかし、このような状況で毎週憶測が飛び交うのは、彼にとっても楽しいものではないだろう」と述べた。
さらに、「彼は十分に成熟しており、賢明でもあるので、この状況を理解しているはずだ」「チェコ自身に結論を出させるつもりだ」とも語り、早期契約解除に合意するよう迫るような発言を口にした。
2021年に英国ミルトンキーンズを拠点とするレッドブル・レーシングに加入したペレスは、チームメイトであるマックス・フェルスタッペンの初タイトル獲得において重要な役割を果たし、以降もコンストラクターズタイトル獲得に貢献してきた。
だが、2024年シーズンはパフォーマンスの低迷が続き、その状況を立て直すことができていない。フェルスタッペンがシーズン2戦を残してドライバーズチャンピオンシップ4連覇を達成した一方、ペレスはランキング8位に留まり、トップ4チームの中で最下位に甘んじている。この結果、レッドブルはコンストラクターズ選手権の3連覇を逃すこととなった。
なお、ペレスの現行契約にはパフォーマンス条項が含まれていないとされており、契約を早期終了する場合、レッドブルには巨額の違約金が発生する可能性がある。
レッドブル、自前の育成プールに焦点
シーズン当初にカルロス・サインツがフェラーリのシートを失った際、レッドブルは彼を獲得しないという決定を下し、以降、2025年のペレスの後任選びに苦慮している。
プレシーズン時点で本命とされていたのはダニエル・リカルドだった。だが、リカルドは姉妹チームRBのシートを失うと同時に候補リストからも外れた。その後、ウィリアムズで鮮烈なデビューを果たしたフランコ・コラピントが新たな有力候補として浮上したものの、状況は変化した。
コラピントはアルゼンチンからのスポンサーシップが期待できる一方、獲得するためには契約買い取り金として約2,000万ドル(約30億円)が必要とされる。また、サンパウロGPやラスベガスGPでの相次ぐクラッシュが評価を下げる結果となり、レッドブルはこれ以上コラピントを追求しない決定を下したとされる。
角田裕毅、ローソンと一騎打ち
複数の有力メディアはカタールGPを終えて、ペレスはアブダビGP後にレッドブルを離脱する予定で、後任にはローソンが起用され、RBの2025年のシートにはアイザック・ハジャーが収まる見通しだと相次いで伝えた。
だが、最終決定はアブダビGP後に下される計画であり、角田裕毅のチャンスが完全に消えたわけではない。
実質的にまだフルシーズンを戦ったことがないことを踏まえれば、ローソンは十分に堅実な仕事をしているが、現時点で角田裕毅を差し置いて明確に最有力候補であると証明するには至っていない。
一方、角田裕毅は明らかな速さを持ちながらも、一貫性の欠如が課題とされ、レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、フェルスタッペンのチームメイトとしての資質を疑問視している。
また、コース上での成績という数字で見れば、2025年のレッドブルをドライブするに相応しいドライバーは角田裕毅一択だが、ドライバー決定についてホーナーは「あらゆる要素が考慮される」と強調している。
ホーナーが指摘したように、現在のフェルスタッペンのチームメイトを務めることは「F1で最も難しい仕事」の一つであり、場合によってはキャリアの終焉を招きかねないという点で、必ずしも2025年にレッドブルで走ることが最善かどうかについては議論の余地がある。
それでもなお、今週末のアブダビGPは両ドライバーにとって2025年のレッドブルのシートを勝ち取るための重要な一戦となる可能性がある。また、角田裕毅はポストシーズン・テストでレッドブルのマシンをドライブする予定であり、その際のパフォーマンスが評価に影響を与える可能性もある。
ペレスのF1キャリアは終わらない?
先週末のカタールGPを前にペレスは、2025年にRBへ降格するとの噂を一蹴した。仮にレッドブルのシートを失えば、現時点では2025年のF1グリッドに立つ見込みはゼロに等しい。
ただ、これがペレスのF1キャリアの終焉を意味するかどうかは不明だ。
2026年にはキャデラックがF1に参入し、グリッドに2つの新たなシートが追加される。このプロジェクトを率いるキャデラックの取締役、マリオ・アンドレッティは、少なくとも1つのシートにはF1での豊富な経験を持つドライバーを起用したいとの意向を示している。
ペレスは通算280以上のグランプリ出走経験を誇るベテランであり、ここ数年は困難なシーズンが続いているものの、過去にはチームリーダーとしての実績を残してきた。特にレーシングポイント時代には、2020年にチーム唯一の勝利を挙げるなど、その手腕を発揮した。
これらの経歴を考えれば、ペレスが2026年にキャデラックのプロジェクトに加わる可能性も十分に考えられる。